【作品紹介】
「スタンド・バイ・ユー〜家庭内再婚〜」
脚本 岡田惠和
演出 堤幸彦
出演 ミムラ 戸次重幸 真飛聖 モト冬樹 広岡由里子 馬場良馬 勝村政信
日比谷シアタークリエ 2015年1月12日〜27日

貸別荘にやってきた2組の夫婦。藤沢ハルカ(ミムラ)と榊誠治(勝村政信)が買い出しに出かけたところ、大雪で帰れなくなってしまう。仕方なくホテルに泊まったふたりは、次第に意気投合していく。その頃、貸別荘に残された榊愛子(真飛聖)と藤沢英明(戸次重幸)は、元恋人同士で、焼け木杭に火がついてしまい・・・。はたして2組のカップルはどうなる??

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【連続企画】岡田惠和×堤幸彦「スタンド・バイ・ユー〜家庭内再婚〜」とは何か?

2015年1月12日、いよいよ初日。
新春早々、幕を明ける「スタンド・バイ・ユー」は、「最後から二番目の恋」などで人気の脚本家・岡田惠和と「SPEC」「トリック」などで人気の演出家・堤幸彦の豪華な組み合わせの演劇。
「家庭内再婚」という結婚生活への新しい提言をする意欲作の全貌に、脚本の岡田惠和、出演者の戸次重幸へのインタビューで迫ってきたが、ついに、演出家・堤幸彦のインタビューとなった。
映像界では、様々な企みに満ちた作風で知られる堤は、この舞台にどんな仕掛けを用意しているのか?
後編は、堤は、映像作品でも多作にもかかわらず、なぜ、演劇にまで挑むのか、演劇の魅力について訊いてみた。
前編はこちら

