八百長疑惑で立場が危うくなっているアギーレ監督だが、イラク戦では勝利に結びつく采配を披露した。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ゴールは本田のPKひとつだけ。だが、危なげのない勝利だった。2点目、3点目が決まっていればもっと良かったが、過密日程と酷暑を考えたら悪くない結果だろう。
 
 一部では(アギーレ監督の)八百長疑惑の影響が取り沙汰されたが、全く問題はなかった。選手たちは俊敏な動きでマークを外し、前半から主導権を握り続けた。
 
 後半、イラクが選手交代を利用して反撃に出てくると、今度はアギーレ監督が仕事をした。今野、清武を投入してマークをはっきりさせ、同時に中盤のスペースも消した。これで、イラクからぴたりと勢いが消えてしまったのだ。
 
 終盤、足が止まったイラクを尻目に、日本はテンポ良くパスをつなぎ続けた。80分前後には、「鳥かご」をするかのように延々とパスを回した。終盤、右サイドを精力的に走り続けた酒井が痙攣を起こしかけたが、日本は体力を無駄遣いせず、1-0のままタイムアップの笛を聞いた。
 
 4年前の日本は、死闘に次ぐ死闘を制してチャンピオンになった。だが、今回はちょっと違う。試合運びが安定していて、隙が見当たらない。
 
 そのことについてアギーレ監督は、「4年前を経験しているベテランには、若い選手に経験を伝えてほしいと話している。キャプテンの長谷部がしっかりとチームを引っ張ってくれている」と語った。
 
 ちょっとやそっとのピンチでは動じないチャンピオンの風格を、このチームは醸し出している。
 
 だが盤石の強さは、アギーレ監督の仕事ぶりに負うところも大きいはずだ。渦中の人となったが、監督としては間違いなく有能だ。ピッチ内の問題を的確に見極め、交代やポジションチェンジによって確実に流れを変える。
 
 この夜は選手たちがきっちり役目を果たして、悪くなった流れを監督が変えてみせた。この勝利によって、選手と監督の信頼関係は強固になったのではないだろうか。
 
 どんな結果が出ても、大会後にアギーレは解任される公算が高い。だが、日本代表がそのことで大きなダメージを受けるとは考えにくい。このチームは、それだけ成熟していて精神的にもタフだからだ。
 
 もしかすると八百長疑惑による逆風は、日本を連覇に導く追い風になるかもしれない。2004年、中国でのアジアカップを思い出す。現地の反日攻勢にさらされた日本は、逆転に次ぐ逆転によって頂点に駆け上がった。
 
 周りに攻撃されるほど、チームは一枚岩になるものだ。憎まれながら勝ち上がる、強いチャンピオンの姿が見られるかもしれない。
 
取材・文:熊崎 敬
 
【アジアカップPhoto】日本 1-0 イラク