さすがにバリバリの体育会系は鳴りを潜め、今や、体力的、精神的に追い込まれるような忘年会は減った。しかし、その一方で増えているのが部下と親密になりたがる上司だ。バリバリのバブル世代の上司たちが行なう、そのゆる〜く“ブラック”な実態とは?

■4 仕事好きすぎる上司

どの会社もシメツケが厳しくなったためか、マジメすぎる上司も増えている。

「ウチの部の忘年会は毎年、会議みたいなんです。課長のスピーチはほとんど決算報告みたいなもので、ずっと数字を言ってるだけ。業績が良かろうと悪かろうと、いつも『一層の奮励を期待し、躍進の年とするべく本年の忘年会を始めたいと思います』って言うんですけど、その時には皆、もうげんなり。

乾杯の後も、次々と課長に指名されて、数字についての意見を求められるから酔っぱらうわけにもいかない。感情的になるわけでもないし基本的に仕事熱心な人なんだけど、何も忘年会まで仕事全力モードでなくても…」

(製薬会社Eさん・男性・37歳)

これじゃ逆に、年明けからの社員の士気もダダ下がり?

■5 泣き上戸すぎる上司

仕事熱心すぎる上司もツラいが、上司が泣き上戸の忘年会というのもツラい。

「セクハラとかパワハラだったら断固とした態度で接すればいいけれど、ウチの上司は2杯くらい飲んだあたりからすすり泣きが始まって、それを超えると号泣するんです。基本的には『おまえらと仕事ができて幸せだ』と、感謝にむせび泣くんですが、とにかく手当たり次第に部下をつかまえては泣きながら感謝の言葉を言い続けるんです。

『ありがとうございます。でも泣かないでください』なんて若手が言ったら、さらに大粒の涙をこぼして『うれし涙を止めないでくれ』とか言って泣く(苦笑)。2時間も泣き続けている男がいる宴席なんて、どうやって楽しめばいいんですか?」

(金融関係Fさん・男性・40歳)

■6 子供写真見せたがり上司

「子だくさんの上司がiPadでずっと子供の写真や動画を見せるんです。これ結構、辟易(へきえき)するんですよ。そりゃ1、2枚見せられる分には構いませんよ。だけど、生まれた時から子供が成長していく過程の写真をこれでもかと見せられたり、10分くらいある動画を一緒に見ながら感想を求められたり…。

1次会の個室風の居酒屋から移動する時、一室が空いていたので、こっそり逃げ込みました。上司は酔うと記憶がないので、いち抜けした者勝ちなんです」

(流通関係Gさん・男性・29歳)

最近は育メンがもてはやされ多くなっているのもあるが、少子化で子煩悩な親が急増している分、将来的な予備軍もごっそり控えていそうだ…。

■7 とにかく歌わせたがる上司

1次会で抜けるのは無理にしても、2次会で回避する方法は何かないものか?

「ウチの課の上司はとにかく部下に歌を歌わせるのが好き。2次会のカラオケは歌が途切れてはいけないのが決まりで、どの曲も1番しか歌っちゃいけない上に、曲中は全員で踊らなきゃならない“ブラックルール”がある。僕は体力の限界を感じてトイレへ行くフリをしてカバンも何もかも置き去りにして帰りました。きっと誰かが僕のカバンを持って帰ってきてくれる、そう信じて」

(印刷関係Hさん・男性・38歳)

結局、Hさんのカバンは翌朝、会社で同期が渡してくれた。上司には「昨日は泥酔して外で寝ちゃってました。死ななくてよかった」とウソをついてかわしたという。「同期からは『なぜ俺をひとりにした』と恨まれましたけどね」(Hさん)

■8 アニオタすぎる上司

上司世代にアニオタが増えているのも今どきだ。

「上司がアニオタで、2次会のカラオケはアニソンのみOKっていう感じなんです。しかも最近のアニメの歌でないと不機嫌になるから結局、上司のワンマンショーみたいになっちゃうんですよ。それがいやで泥酔したフリをしてトイレに行ったついでに別の空いている部屋に飛び込んで逃げました。カラオケ店って似たような部屋がズラっと並んでますから、探すのが面倒くさくなったのか諦めてくれました」(前出・Cさん)

まあ、ブラック企業で毎日働いていたら殺されかねないけど、ブラック忘年会で殺されることは(まず)ない。不幸にして、こうした忘年会に遭遇してしまったら年末最後のビッグミッションととらえて、ガマンで乗り切っちゃうのもアリ!?

(取材/加藤ジャンプ)