本誌はアベノミクスの効果を調べるため、「東京商工リサーチ」の全面協力で2013年度の全上場企業(3502社)の平均年収データを入手し、企業ごとに社員の平均年収が2012年度からどのくらい増減したかを比較した。

 安倍晋三首相の唱える賃上げ論は、アベノミクスによる円安で輸出大企業を儲けさせ、それを社員の給料アップや下請け企業への仕事の発注増という形で還元していく。これは「トリクルダウン効果」といわれるが、実際にはその効果がないことが年収ランキングの分析で裏付けられた。

 ランキングの下位に象徴的な企業がある。全上場企業3502社のうち3492位のアウトソーシングだ。社員約5900人で自動車業界を中心に製造部門の一括請負や開発部門などへの人材派遣を行なっている東証一部上場企業だが、派遣先の大手自動車メーカーの正社員の平均年収が43万〜67万円上昇しているのに対し、同社の平均年収は289万円、前年比で5万円しか上がっていない。派遣先の10分の1だ。

 政策的な円安で巨額の利益をあげている自動車業界がしっかり蛇口を閉めて下請けや取引先を潤そうとはしない。同社総務課の担当者にぶつけた。

「弊社は派遣社員を各企業様に出す業態で、いただくお金が従業員の給料になります。賃金は交渉で決まるので、景況感が即、反映されるというわけではない。それでも少しの幅でも必ず賃上げをしようという方針でやっているので、長い目で見ていただきたい」

※週刊ポスト2015年1月16・23日号