全体的に身体の重かった日本のなかで動きにキレがあった乾。左サイドで長友と好連係を見せたがハーフタイムに退いた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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POINT 1 : 4試合連続で同じだったスタメン
 
 大会4試合目となる準々決勝でも、日本の先発メンバーは同じだった。さらに交代メンバーも決まっていて、起用されたのは武藤、清武、今野、豊田、柴崎。つまり今大会の日本は、先発の11人+5人で戦っていた。23人のメンバーがいるのに16人しか使わなかったのは、連係を高めるためだろう。
 
 しかし、3戦目のヨルダン戦からUAE戦までは中2日と短く、先発メンバーの疲労は十分に予想できた。案の定、キックオフ直後の日本は動きにキレがなく、集中力も欠いてUAEに先制点を許してしまった。その後は主導権を握ってワンサイドゲームにしたが、岡崎と長友が負傷してしまう。
 
 特に3人の交代枠を使い切ってからの長友の負傷は痛かった。予測不可能なアクシデントではあるのだが、疲労と無関係ではないだろう。結果的に、メンバー固定の代償は高くついてしまった。
 
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POINT 2 : 不思議だった乾から武藤への交代
 
 前半を0-1で終えると、アギーレ監督は後半開始から武藤を投入。代わりに下げたのは、長友とのコンビで左サイドからチャンスを作っていた乾だった。
 
 乾は全体的に身体が重そうなチームのなかではキレがあり、「乾+長友」の左サイドに対応するため、UAEは4-4-2から4-2-3-1にシステム変更をしなければならなかった。キックオフ時は右サイドハーフを務めていたO・アブドゥラフマンをトップ下へ移し、走力のあるアル・ハマディを左から右へスイッチしている。
 
 乾は4試合すべてに先発したが、いずれも後半の早い時間帯に交代している。ただグループリーグと違って、もはや選手を競わせたり、バックアップの試合勘を維持するための交代を行なう試合ではない。しかも、リードされている状況なのだから、なおさらそれはありえない。
 
 では、この試合で相手の脅威になっていた乾を下げた理由はなにか。それは正直、よく分からない。
 
 武藤のほうが乾より優れていると考えているなら、武藤を先発させたと思う。武藤のプレーは悪くなかったが、乾を下げる必要はなかったのではないか。
POINT 3 : 遠藤→柴崎の交代による攻撃の変化
 
  遠藤の交代は運動量を考慮してのものだと思うが、柴崎の起用は当たりだった。同点ゴールを決めただけでなく、遠藤よりも上手く攻撃の流れを作れていた。
 
 遠藤は相手のボランチの背後にポジションを取り、そこで速いクサビを受けようとしていた。そこで受ければ相手のDFが遠藤に釣られるので、順番に相手のポジションを動かすことになり、スペースができるからだ。ゾーンディフェンスを崩すには最も効果的なやり方である。
 
 ところが、遠藤がそのポジションに入った時は気配を消すように止まっているので、味方が発見できなかったり、気づいても速いパスを躊躇することもあり、結果的に遠藤のアイデアはさほど奏功する場面がなかった。
 
 柴崎は味方のサポートと、その後の前方へのランというシンプルな形でゲームを作っている。動いている選手は味方の目に入りやすく、柴崎のほうが上手く流れに乗れていた。後半にUAEの運動量がガタ落ちしたせいもあり、柴崎はのびのびとプレーできていて、この交代は効果的だった。
 
POINT 4 : 豊田投入の意図をチームとして理解していたのか?
 
 3人目の交代は岡崎から豊田だった。岡崎の負傷による交代のようだが、そうでなくても豊田の投入はあって然るべきだった。ただ豊田を入れた意味を、チームメイトが理解していたかどうかは疑わしい。
 
 前半、日本はチャンスを数多く作っていたが、ほとんどはサイドからのクロスだった。乾がフリーでヘディングした場面のほかは、相手もそれなりにマークしていて決定的と言えるほど崩してはいない。
 
 残り45分で、UAEが守備に専念している状況で、パスワークで崩すにはあまりスペースがなく、手間取れば時間もどんどん過ぎてしまう。その代わり、中盤は完全に支配できているのだから、一度サイドを変えるだけでSBからクロスボールを入れられる状況は簡単に作れる。豊田投入は、「ハイクロスを狙え」という攻撃方法の変更にほかならない。
 
 65分間やってノーゴールなら、状況的にもこのやり方ではダメだと判断するのはむしろ普通だろう。しかし豊田が入った後も、日本はさほどハイクロスを多用することはなかった。豊田を入れて放り込まないなら、乾を残して岡崎の代わりに武藤で良かったのではないか。
 
 その後UAEは長身のDFを投入して、豊田のマークに充てている。ある意味、相手のほうが状況をよく読めていた。
 
 アギーレ監督の良さは状況に合わせた論理性にある。ごく普通の、手堅い考え方をする指揮官。ただ、選手のほうがそこまで切り替えられていない。
POINT 5 : 実質10人で延長戦を戦ったダメージ
 
 延長に入って早々、長友が負傷をしてしまった。前述したとおり、日本はすでに3枚の交代カードを使っていたので、実質的に戦線離脱となった。
 
 これは仕方のないこととはいえ、日本にとっては実に痛かった。UAEにもはや攻撃する余力がなく、クリアボールを拾うこともままならない状態だったからだ。30分もあれば、トドメを刺すのはさほど難しいことではとは思わなかった。
 
 しかし、長友が動けなくなり、日本は左サイドからの攻撃を躊躇するようになってしまう。長友を気遣いながらのプレーで、攻撃のギアを上げきれなかった。
 
 延長後半から長友をMFに移して、なにもさせないように決めてから、やっとエンジンがかかった。
 
 つまり延長前半の時点で、いったん長友をフィールドの外に出すべきだった。どちらにしても、実質10人なのだ。長友の様子をチェックすると同時に、彼をフィールドに戻すなら、その時に指示を与えれば時間も無駄にならなかったはずだ。

取材・文:西部謙司(サッカージャーナリスト)