【ジャパン主将リーチ マイケル W杯イヤーインタビュー(前編)】

 勝負の年が明けた。

 リーチ マイケル(※)。躍進する日本ラグビーの「宝」にして、日本代表をリードするキャプテンである。ポジションがフランカー。無精ひげが覆う「優しい鬼」のような風貌と、ほれぼれする身体能力を生かし、チームの突破役を担う。
※リーチ マイケル 1988年生まれ。15歳のとき、留学生として来日し、札幌山の手高校に入学。卒業後は、東海大学に進学。2008年、日本代表として初キャップ。大学卒業後は、東芝ブレイブルーパスに所属。2011年開催のワールドカップの日本代表にも選出され、予選4試合すべてに先発出場した。ポジションはフランカー

 ニュージーランドで生まれ、2年前、帰化した。日本人の妻との間に1女。性格は誠実、朴訥(ぼくとつ)、実直......。言葉には魂が宿る。

 今年1年を漢字一文字で表すとすればと問えば、リーチは思案した後、こうボソッと漏らした。

「タタカウ」。戦争の「戦う」ではなく、闘志の「闘う」である。『闘』。なぜ?

「今年は忙しい。(トップリーグの)東芝で2つのタイトルをとって、スーパーラグビーにチャレンジして、ワールドカップに臨みます。僕は必死に闘う。外からも、ファイトしている姿を見てほしい。ファイトする姿を見せたら、結果は100%付いてくる。ファイトしないと、僕は恥ずかしい」

■まず東芝で2つ、タイトルを獲る!

―― 2014年の終盤は左肩をケガしていました。トップリーグの東芝の試合には復帰。体は大丈夫ですか。

「肩はまだ100%じゃない。でも試合ができる状態になってきました。活躍はしていないけど......。(トップリーグの)試合にずっと出られなくて、チームはサントリーに負けて。くやしかった」

―― 東芝の目標は?

「2つ(トップリーグと日本選手権)のタイトル。断トツで強いチームはないので、しっかり準備すれば、タイトル2つ、獲れると思います。ポイントは、自信を持って試合に臨むことかな。スキルとかいろいろありますが、チームのスイッチが入っているか、入ってないかです。スイッチが入った試合をすれば、大丈夫だと思います」

―― どうすればスイッチが入るのですか。

「みんな勝ちたい。相手も勝ちたいでしょうから、それを上回るぐらい、集中力を持っていく。東芝が好きだし、東芝は最近、優勝していないから、とても勝ちたいんです。僕自身は(学生時代を含めて)優勝したことがない。決勝までいって、負けています」

―― チームスローガンは『for you』。誰のために?

「一番はチームのために。そのほかはファンとか、ファミリーとか、です」


■ジャパンでのオフは長くて、半日

―― さて、ジャパンの話を。日本代表は2014年、テストマッチで9勝1敗の好成績を残すなどして世界ランキングを一時9位まで上げました。どんな1年でしたか。

「大変だった(笑)。大変な1年でした」

―― どうしてですか?

「4月にキャプテンになって。最初の頃、すごく大変で、あとから少しラクになって、そのあと、また大変になって、少しラクになって、またまた大変になって(笑)。その繰り返しでした」

―― キャプテンは大事ですから。エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)に、いつ言われたのですか。

「昨年の2月ぐらいです。日本協会のクラブハウスでコーヒーを飲みながら。最初、僕は他にもっといい人、いるんじゃないですか、と言ったんです。ハタケさん(畠山健介=サントリー/プロップ)や堀江さん(翔太=パナソニック/フッカー)もいる。キンさん(大野均=東芝/ロック)もいる。フミさん(田中史朗=パナソニック/スクラムハーフ)、ゴロウさん(五郎丸歩=ヤマハ/フルバック)もって。でも、最後に『できれば、キャプテンはフォワードがいい』と言われて。『自分のプレーにだけ集中すればいいからって』って、その時は」

―― その後はエディーさんの注文も変わったのでしょうか。

「少し(笑)。4月か5月の合宿から、プレーだけじゃなく、ほかにも集中しないといけない、と言われたのです」

―― チームをまとめろと。

「そうです。全員がジャパンのラグビーを理解するようにしてくれと。サインプレーはこうだとか、チームのスタンダードを落とさないようにと」

―― ジャパンのラグビーとは?

