アジアカップのグループリーグ第2戦で、日本はイラクに1−0で勝利。これで日本は2連勝となり、勝ち点を6に伸ばしてグループDの単独トップに立った。

 優勢に試合を進めていながらミスが目立ち、攻撃にどこかチグハグな印象が強かった初戦のパレスチナ戦(4−0)に比べ、この日の日本は落ち着いた試合運びが目立った。

 序盤からボールを支配した日本は、うまく縦パスを入れながら3人目の動きを利用し、何度もイラクの守備網を崩し切った。前線の選手のポジションチェンジも効果的で、相手ディフェンスに的を絞らせない攻撃ができていた。

 攻撃だけではない。一度ボールを奪われたとしても、すぐに高い位置で奪い返すこともできており、連続攻撃につなげることができていた。得点こそ、本田圭佑のPKによる1点だけだったが、それ以外にも多くの決定機を作り出しており、狙いどおりの攻撃がどれだけできたかという点で言えば、むしろパレスチナ戦を上回っていたのではないだろうか。

 また、結果的に追加点が奪えない中、闇雲に最後まで攻め続けるのではなく、ラスト10分ほどはしっかりとパスを回してボールをキープ。最少得点差を守って確実に勝ち点3を手にするあたりにも、落ち着きが感じられた。スコアのうえでは1−0の辛勝だったが、それほど悪い試合内容ではなかったと思う。

 ただし、その印象はあくまでも、イラク戦を単体の試合として取り上げるならば、だ。

 アジアカップ全体を通じて考えるならば、キャプテンの長谷部誠が「先制してから少しペースが落ちたが、チャンスは多く作っていた」「3−0くらいで早めに(勝利を)決定づけなければいけなかった試合」と振り返っていたように、やはりもう2、3点は取っておかなければならなかった試合である。

 なぜなら、それができていれば、今後の展開が確実に変わっていたからだ。

【グループD】
◆第1戦=日本4−0パレスチナ、イラク1−0ヨルダン
◆第2戦=日本1−0イラク、ヨルダン5−1パレスチナ
◆第3戦=日本vsヨルダン、イラクvsパレスチナ

 上記のように、日本はイラク戦に勝利し、確かに勝ち点6でグループDの首位に立ってはいるが、もしも最終戦でヨルダンに敗れることがあれば、日本、ヨルダン、イラクの3チームが勝ち点6で並ぶ可能性がある。この場合、当該3カ国間の直接対決の成績で決勝トーナメント進出チームが決まるため、日本はヨルダンに2点差以上で敗れればグループリーグ敗退。0−1で敗れた場合は、イラクvsパレスチナ戦の結果次第でグループリーグ敗退の可能性が生まれる(日本がヨルダンに0−1で敗れた場合、当該3カ国の直接対決の成績でも並ぶため、得失点差、総得点数で順位が決まる。イラクが5得点以上挙げて4点差以上で勝った場合、日本はグループリーグ敗退)。

 だが、もしイラクに3−0で勝利していたらどうなっていたか。日本は仮にヨルダンに敗れたとしても、2点差以内の負けなら1位通過が決まる。日本がヨルダンに3点差以上で負けることは考えにくく、つまりはグループリーグ第3戦を残して、事実上の1位通過が決まるという状況を作れていたはずなのである。

 そうなっていれば当然、ヨルダン戦ではメンバーをある程度入れ替え、ここまで2試合をフルに戦ってきた主力組を休ませることもできたはずだ。

 ましてグループDの日本は、最大のライバルと目されるグループAのオーストラリアや韓国に比べ、試合日程に大きな不利がある。この先、グループリーグ1位通過で決勝まで勝ち進んだとして、オーストラリアや韓国が準々決勝から決勝までの3試合を中4日、中3日、中4日で戦えるのに対し、日本は中2日、中3日、中3日でこなさなければならない。

 オーストラリアと韓国は試合日程で有利なうえ、どちらも2連勝ですでにグループリーグ突破を決めている。直接対決の第3戦は手の内を隠すこともでき、余裕を持った選手起用が可能な状況にある。

 余裕があるのは、オーストラリアと韓国だけではない。日本が勝ち上がった場合、準々決勝で対戦することになるグループCのイランとUAEもすでに2連勝で突破を決め、第3戦はメンバーを入れ替えることも可能。日本を取り巻く状況はますます厳しいものになっている。

 にもかかわらず、本田が決定的なシュートをゴールポストに2本、クロスバーに1本当てたのをはじめ、香川真司が、清武弘嗣が、岡崎慎司が次々に迎えた決定機を生かし切れず、追加点を奪うことができなかったのである。これはあまりに痛い。

 この悪影響は、今回のアジアカップだけに止まらない。

 もし第2戦で事実上の1位通過が決まり、第3戦でメンバーを入れ替えることができれば、22歳のMF柴崎岳、DF昌子源、20歳のDF植田直通などにも出場の機会が与えられたかもしれない。彼らがA代表として初めて迎える国際大会で、たとえ1試合でもピッチに立つことできれば、その経験は間違いなくアジアカップ後につながったはずである。

 だが、その可能性も今後の展開を考えると、非常に小さなものになってしまった。

 1−0の代償は思いのほか大きい。数ある追加点のチャンスを逃し続けたツケは、この先、払わされることになる。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki