欧州初、全世界でも2番目に設立されたスウェーデンのストックホルム大学孔子学院が6月30日をもって閉鎖されることになった。同大学のウィディン副学長は、閉鎖の理由について「スウェーデンの法律に合致せず、争議が発生していた」などと説明した。

 孔子学院は中国政府が海外の大学などと提携し、中国語や中国文化の教育、宣伝、中国との友好関係促進のために設立している組織だ。ストックホルム大学孔子学院の設立は2005年2月で、欧州初、全世界でも2番目に設立された孔子学院だった。

 ウィディン副学長は中国との提携について「今の状況は10年前と違うようになった」、「われわれと中国の学術交流のレベルは、まったく異なるレベルになった」と、中国との交流が大きく前進したことを認めた上で、同大学内の孔子学院について「非合法な面があった」と説明。さらに「スウェーデンの大学内に別の国家が資金を出す学校があると、問題のある操作が容易にできてしまう」と述べた。

 ストックホルム大学は、同大学学内の孔子学院について、5年ごとに契約を更新していたが、2015年には契約更新を行わずに、同年6月30日をもって孔子学園を閉鎖することを決めた。

  これまでも米国などで孔子学院が閉鎖された例はあるが、関係者が「非合法」、「問題のある操作」といった“刺激的な言葉”で理由を説明した例はなかったという。

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◆解説◆
 世界各地に設立された孔子学院を統括しているのは中国政府・教育部に直属する国家漢語国際推広領導小組弁公室(国家中国語国際推進指導チーム事務局)だ。世界初の孔子学院は2004年11月に、韓国ソウル市で設立された。

 自国文化を世界各地で教育の形で広め、宣伝する組織は、ブリティッシュ・カウンシル(英国)やゲーテ・インスティトゥート(独)などの例もあり、それほど珍しいことではない。しかし孔子学院の場合、独立した施設や組織として運営されるのではなく、各地の大学などと提携し、施設としても独立していない。

 しかも、ブリティッシュ・カウンシルやゲーテ・インスティトゥートが非政府組織の運営であるのに対し、孔子学院は政府機関が直接統括しているために、提携先の大学にとって「外国政府の意向を反映する組織を抱え込むことで、教育機関として健全な自主性や独立性が影響を受ける」との指摘が出ている。

 これまでに、カナダ、米国、日本など多くの国で、孔子学院を批判する声が出た。閉鎖された例も多い。

 中国は孔子学院を設立し始めた前後から、海外における自国系メディアを使っての情報発信にも力を入れるようになった。それまでに中国が行っていた情報や主張の発信は主に、世界各地で収集した情報を本国に集め、本国から意見や見解を表明するものだったが、より複合的な方法に切り替えたと判断できる。

 ただし、それ以降も「中国の主張に納得」する雰囲気は、それほど高まっていない。中国人はしばしば「急成長を続ける中国に嫉妬し敵意を燃やす人がいるから」などと説明するが、実際には一党独裁という世界でも少なくなった体制を取り続け、その体制による価値観や発想、強引な主張が多いことが、より根本的な原因と考えられる。

 しかし、世界に向けて自国の紹介や宣伝に力を入れることは、国益追求のための大切な努力と評価してよいだろう。ひるがえってみれば、日本が同様の努力をどれだけしているか、心もとない面もある。(編集担当:如月隼人)