「エディーさんは、細かいこと、みんなに理解してほしいから、なんでこうやるのかを伝えます。ジャパンのラグビーは時計みたいです。ひとつの部品が壊れたら、すべてが崩れてしまうのです。1つ1つ、ちゃんとやらないと、うまくいかない。ここができないと、あっちもできなくなります」

―― なるほど時計と一緒ですね。精密機械は日本のウリでもあります。

「こまかいところ、パーツがすごく大事なんです。自分のポジションの仕事を100%、理解しないといけない。それが一番大事です。そうしたら、いろんな情報がきたとき、自分にとって大事なものを選べる。自分の役割を全うできるのです」

―― マイケル選手の役割は?

「ボールを前に持っていくこと」

―― 最近、ゲインラインを突き破っていく突破力がアップしましたよね。

「少しは(笑)」

―― なぜですか?

「ハードなトレーニングをやってきたから。ジャパンでは、朝5時から練習するときもあります。4時に起きて、4時半スタートもある。スクラム、ラインアウトやって、チーム練習やって、ウエイトやって、スキルもやって...。1日、3回も4回も、セッション(練習)をやってきました。僕は絶対、グラウンドに立たないといけない。ケガをする暇もない」 

―― 嫌になるときはありませんか。

「ないです。強くなりたい。嫌な練習も、嫌とは言わない。みんな、そうです。やらないといけないとわかっている。最初の頃は、文句ばっかりだった。オフが少ないという声があった。でも、最近は文句もあまり聞こえてきません。やらないといけないことがいっぱいあるから。(ジョーンズHCと)オフのネゴシエーション(交渉)はできない」

―― もっと休みたいでしょう?

「パターンがあるから、"サキヲヨンデ"休む」

―― 酒を飲んで?

「ははは。ちがう、ちがう。先を読んで休むのです。でも2、3時間のオフを見つけて、ゆっくり過ごします。1日の完全オフはないです。あっても、半日がやっとです」

―― ハードなトレーニングを実践していく原動力はなんでしょうか。

「やっぱり、勝ちたいから。ワールドカップで勝ちたい。これくらいの練習やらないと、ジャパンは勝てない。それはわかっている。ヨーロッパ遠征でもグルジアに負けた。まだまだ力が足りない」


■ジャパンはスキルもフィジカルもフィットネスもアップした!

―― グルジア戦、マイケルはけがで欠場しました。スタンドから見ていて、どうでした?

「スクラムはやられたけど、以前ほどではなかった。スクラムは成長している。グルジア戦はこまかいミスばかりだった。ゲインはできても、最後の最後にノックオン。最後に滑ってターンオーバー。勉強になりました」

―― 外からジャパンの試合を見る気分は?

「初めて、外から見ました。みんな一生懸命やっていた。だれも弱気なプレーをしていない。すごくうれしかった。そういう姿を見て、負けて悔しいけど、学ぶことが多かった。ずっと勝ち続けていたら、あんまりいい方向には......。ジャパンは反省をして、もっと強くなります」

―― ジャパンが成長した部分と課題は?

「成長した部分は、スキルもフィジカルもフィットネスも、です。理解力もアップした。全体的なスタンダードも上がった。足りないのは、まだ本当にしんどい時にミスをする。もう少し時間がかかる。一番きつい時に頑張れるかどうか。そのためには練習しかない。いま、ジャパン、いい練習しているから、大分よくなってきた。メンタルの部分も、前に比べたらよくなって、自信がついてきました」

―― ジャパンは結束が固いですよね。トップリーグの試合でジャパンのメンバーと対戦する時はどんな気分なのですか。

「オモシロイ。ジャパンの一番のオモシロさは、いろんなカラーのチームの選手がひとつになること。(トップリーグで)ジャパンのメンバーと戦うのも楽しい。たまに殴り合ったりもしますよ(笑)」

(つづく)

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu