UAE戦でPKを外し、天を仰ぐ香川。この背番号10の能力を最大限に活かせなかったアギーレ監督の采配には疑問符が付いた。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 グループリーグで3戦全勝しながら、1996年大会以来となる準々決勝敗退を喫した今回のアジアカップで、なにより顕著だったのが決定力不足だろう。

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 UAEとの準々決勝では、確かに守備陣も良くなかった。よくもあんな“綺麗に”縦パスを通されるものかと怒りさえこみ上げてきた。一度ならず、二度も最終ラインを引き裂かれ、挙げ句の果てに失点しているのだ。「油断」のひと言では済まされない失態である。
 
 しかし、それ以上に酷かったのが攻撃面だ。UAEのマークはそこまで厳しくなく、対人に滅法強いDFもいなかった。前半の途中から日本がボールを支配し、敵のエリア内に数え切れないほどボールを運びながらも、終わってみれば延長を含めた120分間でゴールネットを揺らしたのはわずかに1回。それも、“エリア外”からの柴崎のミドルで、である。
 
 惜しいチャンスをいくつか逃した本田も、UAE戦の敗因をこう述べている。
 
「勝負を決する場面がいくつかあった。そこで決められずにPKまで行って負けてしまったのは、なにかしら自分たちに責任があると受け止めざるを得ない。追加点を取ってPK戦までに試合を決められなったことには、なにより悔いが残る」
 
 シュート精度の低さはもちろん、形にこだわり過ぎた点もいただけない。フィニッシュに持ち込んでいい場面でも、余計なパスやドリブルを1、2本入れてスローダウン。速さも怖さもない日本の攻撃は、相手にとってどちらかと言えば読みやすかった。
 
 事実、この日のUAEもサイドではある程度日本の選手をフリーにしても中は締めていた。エリアの外でこねくり回されているぶんには構わない、中に入ってきたところで潰せればいいと、そんな割り切った守り方をしていた。日本には決定機と呼べるチャンスこそあったが、「超」が付くほどのそれはなく、決定力不足というよりも、攻撃のアプローチそのものに大きな問題があったように見えた。
 
 ノーゴールに終わった乾、結果的に1点止まりだった岡崎以上に、今大会の4試合でオフェンス面において最も足を引っ張ったのが、インサイドハーフの香川だった。チャンスメイクと守備に加え、ゴールまで求めることに、そもそも無理があった。UAE戦の延長戦でも、仕掛けられる局面でそうしなかったのはもはや敵を振り切るだけのスタミナが残されていなかったからだろう。いずれにしても、香川にとってインサイドハーフは荷が重いポジションだった。
 
 なぜ香川を攻撃に専念させなかったのだろうか。実際、トップ下近くでプレーしたイラク戦の63分以降は精力的にゴール前でボールに絡み、持ち前のセンスを発揮していたというのに……。
 
 センターサークル付近で香川がボールを持っても、相手にしてみれば怖くなかっただろう。そこでパスを出されても、ドリブルでかわされてもゴールに直結する可能性はかなり低いのだから。まさに、宝の持ち腐れ。この背番号10の能力を最大限に引き出せなかったという意味で、アギーレ監督の采配には疑問符が付いた。
 ただ、選手交代に限っては一定の評価を与えられる。大会を通して首を傾げるようなものはひとつもなかった。パレスチナ戦では4-0とリードした時点で、クラブで好調だった清武、代表歴の浅い武藤と豊田をテスト。続くイラク戦では相手に流れが行きそうなタイミングで今野と清武を同時投入し、守備のバランスを整えた。そしてヨルダン戦では79分に投入した武藤が82分に香川のゴールをアシスト。UAE戦では柴崎が同点ゴールと的中したものが多かった。
 
 UAE戦では、なぜ延長まで1枚とっておかなかったのか、との見方もある。しかしそれは結果論であり、0-1でリードされた局面で攻撃的な選手を3人入れるのはむしろ常套手段。まず追いつかなければ延長もなにもないのだから、選手交代という点で批判するのはお門違いだ。延長前半で長友が右足を痛めたアクシデントは不運のひと言で、SBの右に柴崎、左に酒井高を置いて最低限のリスクマネジメントはした。余力のある柴崎をSBにしたのは、日本が前掛りの状況でカウンターを食らえば“長い距離を走れる選手”が必要だったからではないだろうか。
 
 また、延長戦ではもっと攻撃的に行くべきだったとの見方もある。ただ、延長戦以降は香川を筆頭にチームの足はほとんど止まっていた。しかも長友は怪我でほぼ動けなかったのだから、その時点で試合は終わっていた。延長戦のチームマネジメントよりも、ヨルダン戦から中2日というハンデがあるなか90分間で勝負を決することできなかったほうに問題があった。90+3分の決定機を香川が決めていれば、敗戦の屈辱にまみれずに済んだのだ。
 
連覇を逃したのだから、いくら選手交代が良かったといってもアギーレ監督には相応の責任がある。結局、八百長疑惑を優勝という結果で吹き飛ばせなかったわけで、批判の的になっても不思議はない。敗戦後、サッカー協会の大仁会長は「続投」を明言したが、続けて「告発の受理が確認できたら(去就について改めて)説明する」と言っており、場合によっては急遽解任という流れもありうる。
 
 ブラジル・ワールドカップに続きアジアカップでも結果を残せず、指揮官の去就は不透明。今年6月にスタートするロシア・ワールドカップ予選に向け、膨らむのは不安だ。本田も警鐘を鳴らす。
 
「勝つためにはクオリティ以外のものがたくさんある。それはボールを扱う以外の部分。ボールスキルで相手を勝っていたのに試合に勝てないということは、間違いなくそこが欠点。経験とか、厳しい勝負に慣れていないとか。勝たなければいけないプレッシャーのなかで勝てないのは、そういう精神力を持ち合わせていなかったからだと感じている」
 
 経験という点で、近い将来の日本代表に目を向ければ、昨年にアンダー世代の代表が次々と世界大会への切符を逃したのは痛恨だ。「アジアカップでの敗戦を機に世代交代を進めろ!」という声もあるだろうが、大胆な改革に着手できるほど下の世代は育っていないのではないか。柴崎が「(代表チームは)この20数年間でものすごいスピードで成長してきたけど、我慢の時期にきている」と言うように、早急な世代交代が良い方向に進むとも思えない。
 
 とにかくアジアカップ以上に失敗が許されないロシア・ワールドカップ予選のスタートまで、4か月しかないのだ。アギーレ監督を切るなら切る、切らないなら切らない、日本協会が一刻も早く明確な姿勢を示さなければ、結局のところ健全なチーム作りなど進められるわけがない。求められるのは、確かな危機感を持った迅速な対応。曖昧なスタンスでは、ワールドカップ予選敗退という悲劇を招く恐れがある。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)