【ジャパン主将リーチ マイケル W杯イヤーインタビュー(後編)】

 躍進の日本代表を引っ張るのが、26歳のリーチ マイケル(※)である。
※リーチ マイケル 1988年生まれ。15歳のとき、留学生として来日し、札幌山の手高校に入学。卒業後は、東海大学に進学。2008年、日本代表として初キャップ。大学卒業後は、東芝ブレイブルーパスに所属。2011年開催のワールドカップの日本代表にも選出され、予選4試合すべてに先発出場した。ポジションはフランカー

 ラグビーでは、主将を船長(スキッパー)と形容する時がある。エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)の下、マイケルはジャパンをどこに連れて行こうとしているのか。

 勝負のW杯は、今年9月から10月、英国で行なわれる。新年の世界ランキング11位に位置する日本が1次リーグで対戦する相手は、南アフリカ(同2位)、スコットランド(同8位)、サモア(同10位)、米国(同16位)。どこも強敵ばかりである。

 目標を問えば、リーチの目に覇気が浮かんだ。「W杯で3勝して、準々決勝にいくことです」と言い切った。

「キャプテンになってから、ワールドカップの準備など、エディーと話しています。本当に勝ちたい。ベスト8に行きたい。だから、どの試合もベストメンバーを出してほしい。ジャパンは全部、勝ちにいく」

■W杯3勝する自信はあります!

―― エディーさんは記者会見で、W杯初戦の南アフリカ戦の先発メンバーは頭ではもう考えている、と言っていますが。

「僕の印象では、(次戦以降に温存することなく)ベストメンバーでいくと思います」

―― でも、すべてベストメンバーだと大変でしょう。特に初戦の南ア戦と第2戦のスコットランド戦までは中3日の強行日程です。

「大変です。でも、いける。そのためにハードな練習をやっているのです。試合が終わって、2日後にはもう1回、ハードな練習をしてきた。ジャパンの選手はみんな、タフです。自分にも相手にも負けない」

―― ハードな練習をして、どんなラグビーをしますか?

「まずスクラムは強くなっています。あと、当たり前ですが、相手の弱いところを攻める。プレッシャーに対応する。いま、だいぶ柔軟性が出てきている。クリエイティブに対応できる。同じ形で常に3つ、選択肢がある。ワイドに振るか、ショートにするか、キックを使うか。だから、相手によって、まったく違う攻め方ができる。最初の20分と後半の序盤20分を変えることもできる。ジャパンは、相手が読みにくいアタックをします」

―― その戦術を遂行するためにはフィジカルとフィットネス、そして頭も必要でしょう。

「そうです。(昨秋の)マオリ・オールブラックス戦もそうでした。頭をちょっとうまく使って、最初は40点差が、次に接戦になりました(※2)」
※2 昨年の対マオリ・オールブラックス 11月1日(神戸)21-60、11月8日(東京)18-20

―― ひとつ疑問です。南アにも勝ちにいくなら、目標を4勝としてもいいのでは?

「ははは。そりゃ、そうですが。最低の目標です。最低3勝という意味です」

―― マイケルは前回の2011年W杯にも出場しました。唯一、4試合すべてで先発フル出場でした。どんな大会でしたか。

「すごく悔しい大会です。練習して、頑張って、勝つ、勝つと言って、勝てなかった。すごく悔しいし、すごく恥ずかしいし......。(当時の)ヘッドコーチのJK(ジョン・カーワン)には申し訳ないと思っています」

―― マイケル選手はトンガ戦でトライしました。最後のカナダ戦の引き分けも惜しかったですね。

「負けみたいなものでした」

―― カナダ戦の夜、(試合会場の)ネイピアの酒場でジャパンのロック大野均選手と一緒になりました。彼は言っていた。W杯では4年間の努力のすべて、人としてのすべてが試される場だと。

「キンさん(大野選手)の言ったこと、よくわかります。だから4年間、生活のすべてを、勝つために捧げています」

―― 改めて、3勝する自信は?

「あります」

■スーパーリーグで、特にディフェンス力を磨きたい

―― ところで、マイケル選手は東芝のシーズンを終えた後、世界最高峰リーグ『スーパーラグビー』に挑戦します。ニュージーランド(NZ)のチーフス所属ですね。忙しいですね。

「ほんと、忙しい。レベルが高くて、毎週、試合があるので大変です。でもチャレンジです。今は個人が強くなるのが、一番必要です」

―― どこを強くしたいですか?

