グループリーグでの3連勝の無失点という充実のパフォーマンスに、長谷部も自信を深めているようだ。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 負けたら終わりの決勝トーナメント。ヨルダン戦から中2日での準々決勝で戦うのは過去の対戦成績が5勝8分3敗(FIFA.com調べ)のUAEだが、彼らの実力以上に気になるのは日本がどこまで回復した状態でゲームに臨めるかだ。

 なかでも、ヨルダン戦の38分の接触プレーで口を負傷したCB森重のコンディションは気がかりである。3試合続けて無失点と良い流れで来ているので、できればこのタイミングで最終ラインをいじりたくない。仮に森重が欠場なら、代役はおそらく塩谷だろう。今大会ここまで出場機会はなく、ぶっつけ本番で決勝トーナメントのステージに上がることになるのだから、不安は否めない。

 もっとも、チーム全体の練習を見ていると、リラックスした様子で疲労を感じさせない。マンチェスター・U時代に中1日での試合もあったという香川は、過密日程をさして気にしていないという。

「こういうスケジュールに代表選手は慣れていると思う。今更どうというのはない。限られた時間で頂点まで調整していきたいです」

 準々決勝の舞台となるシドニーは夜になると涼しく、湿気も少ない。プレーしやすい環境で、足がパタリと止まる可能性は低そうだ。むしろ、これまでグループリーグで先にガス欠状態になっていたのは日本の対戦相手のほうで、キャプテンの長谷部はそこに自信を深めていた。

「あくまで個人の感覚ですけど、(後半の途中からは)日本のサッカーに相手がちょっと参っていたのかなと。これはちょっと敵わないではないですが、そういう感覚で最後の時間帯はプレーしていました」

 チームとしての完成度、個々の技量は、間違いなく日本のほうがUAEよりも上だろう。「個人としてもチームとしてもグループリーグの対戦国よりクオリティがひとつ上がる」(長谷部)が、相手をリスペクトし過ぎる必要はない。グループリーグと同じように前半からボールを支配し、サイドから揺さぶりをかけてUAEの闘争心を削ぎたいところだ。
 キーマンは、アンカーの長谷部だろう。おそらくマッチアップするO・アブドゥラフマン(23歳)は、アジア最高レベルのレフティと言われており、まさにUAEの心臓と呼べる存在。彼を抑えられるかどうかが試合の流れを大きく左右するはずで、もちろん長谷部も対策を練っている。

「個人技があるし、非常に良い選手。シュートに絡むよりは、アシストやその前のパスなどチャンスメイクをしてくる。そこから出るパスに反応する選手を抑えるとか、チームとして連動した守備ができれば十分抑えられると思う。

 理想は、ゴールに近いところでプレーさせないこと。彼はボールを触りたがるので、前でボールが触れないと引く傾向にある。そうなれば、そこまで怖くない。いわば王様みたいな存在なので、皆が彼を見ているから的は絞りやすいです」

 相手のキーマンを抑えて効率良くゴールを決めるには、岡崎のパフォーマンスが肝になりそうだ。多少強引にでも「意識的にシュートを打てば、他の選手が空く」(岡崎)。ヨルダン戦の先制点──岡崎のシュートをGKに弾かれ、こぼれ球をフリーの本田が詰めたシーンなどを増やせれば、ことアジアレベルに関しては決定力不足を解消できるはずだ。

 あとは、武藤にも注目したい。膠着状態となれば、比較的早い時間に出番が回ってくるだろう。ヨルダン戦で香川のゴールをアシストしたことで自信を付け、どこか吹っ切れた感のあるアタッカーが、UAE戦でも活躍できればチームは乗る。

 過去のアジアカップを振り返れば、苦しい時間帯にチームを救ってきたラッキーボーイ的な存在がいた。その意味ではヨルダン戦で“試運転”を終えた柴崎も、ある意味でキーマンと言えるだろう。

文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)