韓国の食料品店で販売されている即席めん

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日韓関係の停滞の影響は、両国の「食」にも及んでいるようだ。韓国製即席めんの対日輸出量が、過去3年で半減したという。

しかも通貨ウォン高により、メーカーは販売価格の値上げへと踏み切らざるを得ない。日本が最大の「お得意様」だっただけに頭が痛い。

日本との取引縮小で総輸出量、輸出額が初めて前年比減

東京・新大久保にある韓国の食材店を、記者が訪れた。入口ドア前の目立つ位置に「辛ラーメン」の真っ赤なパッケージが山積みされていた。店内に入ってすぐの場所には小型の専用鍋とラーメンのセットが販売されている。韓流ドラマで出演者が鍋から即席めんを食べるシーンの写真を掲示し、「これが正しい食べ方です」と紹介していた。店内の棚には、各種袋入りめんやカップめんが並ぶ。買い求める客の姿も時折みられた。

専門店での売れ行きは上々に見えたが、統計には厳しい現実が浮かび上がる。韓国・聯合ニュースはじめ複数のメディアによると、韓国農水産食品流通公社などが、2014年の韓国製即席めんの対日輸出額は前年比23.5%減の2447万9000ドル(約28億9500万円)だったと発表したという。

対日輸出量も、2014年は5534トンで前年比26%減と不振。3年続けてのマイナスで、ピークだった2011年の1万1405トンから半減となった。これにより、最大の輸出先は日本から米国に変わったという。日本との取引の縮小は大きな打撃で、2014年は韓国の即席めん全体の総輸出量、輸出額ともに初めて前年を下回った。

業界では対日輸出減が続く理由に「嫌韓」を挙げたという。減少傾向が顕著になったのは2012年で、李明博大統領(当時)が島根県・竹島に上陸し、日韓関係が急速に冷え込んだ年にあたる。2013年2月に就任した朴槿恵大統領も、歴史認識を巡って今に至るまで対日強硬路線を崩しておらず、両国の関係改善が進んでいない。

同じように対日輸出が「右肩下がり」で落ち込んでいる食品がある。韓国の伝統酒、マッコリだ。韓国主要紙「中央日報」日本語電子版は2015年1月20日付記事で、2011年には日本への輸出額が4841万8000ドルと過去最高を記録したが、2012年には3199万ドル、13年に1362万5000ドル、さらに14年には914万8000ドルとピーク時より8割減になったと報じた。

「コスト削減だけでの吸収が難しい」と値上げ

不振続きの過去3年の間には、発がん性物質騒動もあった。2012年10月、韓国の大手即席めんメーカー、農心が販売しているラーメンやうどん6種類のスープから微量の「ベンゾピレン」が検出されたという。主力製品の「辛ラーメン」には含まれていなかった。ベンゾピレンは世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関が定める「発がん性物質」のグループ1に分類されるもので、韓国当局が農心に自主回収を求めた。日本の韓国食材店でも販売されており、都内の小売店では当時J-CASTニュースの取材に、陳列棚から該当商品を撤去したと話していた。

為替の変動も、マイナスに作用しているようだ。2014年12月7日付「東洋経済オンライン」の記事には、日本の即席めんメーカーが円安による原材料価格高騰や、包材・資材、物流コストの上昇に悩まされているとある。一方の韓国メーカーにとっては、通貨ウォン高により海外輸出への影響が出ているとみられる。農心ジャパンは2014年12月10日、「コスト削減だけでの吸収が難しい」として2015年3月からの商品値上げを発表した。「辛ラーメン」のメーカー希望小売価格は、税別で1袋150円から160円になる。

対日輸出の先細り傾向に歯止めがかかっていないなかでの値上げは、メーカーとしても苦渋の判断だろう。日韓での政治の冷え込みが今後も続くようなら、打開策を見いだすのは容易でないかもしれない。