ベストセラー『がんばらない』著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、2014年暮れから正月にかけて約10日間で訪れたイラクの難民キャンプで、イスラム国によって家族を奪われ、生活を奪われた人たちに数多くであった。イスラム国とはいったい、どんな存在なのかについて、鎌田氏が解説する。

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 シリアとイラクを広く制圧し、国家という枠を超えたイスラム国──。

 リーダーのアブー・バクル=バグダディーは、自らを“カリフ(最高権威者)”と名乗り、オスマントルコ以来の、政治と宗教が一体となった不気味な“超国家”を造ろうとしている。

 蓄積された資本を“虚像”とみなし、資本主義を打倒しようと叫んでもいる。紙幣も偶像のひとつと位置づけ、これを廃止し金貨や銀貨を発行し始めている。

 またイスラム原理主義にのっとり、制圧した地域ではヤジディ教徒の若い女性を性奴隷としている可能性が高い。

 連中は、ヨーロッパやアメリカが築いてきた資本主義や民主主義に真っ向から対決しようとしているのだ。堕落した欧米型生活を捨て、殉教者になれば天国が待っていると強烈なメッセージを送り続けている。

 そのメッセージは、皮肉にも見事だ。「5つ星の聖戦」などと称し、いかにも闘いに意味があるように吹き込む。万が一、死んでも天国に行けるとそそのかす。

 こうして、閉塞感の中で自分を持て余している若者たちを洗脳し、石油を密売した利益で兵士に給料を払う。“アラブの春”で経済が破たんした北アフリカからは、自分探しの若者や仕事を求める労働者がイスラム国に合流していた。

※週刊ポスト2015年2月6日号