『仁義なきキリスト教史』架神 恭介 筑摩書房

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「初詣は神社に行き、結婚式は教会で挙げ、葬式はお寺」と、宗教的に節操が無いなどと言われる日本人。12月に入ると、クリスマスムードも一気に高まりますが、われわれ日本人にとってキリスト教はクリスマスや結婚式などイベント時だけ注目するもの。ましてやイエス・キリストの生涯については「12月25日にマリア様から生まれて、最後は十字架に架けられたのは知っているけど、その間に何をしたのかは正直ようわからん」という方も少なくないのではないでしょうか?

 一方、キリスト教の影響が色濃く残るヨーロッパ諸国では、クリスマスシーズンにはイエスの「生誕劇」や、イースター(復活祭)には「パッションプレイ」と呼ばれる受難劇を上演してきました。近年でも、ロックオペラ『ジーザス・クライスト=スーパースター』などミュージカル作品や、メル・ギブソン監督『パッション』など映画の題材としても、イエスの一生はたびたび描かれ、キリスト教が人々の生活に根付いているのがうかがえます。

 本書『仁義なきキリスト教史』は、なんとキリスト教史を、血で血を洗うやくざの抗争史にたとえ、「神=ヤハウェ大親分」「イエス=組長」という大胆な解釈で表現した異色小説。「洗礼」といった宗教用語は「盃を交わす」などの極道用語に置き換えたほか、登場する聖人たちのセリフも任侠映画『仁義なき戦い』さながらにオール広島弁となっており、肩ひじ張らずに読み進められます。

 その一例をあげると、十字架に架けられたイエスが叫んだと伝わる、ヘブライ語の有名な言葉、「Eli, Eli, Lema Sabachthan(エリ・エリ・レマ・サバクタニ)」。日本語では、「我が神よ、我が神よ、何ゆえに我を見捨てたもうや」などと訳されることが多いですが、著者の架神恭介さんの手にかかれば、
"おやっさん、おやっさん、なんでワシを見捨てたんじゃ!"
といった具合。遠い存在でしかなかった聖人たちが、血の通った人間として語り掛けてくるかのような演出がなされています。

 男たちの熱いドラマに共感し、キリスト教に興味がない人でも一気に読める娯楽大作である本書は、日本人が教養として知っておきたい、キリスト教2000年の歴史をおさらいするのにもおすすめです。今年の聖夜は、ぜひ、イエスの生涯に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。