【注目大学はどう戦うか(1)】

 山の5区(往路)と6区(復路)に実績がある選手がいて、優勝候補の筆頭と見られる駒澤大学と早稲田大学。これに実力校の東洋大学を加えて今大会の"3強"とするなら、それを急追して"5強"とも言われる状況にしているのが青山学院大学と明治大学の充実ぶりだ。

 青学大の原晋監督は今シーズンの初めのミーティングで、前回は出場できなかった川崎友輝(4年、13年4区)と長期故障中の久保田和真(3年、13年3区))、高校時代に全国都道府県駅伝4区で区間新を出した秋山雄飛(2年)がスタートラインに立てれば、優勝を狙える、と話したと言う。前回の箱根で1区を走った一色恭志(2年)と2区の神野大地(3年)、7区区間2位の小椋裕介(3年)、9区区間3位の藤川拓也(4年)という主力選手が好調を維持していたからだ。

「今年はシーズン当初から専任コーチとトレーナーをひとりずつ増やして、コアトレーニングを導入するなどいろいろな仕掛けをしてきた。それらが練習パターンとマッチして選手の意識レベルが高くなり、故障もほとんど無くなりました」

 原監督が語るように、エースの神野は関東インカレ2部ハーフマラソンで優勝。一色と小椋が7月に1万mで青学大記録を更新する28分20秒台を出すなど、ほとんどの選手が自己記録を更新している。

 その勢いがチームの結果として出たのが、11月の全日本大学駅伝だった。4人の主力に加えて、復帰した久保田がエース区間の2区を区間3位で走り、秋山も3区を走った。川崎は6区で区間賞を獲得。アンカーの神野が明大の大六野秀畝(4年)のうまいレース運びで逆転されたものの、東洋大を上回る3位でゴール。原監督の「今年はワクワクしていますよ」という言葉が本物であることを証明した。

 12月に入ってからのチームエントリーでは、その構想から川崎が漏れてしまったが、最大の懸念でもあった5区には、エース神野を起用することを決めたという。原監督は「1時間17分50秒を目標にする」と、期待をかけている。

 さらに前回9区区間3位と、信頼の高い主将の藤川が、11月の世田谷ハーフマラソンで、1時間03分03秒の自己新で優勝。1年生の田村和希が1時間03分42秒で2位に、秋山が1時間04分30秒で4位に、安藤悠哉(2年)も1時間04分33秒で5位となり、中村祐紀(1年)も1時間04分38秒とメンバー入りをうかがうまでになった。

 前回4区の山村隼(3年)、5区の高橋宗司(4年)、6区の村井駿(3年)と、全日本7区出場の渡邊心(3年)もエントリーメンバー入り。1万mの上位10名の平均タイムは28分48秒09で、駒大を僅かに上回って出場校中トップとなる。原監督は「うちは復路にも選手が揃っているから、6区を終えた時点で先頭と1分差以内なら勝機もある」と自信を見せた。

 一色、小椋とスピードランナーの久保田が1、2、3区に起用されるだろうが、そこでうまく流れに乗って駒大に追いすがり、5区神野が狙い通りの爆走を見せれば優勝も見えてきそうだ。

 青学大とともに台風の目になりそうなのが、"最強世代"が4年生になった明大だ。11月の全日本では、1区17位と出遅れながらも、アンカーで2位に上がる底力を見せている。

 ただ、上位争いの中で懸念材料となりそうなのが、5000mで13分28秒79の記録を持つスピードランナーの八木沢元樹(4年)と、1万m28分台の記録を持ち、前回9区を走った前野貴行(4年)が間に合わなかったこと。そして5区に1時間20分前後で走れる選手を用意できているのかどうかという点だ。

"最強世代"と称される4年生を中心に、人材は豊富だ。エースの大六野と主将の有村優樹(4年)、文元慧(4年)、松井智靖(4年)に加え、昨年は期待されながら故障で低迷していた横手健(3年)が復調、1万mの記録を28分38秒73に伸ばしている。また木村慎(3年)も今年は1万mの記録を28分50秒47にし、全日本ではエース区間の2区で冷静に走り、チーム順位を17位から8位にあげる健闘を見せた。主力と目される前回までの箱根経験者は安定している。

 箱根未経験組でも、山田速人(4年)が今年は1万mで28分35秒76を出している。また7月に28分43秒20の自己新を出したスピード型の牟田祐樹(3年)は、11月の上尾ハーフでは1時間03分06秒の自己新で12位となり、長い距離にも適応しつつあることを証明した。

「5000mの平均タイムがいいので、うちはスピード型と思われているけど、長い距離の練習をやっている中でたまたま5000mの記録がでているだけ。それが駅伝につながってなかった面もあったが、力まないで走れば他大学のエースと競り合える力はある。全日本で明大史上最高の2位になったことを自信にできれば、箱根は面白くなる。主力2人(八木沢と前野)が抜けたけど、それを補える戦力は揃っている」

 こう語る西弘美監督は、5区と6区の起用については口を濁した。前回、志願して5区を走った横手は、11月の千葉国際駅伝に日本学生選抜の一員として出場した際、「僕が山を走ることはないと思うから、平地の主要区間で勝負したい」と話していた。西監督としても5区を走れる選手の目処はつけているだろう。

 そこにつなぐ平地には自信があるため、区間配置はオーソドックスなものになりそうだ。1区は、11月の全日本こそ失敗したが、13年に区間2位になり前回は区間4位だったスペシャリストの文元が有力。2区は、過去2年連続で走っていて、今年11月の全日本でも最長区間8区で区間賞を獲得した大六野が「1時間07分30秒では走りたい」と自信を深めている。

 前回は八木沢が区間2位の走りを見せた3区は、スピードを活かしたいなら横手の起用となるだろう。4区に今年は3年生の主軸に成長した木村を置けば、前回8区区間2位の有村を、松井や牟田とともに復路に置ける。全日本を走っている山田速人と山田稜(2年)という28分台の選手をどこに使ってくるかも注目だ。

 ここ数年は、どこかで必ずブレーキとなる選手が出ている明大。優勝への最大のカギはミスのない駅伝をすること。柏原竜二(当時2年)を擁する東洋大が連覇を果たした10年のように、序盤から飛び出して4区までは先頭を突っ走ることができれば理想的だ。

 一方、前々回大会の覇者で、前回も3位に入った日本体育大学は厳しい戦いになりそうだ。前回の主力が卒業したのに加え、前回1区を制したエースの山中秀仁(3年)が故障で不出場。苦戦は必至だろう。

 逆に上位を狙えそうなのは、エノック・オムワンバ(3年)と関東インカレ1部ハーフマラソンで優勝した井上大仁(4年)を擁する山梨学院大学か。

 1万m上位10名の平均タイムは28分51秒74と、出場校中4位で、28分台6名は同校過去最多。山梨学大附属高から入学した、昨年の全国高校駅伝優勝メンバーの1年生も3名がエントリーしているだけに、2区のオムワンバと5区を走る可能性が高い井上を主力とした往路で勢いに乗れば、前回2区途中棄権の悔しさを晴らして、優勝争いに割り込んでくる可能性もありそうだ。

折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi