アンカーの長谷部が攻守両面で絶妙な舵取りを見せ、日本は安定した戦いぶりでグループリーグを全勝で通過した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本が強いと言うより、ヨルダンが弱かった。個々の技術・メンタルには歴然の差があり、勝って当然というゲームだった。
 
 相手が開始直後から中盤の3枚(遠藤、香川、長谷部)を、マンマーク気味に付いて潰そうとしても、日本はあまり苦にせずにボールを比較的スムーズに回していた。向こうが挑発的に反則覚悟のタックルを仕掛けてきても、そこまで熱くならずに冷静に対応した。
 
 まるで、大人と子ども──。両者にはそれぐらいの差があったように見えた。事実、遠藤も涼しい表情で「内容も……まあ、妥当な結果でしょう。激しく来るのはある程度想定していましたが、球離れを速くすれば問題はなかったので、僕自身はあまり気にはしていなかった。チーム全体としても冷静に戦えたと思います」
 
 攻守の両局面でとにかく効いていたのが、アンカーの長谷部だ。4-3-3システムの“へそ”にあたるポジションで、両インサイドハーフを含めた前の5人と最終ラインをつなぐ中継点になりつつ、カウンターを狙われた場面では防波堤として機能した。
 
 足を何度も引っ掛けられて倒されたが、そこでムキにならず、むしろ「これぞ正当なチャージ」という守り方で格の違いを見せつけた。この日の長谷部は、サッカーというスポーツをプロレスかなにかと勘違いしているヨルダンに、レクチャーしているようだった。
 
 3戦連発の本田にスポットが当たりがちだが、グループリーグを通して最も安定していたのは長谷部だった。チームがリズムに乗れない時もあえてスピードダウンして味方の呼吸を整えるなど、“中盤のオアシス”として存在感を発揮。最終ライン4人のミスを少なからずカバーしたという意味でも、果たした貢献は特大だろう。
 
 チームをコントロールした点では、アギーレ監督の手腕も見逃せない。79分に投入した武藤が3分後の82分に左サイドから決定的なパスをゴール前に入れて、香川の待望の一発につながった。その武藤曰く「監督から、サイドに広がって裏を狙って行けと指示されて、言われたとおりに動いたら得点につながった」。
 
 やはり機能しているとは言い難い香川のインサイドハーフ起用はさて置き、選手交代に限ればその手腕は高く評価できるだろう。イラク戦でも相手に傾きかけた流れを清武と今野の投入で引き戻しているように、アギーレ監督は間違いなく“勝負を見極める”感覚を備えている。
 
 ヨルダン戦に話を戻せば、試合の行方が見えた時間帯に最初の2戦で出番のなかった柴崎を送り込み、ピッチの空気を吸わせている。つまり、ここまでは首を傾げてしまうような不可解な交代策がひとつもない。「練習でも口うるさく言われている」(長谷部)守備にこだわるスタンスで、グループリーグ無失点と目に見える結果も残した。「アギーレさん、結構良いんじゃない」と好印象を抱くサポーターも増えたのではないだろうか。
 
 一方で気になったのは、FKの精度。今の本田ではどうも入る気がしない。せめて枠内に蹴り込んでほしいのだが、その願いも虚しくクロスバーのはるか上をボールは飛んでいく。ここは思い切って、遠藤(もしくはピッチにいれば清武)に切り替えるべきだ。
 
 実際、61分には遠藤のFKから吉田が決定的なヘディングシュートを放っている。相手のレベルが上がる決勝トーナメントで効率良くゴールを奪うためにも、“キッカー本田”はしばらく封印すべきだ。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)