【福田正博フォーメーション進化論】

 いよいよアジアカップが1月9日(金)からオーストラリアで開幕。日本代表は1月12日にパレスチナ、1月16日にイラク、1月20日にヨルダンとグループリーグを戦い、グループ2位以内になれば決勝トーナメントに進むことになる。今回、連覇を目指す日本代表について、福田正博氏がカギとなるポイントを語った。

 2014年のW杯ブラジル大会では不本意な戦いに終わった日本代表にとって、このアジアカップが持つ意味は大きい。昨年までの悪い流れを断ち切り、いい方向へと変えるためには優勝がノルマであり、アジアの中で日本代表の強さをあらためて証明する必要がある。

 アジアカップは以前まではW杯イヤーの2年後に開催されていたので、新たな代表監督を招聘してもチームを作る時間は十分にあった。しかし、2007年からW杯の翌年開催となり、監督にとっては準備する時間が限られている。

 アギーレ監督は昨年9月に就任してから限られた準備期間で、親善試合にさまざまな選手をテストしたが、最終的にアジアカップの代表メンバーは、昨年のW杯ブラジル大会メンバーを中心に選んだ。これに関して、「時間が逆戻りした」「世代交代が遅れる」など、批判的な声もある。

 だが、私はアジアカップで優勝するために現時点のベストメンバーを選んだという印象を受けている。これまで多くの時間を共有しているブラジルW杯出場組の選手を軸にしながら、Jリーグや海外リーグで好調を維持している選手を招集したことで、バランスがいいメンバー構成になっている。

 また、アギーレ体制に移行後、一度も代表に招集されていなかった清武(弘嗣・ニュルンベルク)や、若手の昌子(源・鹿島)が選ばれたのは、アギーレ監督に「リーグ戦での活躍」という明確な代表選考基準があるからだろう。このため、今回の日本代表には、Jリーグのベストイレブンになった選手たちが顔を揃えた。彼らをどう起用し、どういった戦術やフォーメーションで戦うのか興味深い。

●ポイント1:ベンチも含めた総力戦で勝つ!

 アジアカップで優勝するためには、アギーレ監督が初めて体験する「アジアでの戦い」を克服できるかにかかっている。アジア勢との試合では、日本代表がボールを支配して相手を一方的に押し込む時間が長くなる。アギーレ監督が標榜するショートカウンターが威力は発揮するような試合展開はなかなかないだろう。相手が守りを固めて、ゴール前に時間とスペースがないなかで、日本代表がどうやってゴールをこじ開けるのか。慌てず、焦らず、いろいろな揺さぶりをかけながら得点を奪ってもらいたい。

 ゴールを奪うためのバリエーションという点では、前線のメンバーに問題はない。豊田(陽平・サガン鳥栖)、乾(貴士・フランクフルト)、小林(悠・川崎F)、武藤(嘉紀・FC東京)と、高さ、技術、ドリブル、スピードと、異なる特長を持つ選手を揃えている。個人的には永井(謙佑・名古屋)を選んでもよかったと思うが、相手を押し込む時間が長くなるとスペースがなくなり、永井のスピードを生かせないと判断したのかもしれない。

 4年前の前回大会、オーストラリアとの決勝戦では、途中出場の李(忠成)が決勝ゴールを決めたように、アジアカップは先発11人だけでは勝負は決まらない。総力戦になるため、試合途中で投入される選手には、攻撃にアクセントをつけてゴールを奪う役割を担ってもらいたい。そこがひとつのポイントになるだろう。

 1月31日の決勝戦まで6試合、すべてに勝利してタイトルを勝ち取るには、攻守両面でハードワークするのが大前提だ。そのうえで、ボールを持たない時間、つまり「オフ・ザ・ボールの動き」で何ができるかが重要になる。守備はもちろん、攻撃時もフリーランニングやパスをもらう前の動き出し、味方のためのスペース作りなど、さまざまな部分のクオリティーが求められる。

●ポイント2:形にこだわらず勝利を追求せよ

 グループリーグを勝ち上がった後はトーナメント戦。多少の運も関係してくるが、選手の力量やクオリティー、経験値やチーム状態を考えれば、日本代表が優勝する確率は7、8割あると私は見ている。決勝トーナメントには、順当ならば開催国のオーストラリア、ライバルの韓国、イラン、イラク、カタールなどが勝ち上がってくるだろう。

 そうしたライバル勢に勝つために、日本代表は"自分たちらしいサッカー"にこだわらず、まず結果を追い求めてもらいたい。これがもうひとつのポイントといえる。試合展開によっては、パワープレーだろうと、練習でやってないことだろうと、勝つためにやるべきことは、どんなことでもやってほしい。

 日本のサッカーファンやメディアは「システム論」や「ゴールの形」といったプロセスを重視する傾向にあるが、選手のポジショニングは試合の流れによって変わるものだし、セットプレーからの得点も流れからの得点も、ひとつのゴール。サッカーは相手がある勝負だからこそ、自分たちの形だけを追い求めるよりも、勝利という結果に向けて臨機応変に対応する柔軟さがより重要になる。

 その点、今回のメンバーはW杯ブラジル大会で敗北を経験している選手が多いため、結果を重視する方向に意識が向いているはずだし、アギーレ監督は現実主義者なので心配はしていない。相手を上回れる日本のストロングポイントがあれば、それが自分たちの目指す形でなくても、とことん結果にこだわって、勝ち上がってもらいたい。

 活動時間が限られている日本代表にとって、決勝戦まで勝ち残れば3週間という時間を共有できるのは貴重なことだ。だからこそ、1試合でも多く勝ち、チームが成長していくことに期待している。アジアカップを連覇し、2018年のW杯ロシア大会に向けて弾みとなる一歩を踏み出してもらいたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro