先週開催されたCES 2015で、「削ぎ落とすことで生まれるイノヴェイション」が求められていることを強く感じたというプロデューサー西村真里子。彼女が、CESで見つけた注目の3製品を紹介。

「CES 2015から見えてきた「モノとマーケティングのミニマリズム」」の写真・リンク付きの記事はこちら

「death by a thousand cuts」という慣用句がある。小さな傷でもたくさんあれば、巨人も破滅に追いやられてしまうことを意味するフレーズだ。シリコンヴァレーで働くあるマーケターは、「この言葉の意味するところは、スタートアップにも大企業にも、すべての企業に当てはまる」と語る。

幅広いラインナップを揃える大企業よりも、1つひとつの機能に特化し、ターゲットセグメントを明確化したプロダクトやブランディングをするスタートアップが成功する現在。その良い例が、GoProだ。エクストリームスポーツセグメントで、“Self-Document“できるカメラに特化することで成功をおさめている。こうした「小さな切り傷」となりうるプロダクトが、今年のCESにはいくつも登場した。

毎年1月ラスヴェガスで開催されるこの世界最大級の家電見本市は、わたしたちの未来の生活が、どんなものになるかを考えるのにふさわしいコンセプトモデルやセッションで溢れている。

出展された数々から見えてきたのは、人々の生活、企業活動をより「豊かにする」ものよりも、より「シンプルにする」アプローチの商品や企業が生き残るのではないか、ということだ。

わたしたちの生活はスマートフォンをはじめとする、24時間インターネットにつながるスマートデヴァイスの登場で劇的に快適になった。だからこそ、それらの「充電」が進化すれば、わたしたちの生活はよりシンプルに快適になるだろう。コードレス充電やワイヤレス機能は、今年のCESで印象に残ったプロダクトに共通するコンセプトのひとつだ。ミニマリズムのアプローチでシンプルな生活をかなえる製品、3つを紹介しよう。

西村真里子| MARIKO NISHIMURA

HEART CATCH 代表取締役。国際基督教大学( ICU )卒。IBM でエンジニア、Adobe Systems および Groupon にてマーケティングマネジャー、デジタルクリエイティブカンパニーバスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に HEART CATCH を設立。プロデュースプロジェクト「BLOODY TUBE」はカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル2014にて金賞受賞。ウェブ/インターネットのインタラクティヴィティと変革を起こし続けるテクノロジーの進化に魅了され続けている。

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1.ガソリンスタンドも充電スタンドもいらない

スターバックスコーヒーを筆頭に、カフェ向けのワイヤレスチャージャーが登場し始めているが、今年のCESではクルマ向けのワイヤレスチャージャーが発表された。開発したのは、ワイヤレスチャージ専門のスタートアップ「WiTricity」だ。

WiTricity

今後、道路の要所に設置されれば、ガソリン切れや充電を意識せずに、半永久的に走り続ける車社会が訪れるかもしれない。

2.家をスマート化する乾電池

スマートホーム、スマートカーなど、「スマート」の名のつくプロダクトは、従来の生活に何かしらのガジェットを追加(ADD)することで成立するものが多い。今年のCESで発見した「ROOST」はADD不要のスマートバッテリーだ。

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ROOSTは、煙探知機用乾電池として開発された。(スマート化されていない)従来の探知機にROOSTを使用すると、アプリに警報を転送してくれる。Nestのようにあのわずらわしい音を聞かなくて済む、というわけだ。それだけでなく、通常の乾電池としても利用できるのがすごいところだ。WiFi経由でさまざまな情報をスマートフォンに情報を送ってくれる仕組みになっている。

導入が必要になるガジェットを開発するのではなく、電池にイノヴェイションを起こすことによって、生活をシンプルにしようとするROOST。彼らは今後、乾電池によるスマートホーム化を目論んでいる。

3.こぎ心地の変わらない自転車ペダル

これまでも自転車向けスマートデヴァイスは登場していた。自転車にデヴァイスをつけてスマートフォンと連携させることによりカロリー消費や走行距離などを計るものだったが、今年「Connected Cycle」が出品したペダルは、自転車ペダルそのものだ。それまでの自転車運転と変わらないエクスペリエンスを提供しつつ、防犯やヘルスケアデヴァイスとしてスマートフォンと連携できる。

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今後も多くのプロダクトが世の中にリリースされるだろう。そのなかでも人々の生活を変えずにスマート化させるプロダクトが生き残るだろうと、筆者は今回のCESを通じて感じた。

CiscoのCEO、ジョン・チェンバースは、基調講演で「これからの5〜10年で、大企業の60%は倒産するほど変化の激しい時代(Hyper Speed Change era)に突入している」と語った。

