写真提供:マイナビニュース

写真拡大

理化学研究所(理研)、独キール大学、分子科学研究所(IMS)、高輝度光科学研究センター(JASRI)は12月24日、X線自由電子レーザ(XFEL)施設「SACLA」から得られる硬X線とフェムト秒光学レーザを用いたポンププローブ型の硬X線光電子分光法により、固体試料構成元素の内殻光電子スペクトルの時間分解計測に成功したと発表した。

同成果は、理研 放射光科学総合研究センター 軟X線分光利用システム開発ユニットの大浦正樹ユニットリーダー、アシシ・チャイナニ専任研究員、キール大のカイ・ロスナゲル博士、IMSの松波雅治助教、JASRIの富樫格研究員らによるもの。詳細は、「New Journal of Physics」に掲載された。

光電子分光法は、測定対象の物質に一定エネルギーの電磁波をあて、光電効果により外に飛び出してきた電子(光電子)の運動エネルギーを測定し、物質の電子状態を調べる手法である。しかし、自由電子レーザ光は、パルス幅が極めて短いうえ強度が大きく、測定対象物質から放出される光電子群が空間電荷効果をもたらし、光電子のスペクトルに悪影響を及ぼす。

研究グループは、これまでSACLAからの超短パルス自由電子レーザ光を用いた硬X線光電子分光法を、物質内の過渡的な超高速現象の研究に有効活用するための技術を確立し、硬X線とフェムト秒光学レーザによる空間電荷効果の影響を調べ、それを制御することを目指してきた。そして今回、ポンププローブ型の時間分解硬X線光電子分光法(trHAXPES)を確立し、空間電荷効果の影響が極めて少ない固体試料構成元素の内殻光電子スペクトルを得ることに成功し、それらが大型放射光施設「SPring-8」で得られる光電子スペクトルに比べて同水準であることを確認した。

trHAXPESによって、従来困難であった固体の深い層にある構成元素の選択的かつ時分割的調査や、電子状態の過渡的な超高速現象の観察が可能になる。また、trHAXPESによる空間電荷効果の時間分解計測にも成功し、その時間依存性から、ポンプ光とプローブ光の同時照射時刻を高精度で見出せることを突き止めた。同時照射時刻からのスペクトルなどの変化を調べると、測定対象物質の外部刺激に対する応答性などの性質を知ることができるとしている。

(日野雄太)