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フィギュアの企画・制作・製造・販売を中心に、アニメやゲームの制作、さらにはモータースポーツをはじめとしたレーシング事業と多方面に事業を展開しているグッドスマイルカンパニー。同社を代表するフィギュア「ねんどろいど」シリーズは、アニメやゲーム、実在の人物に至るまで、あらゆるキャラクターを2.5頭身にデフォルメした手のひらサイズのフィギュアとして、2006年の第一弾商品発売以来、高い人気を誇る。フィギュアを一部のオタクが愛でるものから、一般層も楽しめるコンテンツへと成長させ、例えばそれは昨年大ヒットした『アナと雪の女王』のエルサをデフォルメフィギュア化した『ねんどろいど エルサ』など、一昔前の業界ではありえなかったイノベーションが起こっている。

そんな「ねんどろいど」シリーズをはじめとするフィギュアの製造工場「楽月工場(通称:ラッキーファクトリー)」が昨年12月、同社としては初めて国内に新設されたことで大きな話題となった。これまでフィギュアの生産を中国で行ってきた同社が、なぜ今このタイミングで国内に工場を新設したのか。フィギュア以外の事業の展望も含め、グッドスマイルカンパニー代表取締役社長・安藝貴範氏に話を伺った。

○将来を見据え、鳥取県に工場を新設

現在、フィギュアを始めとするホビー商品の生産は、ほぼ100%海外で行われている。特に生産の大半を担っているのは中国だ。これはグッドスマイルカンパニーに限った話ではなく、ホビー業界全体に当てはまる話である。人件費などのコストが日本よりも安く、さらに長く続いていた円高も大きな理由の一つだった。しかし、今後を見据えた時「このまま中国で生産のすべてを続けていていいのかという思いがあった」と安藝社長は話す。

「中国には出稼ぎ文化があり、人材が流動的です。特に生産計画を立てられる中間管理職の確保は非常に難しくなっているのが現状。ベトナムやフィリピン、マレーシアなどに工場を新設してリスクを分散する考え方もありますが、最近ではフィギュアの工程が増えて高度化しており、他国に持って行っても効率が落ちる可能性があるのです」

また、既存の工程で効率化を突き詰めようとすると、生産技術に関する「イノベーションが起きづらい」という問題もあったという。こうした課題を解決すべく、安藝社長が選んだ次の一手が、国内工場の新設だったのだ。ではなぜ、鳥取県倉吉市だったのだろうか。

「色々な場所を検討したのですが、一番熱心に誘致してくれたのが鳥取県倉吉市だったのです。鳥取県はまんが王国を政策として打ち出していて、カルチャーに対して非常に骨太な対応をしてくれます。それと、倉吉市が工場地帯だったことも大きい。周辺の金型屋さんをはじめ材料の調達など、すでにインフラが整っていますし、もともと工場で働いていた方も多く、ポジティブに迎えていただけるのではないかと感じました」

すでに、同工場の第一弾商品となる『ねんどろいど 桜ミク Bloomed in Japan』、第二弾商品『figma 馬(茶)(白)』が発表となっている。ユニークなのは、製品をふるさと納税の対象としているところだろう。

「日本で生産するとコストがかかるので、いつも通りに売るのは非常に厳しい。そこで知ったのがふるさと納税制度。『桜ミク』はいわば鳥取産ですからね。これなら鳥取県は税収が増えるし、僕らとしては比較的高く県に買っていただけるし、お客さまは安くフィギュアを手に入れることができる。誰も損をせず、皆ハッピーになれると考えました」

メディアがこぞって取り上げるなど、センセーショナルなスタートを切った国内工場。しかし一方で工場規模は決して大きくはなく、まだまだ生産のほとんどを海外に頼っているのが現状だという。国内と海外、どちらか片方だけを重視するのではなく、手を取り合ってホビー業界を盛り上げていく。それが安藝社長の描くビジョンだ。

○「巻き込まれ型」だからこそ実現した、多様な事業展開

「ねんどろいど」のイメージが強いグッドスマイルカンパニーだが、グループ企業全体としてはフィギュア事業だけに留まらず、レーシングチーム運営やアニメ制作、さらにはカフェ運営やアパレルなど、多方面に事業を展開している。最近では、「レッドブル・エアレース」の日本初開催を同社が主催することも発表となった。こうした事業展開の背景にあるのが、安藝社長自身の個性である"巻き込まれ型"という性格だ。

「実は何かをやりたいというモチベーションを自分で持ってくるよりも、バックアップの方が性に合っているんです。その結果としていろいろなものに関わらせてもらえるようになってきました。例えば変形するヘッドホンを作ったのは、ロサンゼルスに持っているスタジオで、仲の良いミュージシャンのリンキン・パークと遊んでいたのがきっかけ。彼らがヘッドホンを作りたいと言い出して、じゃあその手伝いをするよ、と。アパレルで靴下を販売することにしたのも、レーシングのチームウェアを一緒にやっているテラソラルというブランドのメンバーと話しているとき、偶然出てきた話からなんです」

安藝社長は冗談めかした口調で「巻き込まれ型」と称しているが、もちろん、巻き込まれるのは同社が各パートナーから絶大な信頼を寄せられているからだろう。安藝社長が抱く、エンターテインメントをもっと盛り上げようという熱い思いが、アーティストやパートナー企業にしっかり伝わっているからに他ならない。

「グッドスマイルカンパニーは一言でいうと、主体性がない会社(笑)。外から見ると無邪気な感じが漂っているでしょう? でも、実はすごく真面目でストイックなんです。真面目すぎて、何かプロジェクトを任せると、それをちゃんとやろうとしすぎるところもある。だから、どんどん新しいテーマを渡して変化させていく必要があるんです」

真面目でストイックで、新しい変化にも柔軟に対応する。それこそが同社の最大の強みかもしれない。2016年に創業15周年を迎えるグッドスマイルカンパニー。記念すべき年に向けて、安藝社長は「そろそろ、グループ全社の力を集結させたプロジェクトをやってもいい時期かも」と意気込む。同社がこれからもエンターテインメントの中心であり続けることは間違いなさそうだ。

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(山田井ユウキ)