『やきとりと日本人 屋台から星付きまで (光文社新書)』土田 美登世 光文社

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「やきとり屋」といわれて、皆さんはどのような場所を想像するでしょうか。

 書籍『やきとりと日本人』の著者・土田美登世さんは、最近のやきとり屋について、「やきとり屋におけるワインの普及率はここ数年でかなりアップした。併せて間接照明率とBGMのジャズ率もアップした。スペースもゆったりしているし、いつの間にか、おしゃれなやきとり屋が増えていた」といいます。

 煙がモクモクと立ち込める狭い店内で、サラリーマンたちがビールジョッキ片手にこんがり焼けた串刺しの鳥を貪る......といったステレオタイプなやきとり屋だけでなく、提供する料理からインテリアまで、様々な工夫が施されている店が増えているというのです。

 そもそも、やきとりはいつ頃から食べられるようになったものなのでしょうか。同書はやきとりの歴史を、古く『古事記』や『日本書紀』等の文献に鶏が登場するところにまで遡ることからはじまります。

 そして肉食禁止令などを経て、現在の形に近いやきとりが登場したのは、江戸時代中期なのだと土田さんは分析します。1689年刊行の『合類日用料理抄』には、次のような描写が。

「鳥を串にさし 薄霜ほどに塩をふりかけ焼き申し候 よく焼き申し時分 醤油の中へ酒を少加え 右の焼鳥をつけ 又一変付けて其の醤油の乾かぬ内に 座敷へ出し申し候」

 その後、戦後のヤミ市でのやきとり屋の隆盛、ブロイラーの普及した1960年前後から1970年までの第一次やきとりブーム、地鶏の登場と共に訪れた1980年代の第二次やきとりブームを経て、2010年には、ついにやきとり屋はミシュランガイドで一つ星を獲得するまでになりました。そして2010年頃からのバルのブームに伴い、冒頭で述べたワインを提供するようなバル風のやきとり屋が登場してきたのだそうです。

「赤ちょうちんの居酒屋風から老舗、そしてカフェ風、ビストロ風など、やきとり屋はどんどん多様化してきて、客たちも自分たちが求めるシチュエーションによってやきとり屋をアテンドする時代となった。もちろんそのベースとなるのは、いつの時代『うまいやきとりを焼くこと』であることに違いはない」(同書より)

 遥か昔から日本人に親しまれてきた、やきとり。同書でやきとりと日本人との関係の奥深さを学んでから、実際の様々なやきとり屋に足を運んでみてはいかがでしょうか。