日本男子プロテニス選手が、4大メジャー大会で初優勝する可能性を検証することは、つい数年前まで考えられなかったことだった。だが今や、ATPランキング5位の錦織圭は、グランドスラム(以下GS)で優勝候補のひとりに挙がる存在にまで成長してきた。

「一番変わったのは、自分の攻撃的なテニス。自信はついてきていますね。自分のテニスに、強さをより身に付けている」

 こう語る錦織は、2014年12月29日に25歳の誕生日を迎えたばかり。体力的なピークをむかえる年齢で、2015年シーズンに臨むことになる(シーズン中に錦織は25歳でプレーするが、12月生まれなので厳密に言えば2015年は26歳のシーズン)。

 ここで、25歳時の"ビッグ4"の成績を振り返り、錦織活躍予想の参考にしたい。

 まず、ロジャー・フェデラー(現在ATPランキング2位、以下同)は、2006年シーズンに、オーストラリアンオープン(全豪)、ウインブルドン(全英)、USオープン(全米)でGS3冠、ローランギャロス(全仏)準優勝、マッチ92勝5敗(勝率で歴代2位)で、文句なしの年間1位で絶頂期だった。

 ラファエル・ナダル(3位)は、11年シーズンに全仏優勝、全英と全米で準優勝、全豪でベスト8、年間2位。

 ノバク・ジョコビッチ(1位)は、12年シーズンに、全豪優勝、全仏と全米で準優勝、全英ベスト4、年間1位。

 アンディ・マリー(6位)は、12年シーズンに、全米優勝、全英準優勝、全豪ベスト4、全仏ベスト8、年間3位。

 25歳当時の"ビッグ4"は、全員GSで優勝しており、充実したシーズンを送った。ちなみに、マリーは、12年の全米がGS初制覇だった。

「15年は、高い目標を持ってやることになる。GSでベスト4以上に入るのが目標になります」と意気込む錦織が、大きなケガをすることなく、自身のテニスを進化させることができるのなら、必ずGSの優勝戦線に絡んでくるだろう。

 1973年から始まった現行の世界ランキングで、世界1位になった選手はわずか25人。現在5位の錦織が1位になる可能性を話題にするのは時期尚早ではある。まずは、GSタイトルを取れるかどうかを見るべきであり、さらに言えば年間9大会あるマスターズ1000大会(GSに次ぐグレードの大会、以下MS大会)で優勝を狙うのが現実的だ。MS大会で初優勝できれば、GSの初制覇が近づく傾向にある。それは"ビッグ4"でも見られた。

 フェデラーは、02年MS・ハンブルク大会で初優勝した翌年に全英でGS初制覇。ジョコビッチは、07年MS・マイアミ大会で初優勝した翌年に全豪で初めてメジャーを制した。ナダルは、05年MS・モンテカルロ大会で初優勝した直後に、05年全仏でGS初優勝を成し遂げた。

 ただ、マリーは、08年MS・シンシナティ大会で初優勝したものの、GS初制覇は12年の全米まで待たねばならなかった。

 15年シーズンに、「MS大会で1回優勝したい」と語る錦織のMS大会での成績如何によって、彼のGS制覇の可能性が出てくるはずだ。

 錦織は、15年から使用するラケットを「STEAM95」から「BURN95」に変更した。錦織の成長と共に攻撃力が上がったため、ボールのスピン(回転力)に加えて、スピードがよりラケットに求められた。

「もう少しスピードが欲しかったのでリクエストしました。今、自分のテニスが変わってきていて、より攻撃的なプレースタイルになっている。その中で、もう少しポイントを早く終わらせたり、ウィナーの数を増やしたりできるようにしたい」

 14年シーズンが充実していただけに、このタイミングでラケットを変更することに少なからず驚きはあったが、錦織にとってはあくまでも先を見据えた決断だった。

「発展途上というか、まだまだ先は長い。より自分のプレースタイルのレベルを上げるためにも、挑戦が必要だと考えて変えました。少しラケットの感触が以前と違うので、初めて握った時は、慣れるまで時間が必要でしたけど、今は慣れて、いいフィーリングでやれている。よりスピードが増して、自分のプレースタイルに合っていると思うので、ショットの威力を高めたり、ウィナーを増やしたり、進化したテニスを見てもらいたい」

 最近ラケットを変更して成功した選手が、フェデラーだ。14年シーズンに、最多となるマッチ72勝を挙げ、2位に返り咲いた。その一方で、ラケットを変更した09年シーズンに、GSで1回も決勝に進出できなかったジョコビッチの例もある。

 15年シーズン、錦織が新しいラケットにどれだけ早く馴染めるかどうかも、キーポイントのひとつになるだろう。

 14年12月上旬から練習を再開させた錦織は、1月4日に開幕したATPブリスベン大会から、15年シーズンをスタートさせた。そして、1月19日からメルボルンで開幕するGS初戦・全豪が控えており、活躍が期待される。

「まだまだ自分が伸びるところを再確認して、得意でもあり、やりやすいオーストラリアで、まずはいい結果を残したい」

 こう語る錦織は、メルボルン(全豪)で、12年ベスト8、13年と14年はベスト16と、ここ3年間安定した成績を残している。

 GS本戦は128ドローだが、今回仮に錦織が上位8シードに入れば、準々決勝まで自分より上位のシード選手と対戦することはない。大会前半に強敵と当たる可能性が低ければ、錦織の上位進出の可能性がより高くなり、優勝戦線に最後まで残れるだろう。

「グランドスラム決勝の舞台にまた戻りたいし、ランキングもキープしていかないといけない。また大変な、違う挑戦の1年になると思いますけど、頑張りたい」

 プロ8年目の錦織は、2015シーズンに、グランドスラム初制覇という日本男子前人未到の高みに挑む。彼にとってまさに勝負の年となる。

神仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi