トップ下付近にポジションを移した63分以降、ピッチで誰よりも輝いていた香川こそ、イラク戦のMOMに相応しい。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 なぜか、イラク戦の大会公式マン・オブ・ザ・マッチ(MOM)は本田だった。17分と65分に、いずれも「超」が付くほどの決定機を外したというのに、である。

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 たしかに、PKでこの試合唯一のゴールを決め、仕掛けや崩しの局面でボールを出し入れする動きも悪くなかった。さらに守備面でもまずまず効いていたが、それでもあえてイラク戦の本田は酷評したい。
 
 おそらく“外すほうが難しい”絶好機を、なによりゴールを求められているFWが一度ならず二度もフイにしたのだ。少なくとも、MOMに値した活躍ではなかった。
 
 いや、入らなかったにせよ、シュートを打てる位置にいたことこそ大事と、ポジティブな見方もできるだろう。ただ、長友が完璧なクロスを送った17分と、香川の縦パスに反応した清武が「決めてください」と言わんばかりのグラウンダーのパスを送った65分の逸機は、どうしてもネガティブに映ってしまう。プロならばあそこは絶対にモノにすべきだ、と。
 
 気温26度・湿度80パーセント以上という、いわば蒸し風呂状態のブリスベン・スタジアムでイラクのカウンターを警戒しつつ、根気よく守っていたDF陣からすれば、喉から手が出るほど欲しかったのが“給水と追加点”だった。
 
 事実、CBの吉田も試合後に少し厳しい表情でこう話している。「(暑さは)来ましたね。楽にゲームを進めるためにも、2点目、3点目が必要だった。自分たちで自分たちの首を絞めつつあった」
 
 その意味では、33分と89分にヘディングシュートでイラクを仕留め損なったCFの岡崎や、エリア内に入ってシュートに行けそうな場面でもそうしなかった左ウイングの乾(シュートは0本に終わる)も、本田と同罪なのかもしれない。
 
 いずれにしても、拙攻が目に付いたイラクに苦しめられたというよりも、決めるべきところで決められなかったことで「最後まで苦しい試合になった」(長谷部)。
 
 ただ、日本の攻撃がすべて良くなかったかと言えばそうではない。着目すべきは、乾と遠藤に代えて清武と今野を投入した63分以降だ。
 
 センターサークル付近でボールを持っても“捌き役”に過ぎなかったインサイドハーフの香川が、その交代を機にトップ下付近でプレーするようになってからは“攻撃のスイッチ”として機能。守備の負担という足かせが外れた香川が水を得た魚のように躍動し始めると、流れるようなパスワークが明らかに増えた。
 
 65分、89分と続けて決定機に絡んだ香川は、やはり相手ゴールの近くでボールを持ってこそ脅威になる。63分以降に限れば、誰よりもピッチで輝いていたのは、間違いなくこの背番号10だった。なにより求められているチャンスメイクでインパクトを放ったという点で、香川が果たした貢献は本田以上だったのではないか。
 
 鋭いパスで先制点のきっかけを作った遠藤、リスクマネジメントを優先して“大人の振る舞い”をした長谷部、前半だけなら攻守に奮闘した長友も素晴らしかった。
 
 それでも──。22分に遠藤、乾とつないだボールをゴールに押し込めなかったミスがあり、決して手放しで褒められるパフォーマンスではなかったとはいえ、イラク戦のMOMは香川だった。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)