ヨルダン戦を受けた日本の報道は、アギーレ指揮下で待望の初ゴールをあげた香川真司に集中するだろう。3試合連続ゴールの本田圭佑も、いつもながら注目度は高いはずだ。

 グループステージ3連勝の立役者は、彼らだけではない。ひとりに絞るのは難しいが、僕は長谷部誠をあげたい。

 4−3−3のアンカーは、システムの要となるポジションである。ボランチよりも守備面での仕事ぶりは目につく。それにしても、彼の働きは際立つ。

 前半10分、ヨルダンの選手が警告を受けた。長谷部に対するファウルによって。

 16分、相手ゴールまで30メートルほどの距離で、日本は直接FKを獲得した。長谷部に対するファウルによって。

 中盤のルーズボールには、漏れなくと言っていいくらいに絡んでいる。「このポジションでやる以上、守備を意識したプレーにはなります」と本人は話すが、それにしてもスキがない。

 センターバックとの連携も緊密だ。

 後半5分のプレーが分かりやすい。タテパスを受けた相手FWに、吉田が背後からプレッシャーをかける。味方CBがマッチアップした瞬間に、長谷部はすでに距離を詰めていた。相手FWを吉田と挟み込み、あっさりとボールを奪った。

「後ろはひとり余らせるというか、4対3、3対2と数的優位を作ることは話していて、ひとりがチャレンジしても後ろがカバーしていることで、チャレンジする選手も激しくいけると思う」

 ここまでの3試合で、日本のDF陣は警告を受けていない。対戦相手との実力に開きがあり、カード覚悟の対応をほぼ迫られていないものの、長谷部の素早いサポートは見逃せない。

 ヨルダン戦では先制点の起点にもなった。本田がこぼれ球を押し込んだ場面を巻き戻すと、岡崎のシュート、乾のラストパス、長谷部のタテパスとなる。もっとも、本人からすれば果たすべき仕事のひとつに過ぎない。

「真ん中を崩すときはサイドで幅を作ってから中を崩すのは効果的だし、とくに今日の相手は中盤がひし形で真中に選手が集まっている布陣だったので、とにかくサイドにスペースが空くというのは分かっていた。とにかくサイドで起点を作って、そこから中で仕留めるっていうふうなことは考えてましたけど」

 いつにもまして冷静な分析は、対戦相手との力関係を直視しているからだろう。

「多くのチャンスを作りましたし、後ろも3試合ゼロで抑えている」という内容は、「多少余裕のあるグループリーグだったかな」という肌触りに行き着く。
 
 頂点をかけたサバイバルは、ここから本格化する。表情が引き締まるのも当然だ。

「これからがいよいよホントの戦いじゃないですけど、相手も良くなってくるので。もうワンランク上のチームが出てくると思うので、そうなったときにしっかり抑えられるようにしたい」

 アジアカップは総力戦と言われ、控え選手の存在がしばしばクローズアップされる。ただ、先発の11人が機能することは、勝利の大前提だ。その意味でも、長谷部の好調ぶりは頼もしい。彼自身もまた、プレーのレベルをここからワンランク上げていくからである。