マスクの使い方を間違えると、逆効果になるって本当?―外したマスクは「触るな危険」
インフルエンザをはじめ感染症が気になる季節になった。通勤電車でもマスクをしているひとを多く見かけるが、使い方を間違えるとあらたな感染源になるのはご存じだろうか?
「ウィルスを防ぐ」と思われがちだが、マスクが除去できる粒子よりもはるかに小さいため、飛沫(ひまつ)を防ぐのが精いっぱいで、正しく装着しないと漏れ率が大きくなり、飛沫すら吸い込んでしまうことになる。外したマスクは病原菌がたくさん含まれているので、正しく処分しないと、ほかのひとにうつす原因となってしまうのだ。
■外したマスクは「触るな危険」!
マスクは大別して1.家庭用、2.医療用、3.産業用があり、感染症予防には1.2.が用いられる。これらも形状によって名前が異なり、
・家庭用 … プリーツ、立体型
・医療用 … コーン、ダックビル
などがある。ヒダのあるプリーツや立体型は説明不要だろうが、口を皿でふさぐようなコーン、アヒルのくちばしのように飛び出したダックビルはおもに医療用として活躍している。どれも正しく使用しないと効果がないばかりでなく、逆にバイ菌やウィルスを拡散させてしまうのだ。
もっとも一般的なプリーツは、
・プリーツの先端が下向きであることを確認
・プリーツを上下に広げる
・ノーズピースを鼻に合わせ、顔にあてる
・耳にひもをかける
が正しい装着法で、あごが覆われていなかったり、鼻やほほに隙間があるとそこから空気を吸い込んでしまい効果が薄れてしまう。メガネのひとは息でくもるのがイヤで鼻を出してしまいがちだが、これではマスクをしている意味がなくなってしまう。
国民生活センターの資料によると、マスクを通らずに鼻やほほとのすき間を抜けてしまう漏れ率は平均・約40%、最大で90%近くのものもある。サイズが合わないのは当然NGだが、とくに立体タイプは自分の骨格に合ったものを見つけないと、効果が望めないのだ。
外す際はひもだけを使い、飛沫などがしみ込んだマスク表面には触らないことも重要だ。自分に症状があるときはなおさらで、ほかの人への感染源とならないようビニール袋などに入れて捨て、手洗いも忘れずにおこなおう。
医療用のコーンやダックビルも基本的な扱い方は同じだが、ひもは耳ではなく首と頭を巻くように止めるタイプも多い。これを耳にかけると長さも向きも合わず、まったく効果がないのでご注意を。
■医療用でもウィルスは除去できない!
マスクをしていれば、本当にウィルスを防げるのか? 残念ながらNoで、せきやくしゃみによる飛沫(ひまつ)を防ぐのが限界で、ウィルスだけを除去するのは不可能だ。
アメリカの医療用マスクの規格「N95」は、0.3μm(マイクロ・メートル)=千分の0.3ミリの粒子を95%以上取り除けるように作られているが、対するウィルスは、
・インフルエンザウィルス … 百万分の80〜120ミリ
・ノロウィルス … 百万分の30〜38ミリ
と、およそ3〜10分の1のサイズしかないため素通りしてしまう。ただし漏れ率は16%程度に下がるので、家庭用では心配なひとはN95準拠のマスクを選ぼう。
厚生労働省も同様に、マスクについては、
1.自分のせきやくしゃみで、飛沫を飛散させないため
2.空気中の飛沫を、完全に吸い込まないようにすることはできない
3.1日1枚を目安に「使い捨て」
とまとめているように、ウィルスはおろか、飛沫を食い止めるのが精いっぱいと表現できよう。もっとも、ウィルス単体で空気中を漂っているわけではないが、「ウィルスを99%カット!」などの製品をみかけても、正しくは「飛沫をカット!」と解釈すべきだろうし、N95以上になると空気の透過性も悪くなるので、かなり息苦しいマスクになることを理解しておこう。
■まとめ
・マスクで防げるのは飛沫。ウィルス単体は取り除けない
・鼻やほほの周辺に隙間があると、漏れ率が上がり効果が薄れる
・外したマスクは袋に包んで、速攻で捨てる
(関口 寿/ガリレオワークス)