ヨルダンのアルダルドゥールに対しても、吉田は厳しい寄せで自由を与えなかった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

「みんな、僕よりも経験のある選手ばっかりだから、何をやるべきかはピッチの上で理解しているし、一言二言コーチングすれば、みんな瞬時に判断してやれるチーム。上手く戦えたとは思います。今日はなによりも2点目を取れたことが大きかった。あのゴールは(香川)真司にとっても重要なゴールだったけど、チームにとっても非常に重要なゴールだったので。満足しています」
 
 ヨルダン戦後、ミックスゾーンに姿を見せた吉田麻也の声はかれていた。その声のかすれ具合で、彼がいかに試合中、大きな声を出し、コーチングしていたのかが分かる。
 
 4年前のアジアカップで、吉田は久しぶりに代表チームに呼ばれた。2010年1月、若手で挑んだアジアカップ予選の試合で、代表デビューを果たし、その後移籍したオランダのVVVフェンロで加入直後に負傷し、2009-10シーズンはピッチに立てなかった。
 
「リハビリのためにオランダへ来たわけじゃないのに」と自身の未来を悲観的にとらえてしまったかもしれない。そして10年10月、ようやくオランダデビューを果たした。
 
 アジアカップの日本代表メンバーに選ばれたのは、その2か月後のことだった。しかも、アジアカップ初戦では終盤に同点ゴールを決め、チームの窮地を救った。22歳の若いDFは、アジアカップを機に、代表で戦う自信を手にすることができたに違いない。
 
 12年にはオーバーエイジとして、ロンドン五輪に出場し、キャプテンとして、チームを牽引。その活躍が認められて、プレミアリーグのサウサンプトンへ移籍。順調にステップアップしてきた。A代表でも不動のCBとして、ブラジル・ワールドカップを戦った。吉田はこの4年間で、最も成長した選手のひとりと言えるはずだ。
 
「大会の中で、どれだけチームが成長できるか」をポイントに挙げ、迎えたアジアカップ。3戦無失点でグループリーグ突破を決めた。「まずは無失点で試合を終えよう」というアギーレ監督のオーダーに応えた。
 無失点の要因を聞かれた吉田は、前線の選手について話した。
「前線でボールを奪われた後のチェイス、切り替えの早さが素晴らしい。ボールの獲られ方が非常に賢くなったというか、悪い獲られ方をする回数が減ったと思います。前からの守備は、後ろが良い状態で守るためには大切なことなので。でも、ここからですね。本当に強い相手と戦うのはこれからだと思う。ここから、無失点でいけるかというのが、評価の分かれ目というか、勝敗の分かれ目にもなるので、気を引き締めてやりたいです。
 試合ごとにチームは良くなっている。でも、大会はまだ半分終わっただけ。これから、本当に苦しくなる時が来ると思う。サブの選手も含めて、良い準備をしなくちゃいけないし、チームの総力戦だと思っているので、みんなで戦い抜きたい」
 
 先輩に支えられた部分も大きかった前回大会の優勝。今大会は経験者として、チームを引っ張る立場だという意識の強さが伝わってくる。だからこそ、今大会の優勝には、前回とはまた違った重みがあるに違いない。

取材・文:寺野典子