米ツアーの2014−2015年ツアーが再開した。年明け初戦は、昨季ツアーの優勝者34名で争われたヒュンダイ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ(1月9日〜12日/ハワイ州。カパルア・プランテーションコース=パー73)。昨季、ザ・メモリアルトーナメント(2014年5月29日〜6月1日/オハイオ州)で米ツアー初優勝を飾った松山英樹(22歳)も参戦し、3日目を終えた時点ではスコアを17アンダーまで伸ばして、ジミー・ウォーカー(アメリカ/35歳)と並んで首位タイに立った。しかし最終日、熾烈な優勝争いに最後まで加わりながらも、あと一歩及ばず、通算20アンダー、3位タイに終わった。

 2日目、3日目と「66」の好スコアを出して、トップに躍り出た松山。最終日最終組のラウンドでも落ち着いたプレイを見せ、同じ首位スタートのJ・ウォーカーと白熱した戦いを見せた。一時、J・ウォーカーが3連続バーディーを奪って3打差をつけられたものの、最終18番(パー5)を迎えた時点では、21アンダーでトップのJ・ウォーカー(21アンダー)と、同スコアで先にホールアウトしたパトリック・リード(アメリカ/24歳)に1打差に迫っていた。

 18番は松山が3日連続でバーディーを奪っていた得意のホール。J・ウォーカー次第では、P・リードと3人によるプレーオフに進む可能性もあった。そして実際、松山のバーディーパットの前に、J・ウォーカーがバーディーパットを外してパー。松山にプレーオフに向かうチャンスが巡ってきた。が、松山の2mのパットは無常にも左に外れ、松山は天を仰いだ。

「パットがもう少し入ってくれていれば......」

 ラウンド後、松山は第一声でそう語って肩を落とした。18番に限らず、16番、17番でも惜しいパットを外していた。だから余計に、その思いが強かったに違いない。

 さらに優勝のチャンスを土壇場で、それも自ら逃したショックは計り知れない。松山の口数は普段よりも一層少なくなった。

「プレーオフに進めず、相当悔しい? そうですね。最後のパットは? 2mぐらい。ボールはどう切れたのか? わからないです。優勝争いの中、平常心でプレイできたか? まあ、普通にできました。それは思った以上に? そうですね......」

 松山は常々、優勝争いの中でプレイすることを欲している。それは、松山だけに限らずトップクラスの選手なら誰しもが望むこと。なぜなら試合の中で、優勝争いの中で、どれだけ自分のプレイができるか、ということがゴルフの本質だからだ。練習場やプレッシャーのかからない順位でのプレイでは、本当の実力は推し量ることはできない。「ゴルフはメンタルのスポーツ」と言われる所以がそこにある。

 そのプレイの違い、つまり優勝争いの中で生じる微妙な心の動きを、「優勝争いをした人にしかわからない......」と、松山は語る。

 そうした状況の中、今回はわずか一打及ばなかったが、早い段階で優勝争いから脱落しないで、最後まで崩れずにチャンスを残したことは価値がある。

「こういうこと(経験)が大事だと思う。こういうのを何回も、何回も(経験)していくうちに、(優勝争いの中でのプレイに)慣れていくのだと思う。ほんと、(結果を出すには)そういうことの繰り返しが大事なんだと思う。

(最終日は)パットが途中から入らなくなって、そこからうまくいかなくなった。それでも、それなりのラウンドができて、崩れることなくホールアウトできたのはよかった。パットが入らなかったのは、いろいろな原因があると思いますけど......。試合でそれを、次に優勝争いをしたときにはそれを、決められるようにがんばっていきたい」

 戦いが終わって、30分ほど経過したぐらいだろうか。しばらく口惜しさでいっぱいだった松山から、そう前向きな言葉が発せられた。

 松山にとって、3位タイという結果は不本意かもしれない。しかし今季は、すでに3度目のトップ10フィニッシュとなる。2015年の初戦で、松山は世界のトッププレイヤーであることを改めて証明し、米ツアー2勝目が近いことを確かに予感させた。4日間のラウンドの中では、松山自身の言葉からもその手応えが感じられた。

「昨春に比べれば、ずっといいゴルフができている。あの頃は、ボギーをひとつ叩くと、それがそのあとのプレイに響いてしまった。それに比べて今は、もっとリラックスしてプレイができている。優勝争いをする中でも、ひとつでも何かができるようになっていけばいい。それが、結果として優勝につながれば最高だけど、うまくいかなかったとしても、自分の中にひとつずつ何かが蓄積されていけばいいかな、と思っている。何にしても、試合になったら、一打、一打、集中してやっていくことが大事。それで、うまくいけば優勝のチャンスはある。逆にミスが多くなれば、下位に落ちるだけ。ミスをしない人が勝つ。当然、自分にチャンスが来れば、どんどん優勝を狙っていきたい」

 米ツアー2勝目はもちろんだが、今季はメジャー制覇の期待もかかる松山。本人の目標もそこにある。

「まずは、マスターズ(4月9日〜12日/ジョージア州)で結果を出したい、という気持ちは強い。それに向けて、試合をこなしながら、うまくレベルアップしていければいいな、と思っています。実際に試合となれば、(マスターズのための)調整という感じのプレイはできないんでしょうが、1試合の中で少しでも、何か1個でもいいから、身につけていきたいですね」

 この大会では、ショットが安定しない中、ショートアイアンが冴え渡っていた。米ツアーにおいて松山は、ショートゲームの精度を上げ、引き出しを増やすことを課題としているが、今やそれも着実に進化を遂げている。松山が言うように、試合を消化するごとに何かひとつでも進歩していけば、コンディション的な問題を抱えていない今の松山なら、メジャー制覇という夢を実現してもおかしくない。

武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva