クリエイターとして、起業家として、会社人として働くときに、もち続けるべきマインドとは。トークイヴェント「Rethink Work」で、独立系ヴェンチャーキャピタルファンド「ANRI」創業者/ジェネラル・パートナーの佐俣アンリと、「HEART CATCH」を起業した西村真里子が、これからの「働く」を語った。

「これからの「働く」を考え直すための3つのヒント:佐俣アンリと西村真里子との「Rethink Work」」の写真・リンク付きの記事はこちら

大学を卒業したら企業に就職して、スーツを着て満員電車に乗って変わらぬ職場を往復する。夜遅くまで働いて、来る日も来る日も定年までそれを繰り返す。

そんな従来の働き方が時代遅れだと指摘されて、もうずいぶんと時間が過ぎた。デジタルテクノロジーの進化が地理的・物理的な壁をなくし、人々のワークスタイルはいま、実際に変わりつつある。「働く」が脱中心化されていくなか、仕事や働き方について、ぼくらはもう一度考え直す(”Rethink”する)必要がある。

生活をとりまくあらゆるものを再定義していくことをコンセプトに活動する「Rethink_Project」と『WIRED』がコラボレーションするトークイヴェント。前回の「Rethink Fashion」に続き、第2回で Rethink したのは「働き方」だ。

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独立系ヴェンチャーキャピタルファンド「ANRI」創業者/ジェネラル・パートナーの佐俣アンリと、デジタルクリエイティヴ集団「バスキュール」から独立し、「HEART CATCH」を設立したばかりの西村真里子をゲストに招き、「Tokyo Work Design Week」オーガナイザーの横石 崇と『WIRED』日本版 編集長の若林 恵を交えた4人で、「Rethink Work」をテーマにトークセッションを行った。

自らも起業家であり、常に起業家に囲まれた生活を送るという佐俣と、プロデューサーとしてクリエイターとともに働く西村。起業家とクリエイターのワークスタイルから見えた、これからの「働く」を考える3つのヒントを紹介する。


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佐俣アンリ|ANRI SAMATA

ANRI General Partner。1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、リクルートに入社、モバイルコンテンツ・ソーシャルゲームの新規事業立ち上げに携わる。クロノスファンド/EastVentures にて FreakOut(2014年マザーズ上場)、CAMPFIRE の投資と事業立ち上げを行う。また個人として raksulスマポ(2013年楽天に売却)の立ちあげを支援する。2012年 ANRI 設立、独立系ヴェンチャーキャピタルとして23社に投資実行し、事業立ち上げを行っている。現在20億円規模のファンドを運営中。主な投資支援先としてraksul、Coiney、CrowdWorks(2014年マザーズ上場)、MERY(2014年 DeNA に売却)、UUUM、schooがある。

1.やりたいことは決めなくていい

佐俣アンリの考え方:時代が変わればなくなる仕事もあるので、職種でやりたいことを決めるのはすごく怖いことだと思っています。必要なのは、やりたいことをガチガチに固めるのではなく、ざくっとした方向感。「あのベクトルで生きていたい」ということを決めないと、気が付いたら自分が目指していたものがなかったということになりかねない。大事なチョコレートを箪笥のなかに入れてたら溶けてなくなってたみたいな人生って怖いじゃないですか。

ぼくは自分の墓標に、どんな言葉が刻まれるとうれしいかをずっと考えているんですよね。墓標が決まると、自分がやらなくちゃいけないことがきれいに決まってくる。そうすると仕事は何をすればいいのかというのも定義されていくと思います。

西村真里子の考え方:世の中は変わっていくので、やりたいことをひとつに決めて固執するよりも、いろんな仕事・職種を経験したり、フットワーク軽く行きたい場所にすぐに移れるようになっておきたい。わたし自身がミーハーだから、というのもあるけれど(笑)。

ロールモデルも1人に絞るのではなく何人かカードをもっておいて、その人たちといつでも相談や仕事を一緒にできるようになりたいと思っています。いまは1人の革命家が世界を変えるというよりも、それぞれのコミュニティがヴァージョンアップして世界を変えていく時代。いくつかのコミュニティに、それぞれ自分が目指している人をもっておくのがいい。