いまからスタートアップチャレンジを考えている人たちにとっては、いかにミニマリズムアプローチで物が作れるか? そしてGoProのようにセグメントを明確に絞りマーケティングするのが成功の鍵ではないかと思う。「death by a thousand cuts」という言葉が示す通り、1つひとつのインパクトは小さくとも、変革に向けてのヴァージョンアップにひとりひとり参加していく時代かもしれない。

CES 2015を写真ギャラリーで振り返り

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1/11Sony 4K Action Cam
小さなPOVカメラ(主観カメラ)を愛するのは、サーファーや命知らずたちだけではない。ドローンパイロットも、同じくPOVカメラを愛している。軽量で防水性を備え、丈夫なうえに、最新のものだと4K映像も撮影できる。ソニーの新しい「4K Action Cam」は、ドローン撮影のために、さらに進化している。「Drone shake」、つまりドローンのブレを軽減するためのスタビライザーを備えているのだ。500ドル。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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2/11Mercedes-Benz F 015
ドイツの自動車メーカーは、自律走行車のラジカルなコンセプトでCESを盛り上げた。見た目はスペースエイジの「石鹸」のようだが、インテリアは興味をそそるもので、フロントシートが180度回転し、車内をラウンジスペースに変える。クルマを運転すること、そしてクルマに乗ることに対する、大胆な発想の転換がある。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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3/11Bang & Olufsen BeoSound Moment
「Moment」は、手持ちの音源やストリーミングサーヴィスの音楽とスピーカーとをつなぐシステムだ。とくに気に入ったポイントは、タッチスクリーン式ディスプレイ背面がオーク材のパネルになっているところだ。いわゆるスマートデヴァイスとは違った音楽の聴き方を楽しめるのが、新鮮だ。PHOTO BY ALEX WASBURN/WIRED

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4/11Bionic Bird
CES でわたしたちが見たドローンのなかで、一番のお気に入りが、これだ。Tim Bird(カラフルなプラスチックの鳥のおもちゃ)をつくったその人の孫にあたるつくり手によるもので、Bluetooth によるスマートフォンでの遠隔操作が可能だ。充電には、白い卵型の充電器が用意されている。多くのテッキーなおもちゃと違い、「Bionic Bird」はアウトドアで遊べる。139ドル。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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5/11Samsung Flex Duo Dual Door Oven
一度にローストダックと梨のタルトをつくるのは難しい。どちらかを先に調理しておくか、お隣にオーヴンを借りでもしなければ。いや、最適な方法がもうひとつ。サムスンの最新オーヴン「Flex Duo」を使えばいいのだ。2つの調理をそれぞれ違う温度で、同時に調理できるもので、一方のドアを開けてももう一方の温度を下げることがない。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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6/11LG 77-inch 4K Flexible OLED
LGの巨大なテレビは、いま買うにはあまりに高価すぎる──20,000ドルを超える価格だ。しかし、そのコンセプトはテレビの未来をはっきりと示してくれるものだ。まず、OLEDだということ。それから4K。最後に、ボタンひとつで画面をカーヴさせることができるのだ。PHOTO BY ALEX WASBURN/WIRED

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7/11Netatmo
数多く並んだホームセキュリティ機器のなかでも、Netatmo社のカメラはもっともイノヴェイティヴで、スタイルもよかった。顔認証機能が備わっているので、家族の外出や帰宅にあわせてスマートフォンに通知をしてくれる。高画質のライヴストリーミングもできるし、SDカードへの保存も可能。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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8/11Acer Chromebook 15
Chromebook は、アーリーアダプターたちに大当たりした。「Chromebook 15」は、15.6インチのHDディスプレイとインテルの第5世代 Core プロセッサー「Broadwell」を備えた、ビジネス/エンターテインメントのどちらにも適したモデルだ。現時点で Chromebook の最上位機種といえるもので、価格は250ドルから。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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9/11Parrot RNB 6
Parrot の自動車用”インフォテインメント”ユニット。ナヴィゲーションや音声操作などに加え、クルマにつけたカメラからの映像を映し出すことができる。白眉なのは、Android/iOSの双方に対応していることだ。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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10/11Withings Activité Pop
多くのウェアラブルデヴァイスはテッキー過ぎて、かわいくない。それに比べて、Withings の「Activité Pop」はどうだ。このアクティヴィティトラッカーは、見た目もフィット感も、質も機能も優れている。本体のカラーヴァリエーションは黒、茶、ティールグリーンが揃い、バンドは無数の選択肢がある。そして価格も150ドルと破格、なのだ。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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11/11Naim Audio Mu-so
「Mu-so」は、これまで試聴したなかで最高のワイヤレススピーカーのひとつだ。6つのスピーカーと450Wのアンプを備えており、あらゆるデヴァイスと接続できる。何より、このツマミがすばらしい。たまらない触り心地なのだ。飽和状態のコンシューマーオーディオ市場で、なんとも素晴らしいワイヤレススピーカーを見た思いがする。1,354ドル。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Sony 4K Action Cam
小さなPOVカメラ(主観カメラ)を愛するのは、サーファーや命知らずたちだけではない。ドローンパイロットも、同じくPOVカメラを愛している。軽量で防水性を備え、丈夫なうえに、最新のものだと4K映像も撮影できる。ソニーの新しい「4K Action Cam」は、ドローン撮影のために、さらに進化している。「Drone shake」、つまりドローンのブレを軽減するためのスタビライザーを備えているのだ。500ドル。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Mercedes-Benz F 015
ドイツの自動車メーカーは、自律走行車のラジカルなコンセプトでCESを盛り上げた。見た目はスペースエイジの「石鹸」のようだが、インテリアは興味をそそるもので、フロントシートが180度回転し、車内をラウンジスペースに変える。クルマを運転すること、そしてクルマに乗ることに対する、大胆な発想の転換がある。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Bang & Olufsen BeoSound Moment
「Moment」は、手持ちの音源やストリーミングサーヴィスの音楽とスピーカーとをつなぐシステムだ。とくに気に入ったポイントは、タッチスクリーン式ディスプレイ背面がオーク材のパネルになっているところだ。いわゆるスマートデヴァイスとは違った音楽の聴き方を楽しめるのが、新鮮だ。PHOTO BY ALEX WASBURN/WIRED

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Bionic Bird
CES でわたしたちが見たドローンのなかで、一番のお気に入りが、これだ。Tim Bird(カラフルなプラスチックの鳥のおもちゃ)をつくったその人の孫にあたるつくり手によるもので、Bluetooth によるスマートフォンでの遠隔操作が可能だ。充電には、白い卵型の充電器が用意されている。多くのテッキーなおもちゃと違い、「Bionic Bird」はアウトドアで遊べる。139ドル。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Samsung Flex Duo Dual Door Oven
一度にローストダックと梨のタルトをつくるのは難しい。どちらかを先に調理しておくか、お隣にオーヴンを借りでもしなければ。いや、最適な方法がもうひとつ。サムスンの最新オーヴン「Flex Duo」を使えばいいのだ。2つの調理をそれぞれ違う温度で、同時に調理できるもので、一方のドアを開けてももう一方の温度を下げることがない。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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LG 77-inch 4K Flexible OLED
LGの巨大なテレビは、いま買うにはあまりに高価すぎる──20,000ドルを超える価格だ。しかし、そのコンセプトはテレビの未来をはっきりと示してくれるものだ。まず、OLEDだということ。それから4K。最後に、ボタンひとつで画面をカーヴさせることができるのだ。PHOTO BY ALEX WASBURN/WIRED

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Netatmo
数多く並んだホームセキュリティ機器のなかでも、Netatmo社のカメラはもっともイノヴェイティヴで、スタイルもよかった。顔認証機能が備わっているので、家族の外出や帰宅にあわせてスマートフォンに通知をしてくれる。高画質のライヴストリーミングもできるし、SDカードへの保存も可能。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Acer Chromebook 15
Chromebook は、アーリーアダプターたちに大当たりした。「Chromebook 15」は、15.6インチのHDディスプレイとインテルの第5世代 Core プロセッサー「Broadwell」を備えた、ビジネス/エンターテインメントのどちらにも適したモデルだ。現時点で Chromebook の最上位機種といえるもので、価格は250ドルから。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Parrot RNB 6
Parrot の自動車用”インフォテインメント”ユニット。ナヴィゲーションや音声操作などに加え、クルマにつけたカメラからの映像を映し出すことができる。白眉なのは、Android/iOSの双方に対応していることだ。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Withings Activité Pop
多くのウェアラブルデヴァイスはテッキー過ぎて、かわいくない。それに比べて、Withings の「Activité Pop」はどうだ。このアクティヴィティトラッカーは、見た目もフィット感も、質も機能も優れている。本体のカラーヴァリエーションは黒、茶、ティールグリーンが揃い、バンドは無数の選択肢がある。そして価格も150ドルと破格、なのだ。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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Naim Audio Mu-so
「Mu-so」は、これまで試聴したなかで最高のワイヤレススピーカーのひとつだ。6つのスピーカーと450Wのアンプを備えており、あらゆるデヴァイスと接続できる。何より、このツマミがすばらしい。たまらない触り心地なのだ。飽和状態のコンシューマーオーディオ市場で、なんとも素晴らしいワイヤレススピーカーを見た思いがする。1,354ドル。PHOTO BY JOSH VALCARCEL/WIRED

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