「すべて。体をでかくして、体力をアップさせて、いいメンタルもつくりたい」

―― マイケル選手は13年シーズンに期限付きでチーフスに移籍しましたけど、ケガでプレーできないまま帰国しましたよね。

「そうです。だから、またチャレンジです。特にディフェンスを強化したい。向こうで、タックルとブレイクダウンの質を上げたい。ボールキャリアーとしてはチーフスでも大丈夫だと思います。でもタックルはまだまだ」

―― 世界のトップ選手がたくさんいますよね。

「ワクワクするし、楽しみです。東芝で2つタイトルを獲って、その勢いでスーパーラグビーで頑張りたい。それでジャパン。休む暇がない。家族にサポートしてもらわないといけないし、体を強くしないといけません」

―― 2016年には日本がチームとしてスーパーラグビーに参戦します(※3)
※3スーパーラグビーは南アフリカ(SA)、ニュージーランド(NZ)、オーストラリア(AR)の3ヵ国のラグビー連合協会(SANZAR)によって運営される国際リーグ戦。2016年からチームが18に拡大されることになり、日本チームもそこに参戦することが決まった。日本代表クラスを集めた特別チームを編成して臨むと言われている。

「日本にとってはすごくいいことです。心配はありますが......。例えば、そのチームに所属した時、選手はどこに住むのかとか。家族はどうすればいいのかとか。どうなるのでしょう。もう少し、情報がほしい」


■ジャパンは山の6合目。38歳まで現役でいたい

―― マイケル選手は昨年、仁川アジア大会いセブンズ(7人制ラグビー)で日本代表としてプレーしました。決勝では豪快なトライもマークして、日本の3連覇に貢献しました。試合を楽しむことはできましたか?

「大変でした(笑)。ラグビーが違うし、スピードも違います。ちょうど(15人制の)日本代表の合宿が終わった後だったので、体がボロボロでした」

―― トライの時、"日本の宝だぞ、マイケル"と声がスタンドから飛んだ。聞こえましたか。

「本当ですか。聞こえなかった。シンビン(一時的な退場)ももらいましたけど。でも、(仁川には)行って、すごくよかったと思います」

―― 2016年リオデジャネイロ五輪からセブンズは正式競技となります。五輪は意識しますか?

「意識はします。でも、まずワールドカップです。その前に東芝です。スーパーラグビーもあります」

―― 11月には五輪予選がありそうです。もう体が2つぐらい、ほしいですね。

「2つ、3つほしいです(笑)」

―― リオデジャネイロ五輪には出場したいですか?

「スポーツの最高の舞台ですから。チャレンジしたい。でも、僕はセブンズの選手じゃない。セブンズのチームが一生懸命やってきて、最後に自分がポンとそこに入るのは......。僕のために誰かがオリンピックに行けなくなったら、その人に悪い気がする。やはりリオ五輪に出るなら、11月の五輪予選に出て、1年間、ずっとセブンズの活動をしなければいけない」

―― 2019年に日本でW杯、2020年には東京五輪です。

「すごくいい時に生まれたなって思う。すごく楽しみです。年齢も30歳、31歳で」

―― マイケル選手はまだ、発展途上の選手だと思います。理想のラグビー選手を山のてっぺんとしたら、今、どのあたりでしょうか。

「まだ4合目あたりでしょう」

―― では、今年のW杯のベスト8を山頂としたら、ジャパンはどのあたりにいるでしょう?

「う〜ん、6合目あたりかな。これからの登りが険しくなる。まず個人の力で8合目まで行って、あとはチームとして戦術を磨き、まとまりでトップに登ります」

―― 夢はありますか?

「将来、高校の監督になりたい。ずっと教師になりたかった。もし、できることなら(母校の)札幌山の手高校に戻って、ラグビー部を花園に連れていきたい」

―― モットーが『神に誓うな、己に誓え』。現役はいつまで続けますか。

「サンジュウハチかな。キンさん(36歳)やジョンさん(松田努=東芝フルバック、13年に42歳で引退)と同じくらいまではやりたい。キンさんには19年W杯にも出てほしい。僕と一緒に出たら、おもしろい」

―― マイケル選手は12年に日本人と結婚して、13年7月に帰化しました。日本人として日本を引っ張っています。ジャパンには海外出身選手も多いですね。

「それがジャパンのラグビー。外から見たら、たぶんわからないでしょうが、合宿でも試合でも同じ目標に向かって、同じことをしています。気持ちも一緒です。日本のために一生懸命にやっています。日本のラグビー文化はこれなんです」

―― 同感です。テストマッチのキックオフ前、何を考えていますか。

「いつも、日本に来てお世話になった人のことを考えています。高校、大学、社会人......。日本に恩返しがしたい。僕は日本のために勝ちたいのです」

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu