オーストラリアのメディアは日本を最大のライバルと認めつつも、それほどの関心は払っていなかった。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 日本が4-0でパレスチナに快勝した翌日。開催国オーストラリアのメディアは、自国の最大のライバルとして捉える日本代表の初戦をどう伝えたのか。
 
 準国営放送局『SBS』のサッカーポータルサイト『the World Game』は、オーストラリアのサッカー通の根強い人気を集める。試合終了からほどなくして、そのサイトに「日本はパレスチナには強過ぎた」という見出しの記事が掲載された。
 
 内容は、速報記事の域を出ておらず、主に経過を伝えるものだったが、いくつか興味深い記述があった。
 
 遠藤の先制点に関しては、
「強風のせいで、いつもの小気味よく対角線で交わされるパス回しが上手くいかない日本が、どれだけぞんざいにプレーしたかを強調したに過ぎない」
 と手厳しい。
 強い風の影響で、得意とするパスを繋いで崩すサッカーができず、苦し紛れに放ったシュートが偶然入ったと言わんばかりだ。
 
 さらには3点が決まった前半を「単調」と表現した一方で、「前半の日本のベストプレーヤーは、粘り強いオーバーラップから2得点を生み出した長友佑都」と日本の左SBを高く評価した。
 
 この記事と対照的な考察をしたのが、試合を生中継した『FOX Sports』のコメンテーター、元オーストラリア代表FWのジョン・アロイージだ。
 
 試合内容を振り返るコメントを求められ、日本が積極的にミドルシュートを放ち、時折、ロングボールを交えてプレーしたことに触れ、
「これまでの日本にはなかったスタイル。今までのパス一辺倒のサッカーにアクセントが加わり、とても有効」
 と高く評価した。
 
 その他、さまざまな媒体のウェブ版に掲載されたのが、
「日本、パレスチナを沈める――新参者には強過ぎた王者」
 という見出しで地元通信社『AFP』が配信した記事だ。
 
 この記事は、当地のスポーツメディアも関心を示すようになってきた、ハビエル・アギーレ監督の八百長問題に簡単に触れていたのが特徴的で、次のような指揮官の描写があった。
「アギーレは、後半の終了間際、集中力が明らかに落ちた選手たちをタッチライン際から怒鳴りあげた。期待外れのパフォーマンスで、サポーターとの蜜月関係も終わり、真価が問われるメキシコ人指揮官は、アジア王者のタイトル防衛を義務づけられ激しいプレッシャーに晒されている」
 
 テレビは日本の試合をほとんど取り上げていない。民放『チャンネル9』の人気のモーニングショー「TODAY」では、アジアカップ自体が全豪オープンを控えるテニス、シーズンたけなわのクリケットに次ぐ扱い。しかも、試合のなかった自国代表の情勢だけで、日本にはまったく触れなかった。
 
 国営放送『ABC』の扱いもほぼ同じ。オーストラリア代表の試合を録画中継(筆者注:有料放送FOXの独占契約で、地上波中継はグループリーグはオーストラリア戦に限られ、その試合も録画中継)する局だが、詳細は毎晩放映中の「デイリー・ダイジェスト」でどうぞというスタンスだ。
 
 驚きだったのは、日刊紙(1月13日朝刊)だ。ブリスベンの『クーリエ・メール』紙、シドニーの『デイリー・テレグラフ』紙は、まったく12日の試合に触れていないのだ。おそらく締め切りに間に合わなかったのだろうが、それにしても寂しいかぎりだ。
 
 開催国オーストラリアのメディアは、日本を最大のライバルと認めつつも、他国のグループリーグの試合はニュースバリューがないとの現実的な判断を下している。自国の代表チームですら他のスポーツに押されがちなのだから、日本代表への関心は推して知るべきだ。
 
文:植松久隆(フリーライター)