43分、香川が得たPKを冷静に沈め、チーム3点目を挙げた本田。最低限の結果は残したと言える。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 パレスチナ戦後の本田圭佑は、予想外に多弁だった。
 
 その数時間前、母校の星稜高校が高校選手権で初優勝を飾ったことが、上機嫌にさせていた部分は間違いなくあった。ただ、この試合でのパフォーマンスだけを見れば、正直本調子からは程遠く、決して満足のいく出来ではなかった。
 
 そういう試合では、これまではあまり口を開くことはなく、ワールドカップ後、以前よりも少し自然体で取材陣に話す機会が多くなったとはいえ、この日に関しては口が重たいのでは、と思いながらミックスゾーンに向かったが、その予想をいい意味で裏切ってくれた。
 
 試合は遠藤保仁の先制ミドルを皮切りに、日本が順調に加点していき、終わってみれば4-0の大勝。本田自身も43分にPKを冷静に沈め、最低限の結果は残した。
 
「(PKの得点は)大きいですね。どういった形であれ、得点は自分に自信を与えてくれる」
 
 ブラジル・ワールドカップで味わった屈辱を経て、本田がまた新たな“自己改革”を実行していることは知られているだろう。これまでのMF然としたプレースタイルから、よりゴールを意識したスタイルへ――。所属するACミランでも、日本代表でも右ウイングを任され、前で勝負する意識を前面に出してプレーしている。
 
 そうした変化を考慮したうえでこの試合を見てみても、本田のプレーにはキレがなかった。PKでの得点は、ゴールを最優先する今の彼にとっては大きいだろうが、細部を見ていくと、ミランでのプレーよりも鈍重さが目立った。
 
 前を向いた状態では、それなりの勢いと迫力を持って相手ゴールに向かっていったが、彼の武器であるフィジカルコンタクトに関しては不満が残る。DFに身体を寄せられた状態でボールを受けると、身体の軸がブレて、次のプレーにスムーズに移行できなかった。試合を通して単純なパスミスを何度か犯し、本田のボールロストからパレスチナが前に出て行く場面があった。遠藤や香川真司、乾貴士などとは対照的に、本田は明らかにリズムに乗れていなかった。
 本田が流れのなかで最もゴールに迫ったのは、開始直後だった。左サイドの長友佑都からのクロスを、ゴール前の岡崎慎司が頭でそらす。ファーサイドに流れたボールに飛び込んだのが本田だった。しかし、判定はオフサイドで、シュートも外れた。それ以降、決定的なチャンスはなかった。
 
「ああいうシーンをどれだけ作るかが、今の自分の調子を表わすバロメーター。それがまだ少ないなとは感じている」
 
 そんな本田に、直接聞いてみた。正直、今日のプレーは本調子からはかけ離れているのか、と。すると本田は、『分かってる、分かってる』と心の中でつぶやくかのように、うっすらと笑みを浮かべた。
 
「いや、(自分の調子は)全然でしょ。そのとおりだと思います。コンディションのところですかね。でも、まだ上がっていくなとは思います。これからどんどん、ね」
 
 ダメな自分を認めて受け入れ、それでもなお、自信を見せる。肩に力の入っていないその風情は、ワールドカップ後の本田が見せてきた姿そのものでもあった。
 
 ふと、浮かんだ言葉があった。昨年11月、ミラノの空港で話した際に、本田の口から出てきたセリフだ。
 
「自分は今、“一発”を決められる選手になろうとしている。これまでも、自分は決めるべきところで決めるタイプではあったと思う。でも、ワールドカップのギリシャ戦で、あれだけ攻め込みながら、自分を含めて誰も試合を決められる選手がいなかった。サッカーの勝負を分けるのは、結局はここぞの場面で最後の一発を決められるかどうかだから」