17分に長友のクロスを頭で合わせた本田。しかしシュートは惜しくも右ポストを直撃した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 最後は本人も、苦笑いをするしかなかった。
 
 65分、岡崎慎司の完璧なポストプレーから、香川真司が前に抜け出す。素早いカウンターで左サイドを縦に行くと、外側から追い越した清武弘嗣にスルーパス。ゴール前、ファーサイドにはフリーの本田圭佑がいる。清武から丁寧に左足で送られたボールを、本田は右足で捉えた。しかし、シュートは右ポストを直撃。ゴールとはならなかった。
 
 シュートがポストやバーに阻まれたのはこの試合三度目だ。スタジアムはため息と物珍しさからくる笑いに包まれ、大型ビジョンには苦々しく天を仰ぐ本田の表情が映し出されていた。
 
 初戦のパレスチナ戦同様、この試合でも本田は早い時間帯で絶好機を迎えた。17分、左サイドの長友佑都が相手DFを翻弄し、右足でクロス。パレスチナ戦でも同じようなシーンからファーサイドで合わせた(オフサイドの判定)が、その時のシュートはサイドネットへ。今度は丁寧に体勢を低くし頭で合わせにいったものの、放たれたボールは目の前の右ポストに当たった。
 
 さらに47分、今度はパスワークからゴール前でボールを受けると、一度は香川へのスルーパスを出したが、これはDFに阻まれる。もう一度転がってきたボールに対し、今度は右足を強振。しかし、シュートはまたしてもバーを直撃した。
 
 そして、冒頭のシーンである。3度の“直撃”のうち、右足で放った2本目のシュート以外は、完全にシュートコースも空いた状態で、あとは押し込むだけだった。誰が見ても、決めなければいけない場面。この試合も初戦に続いてPKを決めて大会2点目を記録したが、結局流れの中ではいまだゴールネットを揺らせていない。消化不良な印象は、否めない。
 
 とはいえ、得点以外の部分では徐々に鋭さを増している様子が窺えた。パレスチナ戦は終始動きが重たい印象だったが、イラク戦は自らのフィニッシュ以外でも再三チャンスメイクに関与した。また速攻の場面では、味方がボールを持つと激しいスプリントを繰り返してはスペースへと流れ込み、ボールを呼び込んだ。こうした、今季ミランで見せている好調時のプレーが随所に見られるようになってきたことは今後の好材料だ。それだけに、右肩上がりの状態を後押しするゴールが欲しかった。

【マッチレポート|日本 1-0 イラク】

 試合後、2試合連続でPKを決めたこと以上に、好機を連続して逸したことに質問が集中した。
「余裕はないですよ。今日は反省しないといけないですね」
 
 数ある決定機を決められなかった選手が吐く、紋切り型の自省の言葉。しかし、本田は続けて自分らしい独特な考えを述べていった。
「チャンスには多く顔を出していた? そう言って頂けるとありがたいですけど。僕自身もね、外したところはしょうがないと思っている。それよりも、ああいったビッグチャンスをあと3、4本は作れるようにならないと。7、8本は外さないでしょうから。得点を量産する選手は、そういう考え方をすると思う。自分の中ではもちろんビッグチャンスが来たら、決めようと思っているけど、それは当たり前のこと。それでも決められない可能性がある。それよりも、今日あった3本のチャンスを6本にする。そのためのフィジカル的要素、駆け引き、周りとのコンビネーションを高めていったほうが、(ゴールという)結果につながると思います」
 
 ゴールは時の運。そんな言葉もある。本田はゴールを決められなかったこと以上に、チャンスをさらに構築できなかったことを省みた。
 
 興味深いのは、「得点を量産する選手はそういう考え方をする」というコメントだ。先日、バロンドールを獲得したクリスチアーノ・ロナウドに対してコメントを求められると、「一選手が取れる点数の枠を覆し続けている。サッカー選手として刺激になる。常にああいうところを目指したい」と語った。
 
 試合数以上の得点数を記録するロナウドを、本田は別次元と認識している。そこに到達できるということではないが、ゴールを挙げ続ける選手のメンタリティーは自分にも取り入れられる。それはワールドカップ以降、変わりつつあるプレースタイルと意識に準ずる姿勢でもある。
 
 しかし、こうした本田の考え方を、ただ鵜呑みにすることもできない。流れの中であれだけ“普通に決められる”絶好機を得ながら、そのすべてをフイにした。それはサッカーにおいて、勝敗を左右することにもなり兼ねない。イタリアの結果至上主義の中でプレーする本田だが、これがセリエAの試合であれば間違いなく厳しい採点が付けられたはずだ。
 
 独特な思考は本田の特長であり、これまでの成長を支えてきた源泉でもある。ただし結果という裏付けを残せないのであれば、そうした独自性も説得力を欠く空疎な絵空事になってしまう。本田が本田らしく振る舞い、それを受け入れられるために――。次のヨルダン戦以降は、これ以上のイージーミスは許されない。
 
取材・文:西川結城