イラク戦がシーズン中の親善試合なら、「決定機を浪費した」のひと言で片付けてもいい。

 パレスチナ戦に続いて決定機を生かしきれなかったのは、課題として持ち越された。それでも、ハビエル・アギーレ監督のチームは優勝から逆算して試合を消化しており、まだトップフォームへシフトしていない。連覇への道のりは、折り返し点も迎えていないのだ。蒸し暑い気候のなかで勝点3を逃さなかった意味でも、したたかな戦いぶりという表現が当てはまる。

 イラク戦の収穫のひとつに、武藤嘉紀のプレーをあげたい。

 ゲームには平常心で入ることができたという。

「これだけ緊迫した試合で入るっていうことで、気持ちの面でも落ち着いた感じで今日は準備をしていました。そういったこともあって、いい入りができたんじゃないかなと思います」

 後半終了間際に3枚目のカードとして投入された武藤のプレー時間は、5分ほどに過ぎなかった。それでも、彼には価値あるものとなった。

「時間は短かったんですけど、最後のところで出してもらえるだけでも嬉しいですし、少しの時間でもアピールにつなげないと、これからまた出場時間は増やせないですし。自分としては全然前向きに考えてやれているので、時間は気にしてないです。それよりも、パレスチナ戦は入りが良くなくて、全然納得いくプレーができなかった。でも今日は、ホントに少ない時間、だったん、ですけど、自分が思ったとおりのプレーができたということで、逆に少ない時間でも自信にはなったのかなと思います」

 ホントに少ない時間、だったん、ですけど、と区切るように話したのは理由がある。時間は短くても得るものがあったという手ごたえを、さりげなく強調したかったのだろう。

 過去2試合の選手起用から判断すると、交代カードとしての優先順位は高い。攻撃を活性化したい局面で、ハビエル・アギーレ監督は今後も清武、豊田、武藤のいずれかをピッチ上に当てはめようとするはずだ。

 武藤自身も途中交代の役割を自覚する。

「これから総力戦にもなりますし、上にいけばいくほどレギュラーの選手の疲労も出てくると思うので、途中交代の選手が結果を出すとか、流れを変えるプレーは求められると思う。そこは自分も、意識してやっていきたいと思います」

 過去4度のアジア制覇は、途中出場の選手が結果を残した歴史でもある。2015年のオーストラリアで日本が頂点に立つことがあれば、その過程では12番目以降の選手の活躍があるはずだ。

 パレスチナ戦のマイナスイメージを払拭したことで、武藤は自分なりのリズムを取り戻していくだろう。背番号14を着けた22歳が、ジョーカーへ名乗りを上げる。