【アジアカップ】31歳を迎えたキャプテン長谷部誠の決意と感謝
「長谷部選手は生まれながらのリーダーです。彼の声で、彼の経験から来るものを伝えて、チームを落ち着かせることができます」(アギーレ)
「ピッチ上でも、ピッチ外でも、チームの状況を一番理解していますし、チームになにが必要なのかを見られるというのが、彼の魅力だと思います」(川島)
ヨルダン戦の前日会見に出席したふたりは、キャプテン長谷部誠をそう評した。
現政権発足から数か月で迎えたアジアカップは、まさに「走りながら考える」大会だ。試合をこなしつつ、課題を修正し、そして勝ち続けなければならない。
2011年の前回大会では、逆境に立たされたチームを立て直し、壁を乗り越えながら、加速度的に勢いをつけて優勝へと駆け抜けた。
2連勝した今大会だが、まだまだチームに勢いがあるとは言えない。監督の八百長問題や制裁金の話題など、ピッチ外でのトピックスも多い。
そんな大会でいかに結果を手にしていくのか。
チームを俯瞰し、問題を察知し、解決策を考えて、そして決断を下し、行動する。小さな違い、ディテールに目を向ける。そして経験のページをめくって、対処法を探し出す。
それはキャプテンとして当然の作業だが、決してルーティンワークになることはない。だから、日々挑戦なのかもしれない。挑む山の高さや種類は違うけれど。
「やっぱり年を重ねるごとにいろいろな経験してきた。そして、サッカーをする喜びを非常に感じている。これからも、より喜びを感じられるようにしたい。それは支えてくれる人たちに恩返しをすることだから、そういう意味ではもっともっと成長して活躍するところを見せたい」
31歳の誕生日。報道陣が用意したバースデーケーキのろうそくを吹き消したあと、彼はそう話した。きっとそれは、サッカーを始めた子どもの頃から抱いていた想いに違いない。
それくらいまっすぐで、純粋な言葉だった。
取材・文:寺野典子