「さけ通信」2015年新年号(酒文化研究所発行)

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2014年の暮れ、年末年始に飲む酒を仕入れようと近所の酒屋へ。すると、ありましたありました、私が密かに楽しみにしている『さけ通信』の最新号が!

『さけ通信』は、「酒文化研究所」が発行する、酒にまつわる情報やコラムが掲載された小冊子(無料)である。年4回発行(3月・6月・9月・12月)されていて、全国の約600店の酒専門店で入手できる。大抵は、レジ脇や入口付近のスタンドなどに置かれているので、新しい号が出れば、買い物の際に気付くはずだ。置いている店のリストはコチラ(ちなみに、私がもらった酒屋の名前はなかったので、リストにない店でも置いているところがあるようだ)。

最新号(2015年新年号)の特集は「男前を上げる日本酒」。基本的に12月に出る号は、正月を意識してか、毎回日本酒特集である。『dancyu』などの料理雑誌が決まって夏にカレー特集を組むように、あるいは『OZ magazine』などの情報誌が決まって秋に京都特集を組むように、これは定番となっている。

特集の趣旨としては、若者の間で日本酒の人気が高まっている、20代の女性にはワインよりも日本酒に詳しくなりたいという声もある、ついては日本酒の知識をつけて、あなたも男前を上げちゃおう!ということだそうだ。ここだけ読むと、ちょっと軟派な印象を受けるかもしれないが、手堅く日本酒にまつわるアレコレをまとめたページにチャラさはない

手始めに、「純米大吟醸酒はワイングラスで飲むべし」「一般的な洋食のコース料理なら、純米大吟醸酒だけで通せる」といったアドバイスから始まり、米に水を吸わせる【原料処理】〜酒の加熱殺菌と熟成【火入れ・貯蔵】まで、日本酒ができる過程を写真付きで解説。ここまでわずか見開きで2ページ弱。続けて、燗酒の美味しさを競う「スローフードジャパン燗酒コンテスト二〇一四」のレポート&受賞酒の紹介、そして燗酒に合うツマミのランキングで特集は幕となる。締めて4ページ也。

本冊子の魅力は、このコンパクトさと、軽すぎず重すぎない内容のバランスの良さにある。そして忘れてはいけないのが、酒飲みのツボを押さえた連載ものの存在である。

酒に関しては、知識があればあるほど旨い酒にありつけるし、何よりも飲む酒のバックグラウンドを知るのは面白い。そんな知識欲を満たしてくれるのが「編集長の大人の社会科見学」コーナーだ。全国のさまざまな酒蔵を訪ねるこのレポートを読んでいると、酒という飲み物の持つ歴史の厚み、作り手の熱意や試行錯誤の積み重ねが実感され、酒の一口一口に敬意を抱くようになるだろう(少なくとも、本格的に酔っぱらうまでは)。気付けば、酒蔵見学バスツアーについて検索していたり。

また、日々飲み過ぎ傾向にある人間であれば、気になるのが健康問題だろう。それに応えるのが、医学ジャーナリスト・松井宏夫による「酒飲みの健康学」だ。アルコールが健康におよぼす「よい効果」に着目し、紹介するコラムである(最新号のテーマは、関節リウマチとアルコールの関係について)。もっとも、いくら「酒は百薬の長」とは言っても、飲み過ぎれば逆効果である。ここでは、具体的に「ビールに換算してどのくらい」などと、具体的に「適量」が記載されているのも嬉しい。

それから、フリーライターのはらだペコによる「ためしてMIX」も楽しい。『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』 『酒呑まれ』(いずれも、ちくま文庫)などで知られる大竹聡が立ち上げた酒飲み雑誌『酒とつまみ』の企画さながらに、酒に何かをミックスし、どれがおいしいかを実験するコーナーだ。過去の号では、日本酒のワイン割りや、2014年W杯ブラジル大会の時には、焼酎のガラナ飲料割り飲み比べなどをやっていた。最新号では、少し前から人気を博しているスパークリング清酒(ここでは松竹梅白壁蔵の「澪(みお)」を使用)にフルーツやアイスクリームを入れるという、「それ、絶対うまいだろー」な組み合わせに挑戦していて羨ましい。

広告ばかりで中身がスカスカな無料冊子だと、仮にページ数が多くても読むところがなくて即ゴミ箱行きとなるが、14ページからなる本誌に関しては、広告の機能は自然な形で記事に盛り込まれているので、すべて読み物の一環としてするりと入ってくる。今号で言えば、スパークリング清酒「澪」での実験なども、おそらくそうだろう。広告がストレスにならず、読んだら普通に「買ってみっか」となるその作りは、タイアップという意味では、ひじょうに理想的だ。

もう正月は終わりだが、新年会などが落ち着いて、1人ゆっくり飲む日常が戻ったら、ぜひ『さけ通信』をお供に家飲みしていただけたらと思う。ちなみに、バックナンバーはホームページで読むことができる。興味を持たれた方は、チェックされたし。
(辻本力)