黒田博樹は「米国で最も成功した日本人投手」【写真:田口有史】

黒田の広島復帰を受けて「最高の日本人MLBプレーヤー」を特集

 ヤンキースからフリーエージェント(FA)となり、広島復帰を決めた黒田博樹投手について、米メディアが「日本出身でメジャー史上最も成功した投手」と最高級の賛辞を送った。CBSスポーツが黒田の日本球界復帰を受けて「最高の日本人MLBプレーヤー」との見出しで特集を組んでいる。

 記事では、セイバーメトリクスの指標の1つで、現在のメジャーで最も重視されているWAR(Wins Above Replacement)を使って歴代日本人選手のランキングを作成。WARとは打撃、守備、走塁、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標で、そのポジションの代替可能選手と比較し、どれだけ勝利数を上積みしたかを表す。

 このランキングで、ダントツのトップはヤンキースからフリーエージェント(FA)となっているイチロー外野手。今年までのキャリア14年間で積み上げたWARは58.8となっている。2位は野茂英雄氏の21.8。いずれもメジャーリーグで日本人選手の歴史を変えた偉人だ。

 そして、3位に入ったのが黒田。WARは野茂にわずかに及ばない21.7となっている。記事では、黒田がドジャース、ヤンキースでの7年間で211試合に先発し、防御率3.45をマークしたことを紹介。その上で、そのパフォーマンスを称えている。

「ダルビッシュや田中が黒田の価値に並ぶには、あと2、3年は必要」

「(メジャーでの防御率は)カープ時代の3.69よりもわずかに上回る成績。黒田は日本からやってきて、自身のパフォーマンスを向上させた希有な例である。ドジャースとヤンキースでの79勝79敗という成績は、彼のメジャーでの7年間を正確に表現するものではない」

 打線の援護に恵まれず、救援陣に白星を消されることも多かった右腕の勝敗の数は、正当なものではないとの見方だ。

 実際には、黒田のWARは野茂氏よりも0.1ポイントだけ下となっている。ただ、メジャーでの通算投球回数は野茂氏の1976回1/3に対して、黒田は1319回。キャリアも12年に対して7年と少ない。ボロボロになるまでメジャーにこだわった野茂氏は最後の3年間でWARがマイナス値を記録している点も考慮すべきだが、貢献度を表す指標で野茂氏とほぼ同程度の数字を積み上げてきた黒田は記事で最大級の賛辞を贈られている。

「現時点で黒田は、日本出身の投手でメジャー史上最も成功した投手であることは間違いないだろう。それはリストを見ても明確だ。ダルビッシュ有(レンジャーズ)や田中将大(ヤンキース)が黒田のキャリアの価値に並ぶには、あと2、3年は必要となる」

 また、メジャーで約9年半のキャリアを誇り、ヤンキースでの7年間で勝利をもたらす打点を挙げ続けた松井秀喜氏のWAR(21.3)を上回っている点も、特筆すべき点だろう。しかも、WARは一般的に投手よりも打者の方が積み上げやすくなっている。

広島復帰が決まり、米国でも再認識される黒田の価値

 記事では、ランキングでイチローには遠く及ばないものの、いずれも近い数値を記録している野茂氏、黒田、松井を「第2グループ」と定義。その下には、再び開きがあってダルビッシュ(12.9)、大家友和(11.9)、上原浩治(11.6)、長谷川滋利氏(11.6)、岩隈久志(11.5)、斉藤隆(10.5)、松坂大輔(9.3)の「第3グループ」が続く。

 当然、現役選手がさらにWARを積み上げ、黒田に追いつく可能性もある。記事でも「例外はある」として、以下のように触れている。

「ダルビッシュは順調に第2グループに向かっているし、田中が健康なら同じことが言えるかもしれない。だが、現時点で彼の健康は保証できない」

 黒田がメジャーで評価されているポイントとして欠かせないのは、安定感と頑丈さ。だからこそ、33歳でデビューしながら、ここまでWARを積み上げられたとも言える。

 20代中盤で海を渡ったダルビッシュや田中には、野茂氏や黒田を超える可能性は十分にあるだろう。ただ、そのためには長い間、健康を保ち、安定して投げ続けなければならない。それは過酷なメジャーで最も難しいことでもある。日本球界復帰が決まったことで、黒田がドジャース、ヤンキースにとっていかに重要な選手であったかが、米国でも再認識されている。