日経平均が1万8000円にタッチするなど日本株の回復が急ピッチだ。日本株に大きな影響力を持つ海外の投資家たちはどのような着眼点で投資に臨んでいるのか。外国人投資家の動向について詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ代表取締役の宮島秀直氏が解説する。

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 日本株に対して中長期的なスタンスをとる外国人投資家が注目するポイントとしては、「サステイナビリティー」も挙げられる。サステイナビリティーは「持続する可能性」の意味で、具体的に言うと、ROE(株主資本利益率)やROA(総資産利益率)、EPS(一株当たり利益)といった、株価に影響を与える財務指標が、持続的に改善している銘柄を注目している。

 欧米の著名なグローバル株式投信のファンドマネージャー78人の中に、リーマン・ショック後の運用リターンがつねにプラスを維持しているファンドマネージャーが8人いる。いわば“常勝ファンドマネージャー”である彼らに、2014年から2015年にかけて、良好なパフォーマンスが期待できる銘柄を挙げてもらったところ、次のような銘柄が浮上した。

 マブチモーターは「車載モーターの世界的需要拡大」や「中国製造業の復調」、日立ハイテクノロジーズには「医療精密機器の輸出好調」など、それぞれの銘柄に個別のテーマはある。だが、ファンドマネージャーが注目しているのは、ROE・ROA・EPSが、持続的に改善傾向を示していることだ。

 例えば、マブチモーターのROEは、9月末の時点で5.76%と、欧米の優良企業と比較すると、それほど高い数値とはいえない。しかし、数値の絶対値が問題なのではなく、過去と比べて、安定的に改善しているかどうかを重要視しているのである。

 丹青社は、非常に地味な銘柄で、国内の機関投資家も普段からウォッチしている銘柄とは言い難い。だが、2014年から、経営スタンスを大幅に修正している。おもに商業施設の展示ディスプレイを手がけている同社は、利益率の低い注文も受けていたが、それを改め、採算性重視に舵を切った。その結果、ROE・ROA・EPSのすべてが劇的に改善し、株価はTOPIXを大幅に上回って上昇している。常勝ファンドマネージャーの個別銘柄に対するリサーチ力のレベルの高さが感じられる。

 私が長年取材をしている、世界最大手クラスの運用会社の女性共同創業者がこんな話をしてくれた。

 10年ほど前、日本の重厚長大産業の代表的な企業の株主総会に出席したとき、代表取締役に、ROEについての目標を聞いたという。すると、その代表取締役はROEについてまったく知らず、答えられなかったという。しかし、その企業の直近の株主総会に出たところ、ROEは経営目標の一つに掲げられるほど変化していた。

 これはほんの一例だが、その女性は、「私が他で経験したケースを含めて、日本企業の経営者の意識は、ここ数年で大きく変わってきた。まるで明治の“文明開化”を思わせるわね」と笑顔で語った。この感想は、外国人投資家に共通する見方といっていい。 アベノミクスや日銀の金融緩和政策に対しての評価同様、外国人投資家が日本株を買う理由には、日本企業の底流にある「文明開化」に等しい変化と挑戦があることも見逃せない。

※マネーポスト2015年新春号