──監督は、動きやギャグなどを、ご自身で細かくつけますよね。つかこうへいさんの口立てふうな。
堤 「テンペスト」の時、西岡徳馬さんに、似ていると言われましたけど、そんなの恐れ多いことです。僕が口立てしているのはギャグだけですから(笑)。
──監督の間合いを、正当に受け継いでいるのが、「トリック」の仲間由紀恵さんですね。
堤 そうですね。とくに「トリック」の山田奈緒子はそうですね。
──ここからは、監督の演劇暦を伺おうと思いますが、90年代、ピンクの電話さんなどがいた劇団フロントホックの座付き演出家をやっていますね。
堤 その前にミュージカルもやっています。シブガキ隊の「PSST PSST(プスプス)」(秋元康プロデュース/88年)という。この作品の出演者はすごいんですよ。まだ演劇界では無名だった秋山菜津子さんが、室井滋さんとダブルで出ていたのと、なんといっても蓮舫さんが出ていたんです(笑)。
──なんて豪華な面子なんでしょうか(笑)。
堤 ベンガルさんも出ていました。そういえば、あの舞台も、最初は王道のミュージカルだったはずなのに、だんだんだんだん小ネタに走ってしまったんですよね。
──その頃から小ネタ志向。
堤 その頃からです。それがほぼ演劇デビュー作ですね。
──芝居をやりたかったんですか?
堤 やりたいなんて思いはいまだにないです。やれないだろう、おれにはっていう気持ちなので。ある時期から自分の劇団を作って活動していったのは、映像は、編集でいかようにも観客を泣かせたり笑わせたりできるので、編集のできないものをやらないことには演出家と名乗るには足りないのではないかって気持ちからでした。やってみたら、非常に自分の中で面白くて、映像の仕事とバランスがとれると思って、ずっと続けているわけです。
──監督の演劇体験を教えてください。
堤 80年代中盤、西武劇場で「ショーガール」を見て、東京ってええなあ!と思い、今の自分は物理的にも精神的にも貧乏だけど、いつかこういう舞台とめぐりあいたいなと願いました。この間、三谷幸喜さんが演出していらして、それもとても面白かったです。「スタンド・バイ・ユー」は、私的な「ショーガール」に対する御礼としてお送りしたいと思っています。
──いつか、キラキラした演劇をやってみたいと思っていたことがようやく実現したわけですね。監督は、00年初期の頃、年末年始に演劇をやっていましたよね。
堤 大晦日に、キャストとお客さんと一緒に初詣に行ったりしましたね。
──餃子食べたりしていましたよね。
堤 そうそう(笑)。
──観客とのほのぼのしたふれ合いを求めている?
堤 全部で9万人動員の「真田十勇士」であろうが、1回の公演で100人しか入らない中目黒ウッディシアターでの公演であろうが、お客さんとは共犯関係ですからね。そこに行くと、自分の好きな俳優さんの、映像の世界では見ることのできない顔を見ることができるところに、面白みと勝ち目があるわけです。「スタンド・バイ・ユー」も岡田さんの上質な脚本をベースにしながら、その日来たお客さんにしか味わえない共犯関係みたいなものは作っていきたいと思うんですよ。
──それが小ネタだったりするわけですね。
堤 キバコの会は、その最たるものなんですよ。
──この間のキバコ公演では、出演者ではない人が突然飛び入り参加されたこともあったとか。
堤 千秋楽に、違う劇団の俳優が舞台に現れ、いきなり演劇をはじめるという、わたくしの暴走史上最高峰のことができました。一度やりたかったんですよ。僕としてはほんとに面白かったけれど、出演者たちは何もできなくてただ呆然と彼らの芝居を見るしかなく、気の毒だったという(笑)。
──それは事前にリハーサルをするんですか?
堤 したら、俳優にバレちゃうじゃない(笑)。彼らのための楽屋がないから、近くの公園か何かで準備してきてもらいました。
──秘密裏だったと。
堤 ある場面で、突然、予想外の何かが出てくる仕掛けは、初日からやり続けて出演者を慣らしておいて、千秋楽で、とんでもないものが出て来たという。そういうのが好きなんですよ。「スタンド・バイ・ユー」も千秋楽スペシャルを何か考えようかな。やっぱり俳優が芝居に慣れて来ちゃうと面白くなくて、つい、俳優の困った顔が見たくなりますからね(笑)。
──緊張感の持続ってことですよね。
堤 というか、お客さんが、あれ、これ、なんかいつもと違うよね? 俳優が、ちょっと困ってるよね? と思うような場面があると、舞台に入り込めるんです。
──ああ、そういう局面、ありますね。
堤 全体が完成した上でのことですが、そのどこかに違和感みたいなものを作っておきたいんです。もちろん、すべての作品がそうではなく、最後まで異物を入れずに作らないといけないものもありますが、慣れてしまうと困る舞台ってあるんですよね。だから俳優が慣れてしまう前に新しいエッセンスを盛り込むことで小さな緊張を保ち続け、初日の感覚を維持していってほしいと思ってやっています。
──それも、先ほど話に出た、つかさんのようですね。つかさんは、袖から舞台に出て行く直前に、台詞を変えたりつけ加えたりしていたそうです。
堤 そうなんですか。
──キバコの会では、監督ご自身も出ていましたね。
堤 客席の後方の調整室で、お面をかぶって踊っていました。それが舞台の人にしか見えないっていうのがやってみたかったんです。
──舞台上の俳優さんの視線から、後ろで何かやっているようだと思いながらも、観客は全貌がわからないという(笑)。
堤 一回性というか、演劇が、その日その時に見て良かったなというものであってほしいんです。毎日違えば、何日かしたら、もう一回みたいなって思っていただけるかもしれないですし。
──今回の、出ていない俳優が舞台の端に待機するブレヒト的な演出の意図を教えてください。
堤 ふたりしか出てない時間が多いので、もったいないなと。せっかく、すばらしい俳優さんたちなのだから、ずっと脇に控えていていただいて。何もしないで漫然と舞台を見ているようで、それも演技であるという面白さをお客さんに楽しんでほしいですね。また、途中、回想シーンでは、何度か台詞を言うところもありますし、装置のチェンジを手伝うこともあります。野外のロックコンサートで、ローディーやPAなども見えちゃっているイメージです。
──監督は笑いというベースのほかに、音楽のベースもありますものね。ライブやミュージックビデオの撮影もやっていらっしゃる。
堤 そうですね、好きですね。特に今回生演奏が楽しみです。荻野さんが、俳優の芝居に合わせて曲を作ってくれて、毎公演、芝居に合わせて微調整しながら演奏してくれる、フリージャズのセッションみたいなものになりそうです。
──そういうことははじめてですか?
堤 キバコの会では、武内享さんがギター1本では演奏してくれていますが、今回のような正式なセッションははじめてです。本来、地声でできる芝居にもかかわらず、俳優がマイクをつけているのは、音楽家が、台詞の間合いをちゃんとモニターリングするためなんです。
──踊りもあるそうで。
堤 歌って踊ります。岡田さんの作詞した歌は、すべてを総括するようなすばらしく面白い歌詞になっています。
──最後に、これからも演劇を続けていきますか?
堤 いえ、全然(笑)。
──え。
堤 だいたい、映像すら、今年還暦になるにもかかわらず、本業感になるべく頑張っているところなんで(笑)、演劇に至っては、ようやく入り口まで来たくらいなんです。映像にしても演劇にしても、1作1作、全力でやって、説得力ある作品を作りたいですね。
(木俣冬)

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堤幸彦監督「スタンド・バイ・ユー」を語る
※監督の自撮り動画です。

【プロフィール】
つつみ・ゆきひこ 1955年11月3日愛知県出身。映画監督。演出家。「トリック」シリーズ、「SPEC」シリーズなどのヒット作を手がける一方、舞台演出も行っている。主な舞台演出作品に、「琉球ロマネスク テンペスト」「悼む人」「真田十勇士」「KAKOCHIーYA」など。2015年は、映画「悼む人」(東映/2月14日公開)「イニシエーション・ラブ」(東宝/5月23日公開)「天空の蜂」(松竹/秋公開予定)と多くの映像作品の発表が控えている。