注目大学はどう戦うか(2)

 前回(2014年正月)は3区で設楽悠太がトップを奪うとそのまま逃げきった東洋大学。往路は悠太と啓太(5区)の設楽兄弟が区間賞を獲得した他はすべて区間3位。復路も7区と8区、10区で区間賞を獲得し、6区と9区は4位と、安定した走りが目立った。柏原竜二を擁して圧勝した時の記録に1分15秒差まで迫る、総合記録10時間52分51秒は歴代2位。あらためてチームの底力を認識させられる結果だった。

 だが、今回は優勝の原動力になった大黒柱の設楽兄弟の他、重要区間の6区と10区を走った4年生が抜けての戦いになる。5区と6区に有望な人材を持つ駒澤大学と早稲田大学に対しては、挑戦者として挑む箱根駅伝になった。

 そんな立場は11月の全日本大学駅伝にも表れていた。4連覇を狙う駒大がエースの村山謙太(4年)を1区に起用し先行逃げきりを狙ってきたのに対し、東洋大は主力のひとりの服部弾馬(2年)を起用。大差をつけられることなく2区のエース服部勇馬(3年)につなぎ、そこで駒大と勝負しようという思惑だった。

 だが、弾馬は消極的な走りで3km過ぎから遅れてしまい、1位村山に1分12秒差の10位。2区勇馬は区間賞獲得の走りで2位まで順位を上げたが、それ以降は青山学院大学と2位争いをするのが精一杯。酒井俊幸監督が「どの区間も駒澤にはラスト3kmで30秒やられた」と言うように、駒大には差を開かれ、6区で青学大に突き放されると、最終8区では明治大学にも逆転されて4位という結果に終わった。

 後手に回ってすべての歯車が狂ってしまう典型的なレースだった。もちろん、その結果に選手たちも箱根へ向けて危機感を覚え、集中力は高まっただろう。とはいえ、中村匠吾(4年)が復活して村山とともに2本柱が揃い、中谷圭佑(2年)が準エースに成長した駒大に比べ、力的には若干落ちるのは確か。さらに重要なポイントとなる5区と6区に人材を揃えられるかどうかという課題もある。

 それでも駒大の大八木弘明監督が、「東洋はなんやかんやといっても5区は作ってきますよ」と、警戒する。上りの5区には1時間20分そこそこでは確実に走る選手を、下りの6区には悪くても1時間前後で走る選手を用意していると見た方がいいだろう。その5区と6区について、酒井監督はこう分析している。

「柏原は別格だったが、5区はどういう状況で走れるかで変わってくる。前回の駒沢の馬場(翔大、現3年)くんは、啓太に21秒差でタスキを受けたから、それを目標にして走れたが、ひとりで走る状況になれば違ってくると思いますね。啓太にしても18分半では行くと思っていたけど、19分16秒でしたから、目標がないと難しいんです」

 ライバルについては、成長分を入れても駒大の馬場は1時間19分30秒前後。早大の山本修平(4年)も1時間18分台中盤から19分とみている。

 また下りの6区については「前回は箱根湯元からは追い風が吹く好条件だったので、全体的にタイムが良かったと思います。あれが向かい風なら30〜40秒は違う」と語る。実際には59分30秒〜1時間そこそこのタイムで走る選手を作っていけば大丈夫ではないかというわけだ。

「ただ、早稲田は上りだけではなく下りも強いから、そこで前に出られた場合は、7区と8区も重要になりますね。1区間だけで逆転するのではなく、2区間かけてひっくり返す形にしなければいけない」(酒井監督)

 東洋大の戦力をみれば、8区には前回区間賞獲得の高久龍(4年)、9区には前回区間3位の上村和生(3年)と信頼できる選手がいる。2年前に4区を走った淀川弦太(4年)も今年は関東インカレハーフマラソン2位と、安定している。酒井監督は「7区に前回区間賞の弾馬を置くことができれば戦力的には厚くなるな」と言うが、それは往路でいい流れを作れた時の話だろう。これまでの東洋大の優勝を振り返れば、すべて往路優勝をしている。そんな流れに持っていける区間配置で、勝負しなければならないのだ。

 エースの勇馬には、1年の時に全日本の8区に起用して当時の駒大のエース・窪田忍と走らせる経験をさせた。前回2区に起用したのも、設楽兄弟が抜けたあとを想定した英才教育だった。その勇馬は、来年2月の東京マラソン出場も視野に入れて、今年2月の熊日30キロロードレーを走り、設楽啓太が前年に出していた日本学生記録を塗り替える1時間28分52秒を出している。そのタイムは瀬古利彦氏が87年に出した自己最高記録と同じものだ。彼が2区を、学生長距離界のエースという立場を自覚して1時間07分10秒くらいでは走ることが、東洋大の優勝への最低条件となる。

 それをアシストする1区は、他校がスピードランナーを起用することを前提にすれば、「弾馬か、調子が上がってきた1万m28分台を持つ4年生」と酒井監督は言う。

 最も安定しているのは、1区で13年に区間賞を獲得して前回も3位になり、今年は関東インカレハーフマラソンで2位になっている田口雅也(4年)だろう。ライバルに大差をつけてトップで来るというタイプではないが、相手が強くても僅差で抑える力を持っている。その上で勇馬を駒大の村山などと勝負させたい、という腹だ。

 3区、4区でもミスをして遅れるわけにはいかない。3区には全日本で3区を走り、11月の上尾シティーハーフでは1時間02分53秒の自己新で9位になっている櫻岡駿(2年)を入れるという手もあるが、ここはスピードも重要になる区間。3区には上尾で1時間02分31秒を出して5位になっている弾馬を入れて、4区に前回区間3位の今井憲久(4年)という1万m28分台のランナーを入れた方が安全だ。先頭集団に食らいついて5区に入るという作戦をとってくるだろう。

 その流れを復路まで維持して、櫻岡には7区で積極的な走りをさせれば、その後の8区、9区にもつながる。それが最もオーソドックスな配置と言えるだろう。

 期待されていた1年生の竹下和輝はエントリー入りしなかったが、他にも上尾で1時間03分12秒を出した寺内将人(3年)、1時間03分17秒の小早川健(1年)、1時間03分32秒の渡邉一磨(3年)、1時間03分37秒の長谷川直輝(3年)がおり、層は厚い。1区の流れとエース服部勇馬の走り次第で、優勝争いに加わってくるはずだ。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi