左『ホット・ゾーン──「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々』(リチャード・プレストン/高見浩訳/飛鳥新社) 中『すべては「必要、必然、最善」』(舩井幸雄/ビジネス社) 右 タイタン公式HPより

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 2014年もいよいよあと少し。今年のオカルト・トピックスを振り返り、どのような傾向だったのかを探っていこうと思う。

 昨13年は、元CIA職員エドワード・スノーデンで盛り上がった年だった。ケム・トレイル(化学物質の空中散布)や、地底人の存在の暴露など、彼がどこまで本気で証言しているかは分からないが、陰謀論のニュースターとなった感もあったスノーデン。そんな勢いも次第に落ち着き、今年は自然現象や自然災害にまつわる恐怖がオカルトニュースとなったパターンが多いように見受けられる。


●世界の終わり? メキシコ上空で発見された「光の渦」の正体は?

 まずは世界のオカルトニュースから。3月にメキシコのオアハカ上空で発生したとされる「光の渦」。その禍々しいビジュアルから、「世界の終わりだ」「HAARP(オーロラ調査プログラムだが、陰謀論では自然操作兵器と目されている)による実験だ」と噂されていった。実は南米はUFO目撃の多発地帯ということもあり、宇宙人の襲来説という説が喧伝されていた。

 この渦自体は今回に始まったものではなく、ここ数年に渡って世界各地で目撃されている。例えば09年にノルウェーで見られた「光の渦」は、ロシアのミサイル発射実験の失敗によるものと明らかにされている。ただ気になるのは、メキシコにて撮影されたほうも、なぜかロシアのテレビ局が報道しているということ。なぜかロシア絡みであることが多い「光の渦」。まあ、単純にロシア人がこの話題を好きなだけかもしれない。

 こちらは「デマ」の部類になるが、最近になって「12月16日から22日まで地球が闇に包まれる」という噂が飛び交った。史上最強の磁気嵐によって太陽光が遮られるとNASAが発表した......という情報に驚かれた方も多いだろうが、もちろん真っ赤な嘘ニュース。

 件の記事はHuzlersが発表したものだが、10月25日にデマと確定、NASAも公式に「そんな発表はしていない」と否定した。この噂が日本で流行ったのが11月後半なので、嘘と分かってから1か月ものタイムラグがある。すっかりインターネット社会になったといえども、まだまだ情報伝達の差というものは残されているようだ。

●生物兵器? 秘密組織の人口削減? エボラ出血熱にまつわる陰謀論が蔓延

 陰謀論・デマと言えば、今年はなんといっても「エボラ出血熱」にまつわる噂が蔓延した年だった。ワクチン開発によってアメリカ(orユダヤ資本)が儲かるために作られた生物兵器といった説から、ニュー・ワールド・オーダー(新世界秩序を目指すという陰謀論定番の組織。構成の内訳は論者によって変わる)によるアフリカの人口削減、神の天罰またはテロ宗教団体が蔓延させた、などなど。『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ系)でも「CIAが流行らせた」「製薬会社によるものでは」といった話題が出たことも記憶に新しい。

 あるいは現地・西アフリカ一帯では「玉ねぎや塩水を大量にとれば感染しない」「欧米の医師がわざと感染させるから病院に行くな」といったデマも広がっている。

 体感として、今年は海外でも日本でも、病気・災害にまつわる「世界終末」を危惧したオカルトニュースが増えてきたように思える。これは80〜90年代前半に「最終戦争(ハルマゲドン)」系のオカルトが流行ったのとどこか似てもいるし、違ってもいる。「最終戦争」系のオカルトは、米ソ冷戦の崩壊による世界情勢の変化と、その不安が生み出したもの。世界の裏側で米ソに変わる二大勢力が決戦し、新しい世界が到来するといったイメージだった。しかし当時以上に各国の情勢が混乱・変革をきたすなか、もはやVSの構図すら存在しなくなってしまった。巨大勢力が計画通りに世界を動かすという感覚より、「何かの拍子に地球が終わるかも」といった漠とした不安が蔓延しているのではないだろうか。

●"スピリチュアルのドン" 舩井幸雄の死が意味するもの

 さて、わが国にも目を向けてみよう。14年は、年始めからオカルト界を揺るがすような大ニュースが飛び込んできた。スピリチュアル界のドン・舩井(船井)幸雄の死去である。好き嫌いはともかく、90年代よりスピリチュアル界に「舩井チルドレン」たちを輩出してきた影響力については、誰もが認めざるを得ないだろう。

