坂本真綾
LINE公式アカウントのアーティストへのインタビュー第7回は、声優としても高い評価を集める坂本真綾。1996年4月のデビューから20周年を迎える今年、1月28日にはニューシングル『幸せについて私が知っている5つの方法/色彩』をリリースする。同作のテーマでもある“幸福感”や、さいたまスーパーアリーナで行う20周年記念ライブ“FOLLOW ME”、お気に入りのクリエイターズスタンプなどについて話を聞いた。

――今年4月からデビュー20周年イヤーに突入されますが、15周年記念のベストアルバム『everywhere』から今日に至るまでの5年間は、全国ツアーがあり、プライベートでの結婚もあり、アルバム『シンガーソングライター』では文字通り全曲の作詞・作曲を手がけられたりと濃密な時間だったと思います。振り返ってみて如何ですか。

坂本: デビューが16歳だったので学業を優先して、前半の頃はリリースの頻度も2年ぶりのシングルとかあった気もしますけど、割とマイペースで、スローペースだったんですよね。一人のプロデューサーのもとで、慣れた環境の中での9年間があって。そこから少しずつ人と知り合って、色んなことを経験していく時代が始まって。

今度の20周年記念ライブのセットリストを考えていて、菅野よう子さんプロデュース時代とそれ以降、前半10年と後半10年という言い方を便宜上してるんですけど、私個人的には15周年より前と、この5年は同じぐらいの密度かもしれないというくらい濃密でしたね。振り返ってみると、15周年は思った以上に大きな節目だったなと思いました。

30代に突入したのもあるんですけど、結婚もそうですし、色んなことが自分の中でよりシンプルになっていた時代で。15年間で色々な殻を脱皮したのかな? 15周年を迎える直前ぐらいは、色々な葛藤やジレンマがあったんですけど、今は殻を剥き終わったゆで卵状態みたいな(笑)。すごく楽だし、楽しんでいるんですよね。もうスッキリと次の段階に向かえている状態で迎える20周年は、全然様子が違うなと思います。

――声優や舞台などのお仕事もある中で、音楽活動とのバランスはどのように意識されてますか?

坂本:デビューした16歳よりも前に演技を初めて、元々は役者に憧れてこの業界に入ったんですけど、歌詞を書いていることも含めて、自分のベースになっているのは音楽の表現で。役を演じる中で自分を忘れて何かになる楽しさがあるんですけど、改めて私はどう思うのか? 何を表現するのか? というのを与えられた役ではなく、自分から生み出していく別のエネルギーが必要で、音楽があって良かったと思うんです。ある意味、演じる役や日常の色んなことが全て音楽のネタ集めになっているような、音楽にフィードバックされていくような感覚がありますね。

――全曲の作詞・作曲を手がけたアルバム『シンガーソングライター』もありつつ、他のアーティストとの共同製作も積極的に楽しまれている印象を受けますが、『シンガーソングライター』以降に何か変化はありましたか?

坂本:一枚まるっと自分で作って歌うことで、全部そっちに行きたくなる可能性もあったんですけど、やっぱり自分は元々シンガーで、色んな楽曲と出会っていく喜びもあるので。音楽以外のことを続けているのもそうなんですけど、何かに偏り過ぎたくなくて。「これから先、自分の曲しか歌いません!」みたいになるのは嫌だったので、まずは積極的に他の人の曲を歌っていって、また自分のペースで曲が出来る時に作っていけばいいんじゃないかなって。発見としては、自分で作る曲は結構キーが低いという。自分の好きな声の幅って、意外に低い音域だったりすることに気付きました。

――今回のような両A面シングルは、曲ごとに異なるタイアップの世界観に寄り添った作品になると思いますが、CDが売れないと言われる時代に、シングル未収録のオリジナルアルバムや、コンセプトアルバム、シングルコレクションなど精力的にリリースされるのは、作品としての統一感を意識されているのでしょうか。

坂本:ある時は、幕の内弁当みたいに色んなシングルを敢えていっぱい入れることもあるし、逆にコンセプトアルバムみたいに世界観を確立したい時もあるので、ケースバイケースなんですけど、昔はシングルは入っていない方がいいと思ってました。普通、セールスのことを考えたら入れるべきなんですけど。

ただ、私はシングルを入れたが故に、アルバムの世界観が崩れちゃうというロジックも一貫性が無いような気がして、どうなんだろう? と思うんですよね。15周年を迎える前後に、今後の目標はシングル曲を入れても、一枚のアルバムとしてちゃんと繋がっているものを作れるようになることだと思ったから、今はほとんどシングルを入れているんですよね。この先アニメのタイアップ曲が多くなってくると、すごく個性の強い曲もあるので、シングル曲を入れても「それも私」と言えるものを常に作ることが今、面白いですね。