日本では近年、「パワハラ」や「モラハラ」といった言葉を目にする機会が増えているが、お隣の韓国でもパワハラに似た意味を持つ言葉として「甲質(カプジル)」という単語が注目を集めている。

 「甲質(カプジル)」とは権力などの面で優位に立つ側の者を「甲」、弱者側の者を「乙」としたうえで、甲が乙に不当な行為を要求・行うことなどの概念を総称する言葉で、韓国のネット上では甲の力を表した、「スーパー甲」や「ウルトラ甲」という意味の言葉も登場している。カプジルを日本語で表現するならば、クレーマーやパワハラといった言葉が当てはまるだろう。

 この「カプジル問題」について取り上げた記事を、韓国メディアの聯合ニュースが15日に掲載。韓国のネットユーザー達も大きな反応を見せているとした。

 記事は、昨年12月に大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長が機内サービスに腹を立て、機体を引き返させたとして航空保安法違反との疑いが持たれている件とともに、ホテルにおけるカプジルを紹介した。

 韓国国内のホテルでは、宿泊客が誤ってコンセントを差し込んだことによって家電がショートするなどのトラブルが起きた際に、カプジルな宿泊客がホテル側に賠償を請求するトラブルが頻発している。「コンセントがショートし火花が出て、髪の毛が焼けた」、「客に過ちの責任を押し付けるのか」などと“逆ギレ”するケースが相次ぎ、ホテル側が賠償させられる事案が相次いで起きているという。

 さらに、客室に備え付けられたコーヒーカップについて、宿泊客の子どもが床に落として割ったにもかかわらず、宿泊客はホテル側に謝罪するどころか、割れたコーヒーカップの破片を「凶器」だと主張、「危険なものを部屋に置いといて注意書きや警告もなかった」と、治療費だけではなく、補償を要求する事案も発生したという。

 また記事は、旅行シーズンともなると、ホテルのチェックインカウンターには長蛇の列ができると紹介する一方、一部の横暴な客は「20分も並んだ。この時間を補償しろ」と“カプジルぶり”を見せていると紹介。また、チェックアウトの場合は退出時間を1-2時間延長しろと要求する客が多く、ホテル側も対応には困り果てていると報じた。

 大韓航空の「ナッツ・リターン事件」は、韓国の「カプジル」という言葉を象徴する代表的事件と言えるだろう。韓国社会においては、昔からの教えである「儒教」の精神が残っているため、今もなお上下関係が厳しい。上司や先輩・目上の方の言葉は、“絶対”だ。しかし、これを履き違えると、このような事件が日常的に起きてしまうことも事実ではないだろうか。「カプジル」は、韓国でも大きな社会問題となっている。(編集担当:李樹香)(イメージ写真提供:123RF)