 さらに死の直前に発表された「現実に地に足をつけて考えてほしいのです。いまの世の中は、スピリチュアルなこととか食とか遊びなど、どうでもいいことに浮かれている人に、かなり焦点が当っています。一度そのようなどうでもいいことは忘れ、現実人間にもどってほしいのです」という発言も波紋をよんだ。舩井という存在がなくなった今、スピリチュアル分布図が今後どうなっていくのか。今後、14年が大きなターニングポイントだったと振り返る時がくるかもしれない。

●エレキテル連合、妖怪ウォッチ...流行の根底にある暗さとオカルト

 今年の流行をつらつら思い出してみると、「これって実はオカルトでは?」と感じるものが多い。14年に入って一気に老若男女全てに"ブレイク"したものといえば、「妖怪ウォッチ」「日本エレキテル連合」だろうか。何故か近年流行りだした「ハロウィン」のお祭り騒ぎまで足してもいいかもしれない。これらに共通するものはホラー的・オカルト的・民俗的な、明暗で言えば「暗い」要素。今年は、オカルトが世間でポップに受け入れられてきた年だったのではないか。

 ポケモンを脅かす躍進を見せた「妖怪ウォッチ」は、いわずと知れた妖怪キャラクター戦略の成功例。そもそも妖怪とは、怪異や不可思議のキャラクター化なので、ポップな娯楽性と相性が良いものではある。全国ですっかり浸透した「ゆるキャラ」にも、日本の妖怪文化の一面を見ることも出来るだろう。ともあれ、ここまでの大ヒットは水木しげる以来。妖怪というと「各地の民話」に伝わる、伝統的・民俗学的なものでなくてはいけないという概念を覆し、軽々と新しい妖怪キャラを創ってしまったところが成功の要因だろうか。

「ダメよ〜ダメダメ」が流行語大賞に選ばれた日本エレキテル連合。白塗りの空気人形が喋るという寺山修司っぽさすら思わせる世界観が、子どもたちにまでウケるとは驚きだった。この他にも、「洞窟の中で体中ブツブツの生えた妖怪(神様?)が、ひたすら魚をストローで吸い続ける」という、本当にひたすら怖いだけのネタもあったりと、完全に振り切ったネタ作りをしている日本エレキテル連合。コンビ2人は、ドロドロとした暗い情念が自分たちの持ち味であり、そこを意識したネタ作りをしているだろうし、支持する人々もその暗さを敏感に感じ取っているのは間違いない。

 そして、近年なんだか日本でも盛り上がるようになったハロウィン。もちろんホラーメイクをして集まる若者たちに、「死者が現世に戻る日のお祭り」といった宗教・民俗意識は一切ないだろう。しかしだからこそ、社会全般が無意識下でオカルトを受け入れているといった風潮を、より如実に示しているようにも思える。

●オカルトらしからぬオカルトの流行、そして一般レベルへの浸透

 もちろん、これら3つのトピックスすべてにおいて、ホラー的・オカルト的・民俗的な「暗さ」を前面に出している訳ではない。むしろ、それらをポップに換骨奪胎するというバランス感覚に長けていたからこそ、大衆にヒットしたのだと言えよう。ただ、「大衆向けに明るく作り変えたからウケた」という側面を逆から見れば「根底にオカルト的暗さを持つものがウケた」とも言えるのである。

 もしかして今年は、「オカルト」が復権しただけでなく、一般レベルにまで浸透してきたことを象徴する年なのではないだろうか?

 ここ最近、80〜90年代の雰囲気と似たところがあるとは、先ほど述べた通り。あのオカルトが無邪気で幸福だった時代を終わらせたのが、「最終戦争」系オカルトを負の面で突き詰めてしまった「オウム事件」である。事件のショックによってオカルト・宗教全般に対するアレルギーが起こり、冬の時代が始まった。それに入れ替わるかたちで、自己啓発・スピリチュアルといった、一見オカルトらしからぬオカルトが流行していく。その一つのシンボルである舩井幸雄が逝去したのが今年始めのこと。あらゆるトピックスが時代の転換を示しているのではないか......。

 と、陰謀論のように様々な事象を繋げてしまったが、なんにせよオカルトの享受のされ方が変わりつつあるのは事実だろう。来年以降の日本および世界で、その揺り戻しがくるのか、それとも一層オカルト受容が進んでいくのか、注目したいところだ。
(吉田悠軌)