明日12日、いよいよパレスチナとの初戦を迎える日本代表。過去6大会で4度優勝のアジアカップ「不敗神話」が、アギーレジャパンを力強く後押しする? 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 1986年メキシコ・ワールドカップの得点王で、キャリアの晩年、名古屋でプレーした元イングランド代表のガリー・リネカーはかつて、サッカーを次のように規定した。
「22人がボールを奪い合い、最後にドイツが勝つスポーツ」
 
 無理もない。対戦成績はほぼ互角だが、ワールドカップ本大会では4勝1分け2敗とドイツがリード。さらに過去20回の本大会でイングランドがドイツを上回ったのはわずか一度、それも決勝で西ドイツを「疑惑のゴール」で下した1966年の自国開催しかないのだから。
 
 このリネカーの言葉をアジアカップに置き換えると、こうなる。
「22人がボールを奪い合い、最後に日本が勝つ大会」
 
 7大会連続で本大会に出ている日本は、92年広島大会以降の6大会で4度も優勝している。
 6大会で4度というのは、ほとんどいつも優勝しているようなもの。ヨーロッパ選手権のドイツやスペインも、南米選手権のブラジルも、これほど勝ち続けてはいない。
 
 この6大会の日本の成績は21勝10分け2敗。2敗は96年UAE大会の準々決勝・クウェート戦と、07年東南4か国アジア共催での準決勝・サウジアラビア戦だ。10分けにはPK勝ちが3試合、PK負けが1試合含まれている。
 
 ちなみにライバル国の6大会の成績は――。
 
韓国:10勝9分け(2PK勝ち、2PK負け)6敗
イラン:14勝9分け(1PK勝ち、3PK負け)4敗
サウジアラビア:12勝7分け(2PK勝ち)9敗
 
 こう見ると21勝10分け2敗の凄さが浮かび上がる。
 
 アジアカップでは、オーストラリア、韓国に加えて、中東勢が「打倒日本」に執念を燃やす。
 
 前回カタール大会でも、日本は中東勢に苦しめられた。
 ヨルダン戦はロスタイムのゴールで辛くも1-1に持ち込み、シリア戦は終盤のPKで勝ち越し、さらにカタール戦では1-2から終盤に逆転した。崖っぷちに追いつめられても、日本は負けない。最後に勝つのは、いつも日本なのだ。
 
 このときの地元カタールの記者の言葉が、印象に残っている。
「残念だけど、日本をこんなに苦しめたんだから十分だよ」
 
 対戦相手にとって日本は心底勝ちたいチーム、だが負けても善戦すれば国民は納得してくれる。一方の日本は選手も国民も、最後まで負けるはずがないと思い込んでいる。数々の逆転劇は、戦術や技術よりも、思い込みの差から生まれてきたといってもいい。
 
 前回大会の優勝直後、本田圭佑は「また新たに優勝経験を持つ選手が増えたのは、大きな意味があると思う」と話していた。勝ち続けることで、日本には「優勝することが当然」と考える高い意識が根付いているのだ。
 
 英国の老舗ブックメーカー「ウィリアム・ヒル」は、今大会の優勝オッズを次のように設定した。
 
日本:3.25倍
オーストラリア:4.00倍
韓国:6.50倍
イラン:8.00倍
ウズベキスタン:15.00倍
 
 日本は本命。だが、いつも勝つとは限らない。開催国オーストラリアに勝つのは至難の業だろう。
 
 一筋縄ではいかないアジアカップは、ハビエル・アギーレ監督の手腕が試される格好の舞台。2連覇を達成するには、いまの選手層では物足りない。発展途上の4-3-3の精度を高めるとともに、使える選手を増やしながら勝つという難しい作業が求められる。
 
 山あり谷ありダートありと、悪路が続くアジアカップ。だが、この20余年で培われた「不敗神話」は、不安の残るアギーレ号を力強く後押しするかもしれない。
 
文:熊崎敬