2.やりたいことは声高にしゃべる

西村真里子の考え方:クリエイターにとっていいものをつくることはもちろん大事ですけど、「自分は何ができるのか」ということをブログやTwitterで発信することも大切だと思っています。同じスキルレベルをもっていても、自分のマネジメントができている人が仕事を多く取っている。クリエイターが学ぶべきことは、セルフプロデュースだと思いますね。

佐俣アンリの考え方:やりたいことは、”超”声高にしゃべった方がいいですよね。例えばあるプログラマーが『ぼくは JavaScript しかやりません』って300人くらいに言っていたら、いつの間にか『JS おじさん』と呼ばれるようになると思うんです。そうやって自分が何者かをはっきりさせる。一途にやりたいことを言い、同時にその裏側にあるやりたくないことをちゃんと自分で線引きした方が得をする、そんな時代になっている気がします。

3.プライヴェートと仕事の境をなくす

佐俣アンリの考え方:プライヴェートと仕事の境をなくすことが正しいことだと思っています。極端に言えば、呼吸をすることが仕事になればいいな、と。ぼくは妻も起業家で( Coiney 代表取締役社長 佐俣奈緒子)、友達も全員起業家。仕事は起業家と会うこと、趣味も起業家と遊ぶこと。だから、オン/オフという考え方をしないんです。仕事と趣味の間に共通するものを見つけて、なんとかその2つをつなげていく。結局は、それがいちばん楽になるんですよね。


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西村真里子| MARIKO NISHIMURA

HEART CATCH 代表取締役。国際基督教大学( ICU )卒。IBM でエンジニア、Adobe Systems および Groupon にてマーケティングマネジャー、デジタルクリエイティブカンパニーバスキュールにてプロデューサー従事後、2014年に HEART CATCH を設立。プロデュースプロジェクト「BLOODY TUBE」はカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル2014にて金賞受賞。ウェブ/インターネットのインタラクティヴィティと変革を起こし続けるテクノロジーの進化に魅了され続けている。

「働く」ことに違いはない

本イヴェントは、サンフランシスコのスタートアップが開発した「Ploom」のサポートで実施された。

Ploomは、タバコをRethinkすることで生まれたデヴァイスで、煙ではなく「ヴェイパー」(たばこ葉由来の成分が含まれた霧状のもの)を楽しむというもの。”タバコの iPod”とも呼ばれ、屋内の禁煙化が進むアメリカでは従来のタバコに置き換わるものとして注目を集めているという。

このようにアメリカではスタートアップから既存の産業構造をひっくり返すようなゲームチェンジャーが生まれるのに対し、日本の風土では大きな規模に発展するスタートアップが生まれにくいと、WIRED 編集長の若林は話す。しかしもちろん、大企業とスタートアップはどちらがいい悪いという話ではない。日本のように企業の新陳代謝が起こりにくい社会でも、イノヴェイションを起こすことは可能だと佐俣は言う。

「大企業に行くかスタートアップをやるかは好みの問題でしかなくて、”世界戦争の一兵卒”をしたいのか”村の一揆の中心人物”になりたいのかという違いです。スタートアップについて話すとき、『大企業はダメだ』という話になりやすいんですけど、企業のなかで新しいものを生んでいくのもイノヴェイションなんです。アメリカは会社という器の新陳代謝が速いのに対し、日本は器は残ったまま中身が変わっていくという構造なので、たとえ器が残っていも、結果的に世の中に新しいものが投入され続けていればいいと思いますね」(佐俣)

大企業でもスタートアップでも、「働く」ということに違いはないと西村も続ける。

「大企業のなかでも、個人プレイヤーのように活躍している人はかっこいい。組織にいても自分に何が求められているのかをちゃんとわかりながら動ければいいし、大きな会社ほどいろいろなファンクションがあるので、やりがいはあるんじゃないかなと思います」(西村)

企業にいても、自らが中心となって動いていくヴェンチャーマインドをもっていればいい。逆にスタートアップを立ち上げても、続けるなかでその心を忘れてはいけない。

組織にいても独立をしても、自分が生み出せる価値で、誰かの役に立つこと。「働く」というのは、そういうことなのだろう。

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