相手のキーマンの突破を阻むなど要所を押さえて勝利に貢献。ピッチ外でもリーダーシップを発揮している長谷部は連覇への鍵を握る存在だ。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 パレスチナ戦の日本は、前半から少なからずミスがあった。大会初戦という独特の緊張感があったせいか、最終ラインでも右SBの酒井高、さらにCBの森重が危険な位置でパスを何本かインターセプトされた。
 
 それでも最終的に何事もなく無失点で乗り切れたのは、パレスチナのプレーが全体的に雑だったのと、アンカー・長谷部の気の利いた振る舞いがあったからだ。
 
「このポジションにはまず守備が求められる」と役割を理解したうえで、パレスチナ戦では「少しの接触でも笛を吹いていた」レフェリーの癖を頭に叩き込みながらプレーした。
 
「自分もミスはあったけど」と謙遜していたが、前半に二度ほど相手のキーマンである7番・アルファワグラの突破を正当なディフェンスで阻止したのは、陰のファインプレーだった。あそこで止めきれず、仮にゴールを奪われていたら、試合展開はガラリと変わっていただろう。
 
「自分は陰の存在でいい」──。そんなニュアンスの言葉を今回の代表合宿で聞いた。パレスチナ戦の長谷部は決して目立たなかったが、要所では重要な働きをしていた。まさに陰の存在としてコツコツと仕事をする彼の姿を目の当たりにし、改めて、4-3-3システムでディフェンスの鍵を握るのはアンカーだと認識させられた。
 
 ディフェンディングチャンピオンの日本にとって、アジアカップでなにより怖いのは相手のカウンターだ。不用意な失点を食らわないようにするためには、中盤の深い位置で第一の防波堤となるべきアンカーの任務は重要になる。
 
 味方のSBが攻め上がる局面ではCBふたりの間に入って3バックの形で逆襲に備えつつ、組み立てにも絡んでいたキャプテンの長谷部は、なによりユーティリティ性を重視するアギーレ監督にとって、もはや不可欠な存在になりつつある。
 
 陰ながら影響力は絶大──。試合前日の会見で外国人記者からアギーレ監督の八百長疑惑について訊かれても、毅然とした態度で「チームに影響がないと断言できます。今は選手、監督、コーチ、すべての人たちが同じ方向に向かってまとまっているので、なんの問題もありません」と言い切って、雑音を振り払った。
 
 自ら選手を集めて決起集会を主催するなど、ピッチ外でもコツコツと重要な仕事をこなす長谷部の献身は、アジアカップ連覇に向けて大きな鍵になる。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)