ウォール・ストリート街の付近に位置する名門のスタイヴェサント高校に通う16歳の高校生モハメド・イスラム君が、「7200万ドル(約85億円)もの大金を株式取引で稼ぎ出した天才高校生トレーダー」としてNew York Magazineに報じられました。わずか16歳の少年が一晩で巨額の富を得たというニュースはNew York Postでもヘッドラインで取り上げられ、アメリカのニュース番組CNBCから出演を依頼されるなど世界中に衝撃が走りましたが、New York Observerのインタビューによって、少年は投資で7200万ドルどころか1ドルも生み出していないことが判明しました。

EXCLUSIVE: New York Mag’s Boy Genius Investor Made It All Up | New York Observer

http://observer.com/2014/12/exclusive-new-york-mags-boy-genius-investor-made-it-all-up/

イスラム君は自らのウェブサイト上で株式取引や投資関連のブログおよび投資クラブを運営しており、New York magazine(以下、NYMag)の元記者の息子と友人関係にあったことがきっかけで、NYMagの記者から取材依頼の電話がかかってきたとのこと。



取材を承諾したイスラム君はインタビューの中でNYMagの記者に「7200万ドルを生み出したか」と尋ねられ、イスラム君は「正確には分からないけど、8ケタの後ろの方(7000万〜9000万ドル)を稼ぎました」と答えています。この内容についてNew York Observerはウラをとっており、以下のように事実ではなかったことを確認しています。

New York Observer:(以下、NYO)

君は「8ケタを稼いだ」と答えているけど、それは事実ではありませんね?

モハメド・イスラム:(以下、イスラム)

はい。

NYO:

何桁か稼いだということはありませんか?何かに投資を行った結果リターンを得ていましたか?

イスラム:

いいえ。

NYO:

つまり、7200万ドルはフィクションの金額ですか?

イスラム:

はい。

イスラム君は巨額の富を得るどころか、株取引自体行っておらず、スタイヴェサント高校で運営している投資クラブでもシミュレーション取引しか行ったことがないとのこと。ただし、イスラム君はシミュレーション取引で、株式格付業務を行う世界最大手のスタンダード&プアーズと比較しても非常に高い評価を獲得していたため、記者の質問に対して信憑性の高い返答を行うことができたようです。NYMagの記者が「7200万ドル」という具体的な数字を質問した理由についてはイスラム君も心当たりがないそうですが、信憑性を得るために「8ケタの高い方」と答えたとのこと。



この衝撃的なニュースは話題になり、CNBCからの出演依頼も許諾しましたが、イスラム君は直前になって出演をキャンセルしています。

イスラム君の家族の中に金融取引を行う人はいませんが、ニュースが報道された時の両親の反応についてイスラム君は「両親は僕の偽りに気付いていました。父は縁を切りたがっており、母からは僕と二度と口をきかないと言われました」と話しています。それ以来イスラム君は両親と話しておらず、NYOとのインタビュー前日も友人の家で寝泊まりさせてもらったとのこと。

「今後はどうしたいですか?」という質問に対してイスラム君は、「両親に謝りたい」と述べています。このインタビューの掲載後、NYMagは「読者への謝罪」を掲載しており、New York Postは該当記事をヘッドラインから外し、記事の冒頭に誤報であった旨を追記しています。