「食事と運動が減少している現代では、男女ともに便秘が急増しています。最近の研究では、便秘と関連する腸内環境の変化が、痔や花粉症などのアレルギー、動脈硬化や脳卒中の原因となる高血圧症といった重大病を引き起こしていることもわかってきた。決して侮ってはいけません」
 東邦大学医療センター大森病院総合診療科の担当医はこう述べている。

 中でも特に気を付けなければならないのは大腸がん。大腸がん患者がいる家系で60歳以上の人は、便秘に悩まされている場合にがんを患う可能性が高くなるという。
 「最近になって患者が増えている大腸憩室疾患も、便秘との関係が指摘されています。大腸の壁に内側から圧力が加わり、風船のように袋状に外に突き出ることがある。これが憩室と呼ばれるもので、便が詰まって腸内の圧力が加わるとできやすく、それが破れて腹膜炎を起こすと命にかかわる場合もあるのです」(専門医)

 食べ物は消化管の粘膜に直接的な刺激を与えたり、消化によって各種の栄養分を補給、人体を構成する各種成分の原材料となる。ここまでは主として小腸で行われるが、「第6の栄養素」と呼ばれる食物繊維などの難消化成分は、大腸に達してから本領が発揮される。大腸に棲みつくおよそ100兆個の腸内細菌は消化吸収を助け、体内の免疫力を高める。そして不要になった腸内容物を便塊に形成して、肛門から外へ、すなわち排便にまで持って行く役割を果たしているのだ。
 このように10時間以上に及ぶ壮大な流れ作業の営みが、我々の生きている証ともいえる“快食”から“快便”を可能にしてくれているのである。

 では、なぜ便秘は起きるのかを考えてみよう。
 便秘は一般的には3日以上排便がなかったり、1日の便の量が35グラム以下の状態をいう。2011年の国民生活基礎調査によると、便秘の人は男性で2.4%、女性では5%。高齢者になるにつれ増えている。
 医学博士の内浦尚之氏は「便が出ない事が気になって、仕事が手につかなくなってしまうなど、生活に支障が出る人もいます」と話す。

 便を肛門まで押し出す腸の働きは、自律神経によってコントロールされている。ストレスや睡眠不足などで自律神経が乱れ副交感神経の機能が低下すると、腸の働きが弱まり便秘になりやすくなる。また、排便の我慢を繰り返すと、直腸の反応が鈍くなり、便がたくさん溜まらないと便意を感じなくなってしまう。また、便を出したいからと、長い期間、下剤を飲み続けていると逆効果。腸に炎症が起こり、働きが鈍ってしまうからだ。ダイエットの目的で下剤を飲んでいて、便秘になる女性も多い。
 「毎日排便しなければならないと考えている人がいるようですが、3日に1回排便ができていれば問題ない。下剤に頼らず、食事や生活習慣を見直すことで便秘の多くは改善します」(内浦氏)

 食物繊維や水分をバランスよく摂ると、便のかさが増えたり、軟らかくなって出やすくなる。食物繊維は1日20グラムほどが目安で、野菜や豆類の他、わかめなどの海藻、こんにゃくに多く含まれる。