【インタビュー】世界各国の一流ブランドが導入するNY拠点の『Fashion GPS』、設立者 Eddie Mullon(エディ・マロン)

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取材&文: 三橋ゆか里

 

ファッション業界に一石も二石も投じるテクノロジー企業がある。日本版『WIRED』のファッション テクノロジー特集「Fashion Decoded」にも登場した『Fashion GPS』だ。1年の中で最も重要な一週間『ファッションウィーク』において、デザイナー、エディター、バイヤーといった様々な関係者のためのワンストップのプラットフォームを提供する。Diorや Gucci (グッチ)、また Chloé (クロエ) や Victoria’s Secret (ヴィクトリアズ シークレット) のエージェンシー「KCD」などが導入するほか、ニューヨークとシドニーのファッションウィークにはフルインテグレートされている。ファッション業界を本気でディスラプトする『Fashion GPS』の創設者で CEO の Eddie Mullon (エディ・マロン) に話を聞いた。

 

- 『Fashion GPS』について教えてください。

『Fashion GPS』は、2006年にデザイナーが新作デザインのサンプルを簡単に管理するためのサービスとして始まりました。今では、ファッションウィークの様々な要素、例えば招待客の管理やファッションショーでの席順、コレクションのフォトギャラリー、サンプルの貸し出しやそのトラッキングに至るまで、一連の流れを全て管理できるプラットフォームと化しています。20ヶ国にまたいで、数千人のファッション業界関係者によって活用されています。

 

- ファッション業界に対して『Fashion GPS』がもたらす価値は何ですか?

これまで紙やマンパワーを使って手動で行われていたファッションウィークの舞台裏を、『Fashion GPS』を使うことでより生産的にすることができます。例えば、ブランドがメディアにサンプルを送る作業なら30〜40分を要していたコトも、『Fashion GPS』ならたった2分で完了します。こうしてあらゆる作業から無駄を省いて効率化することで、デザイナーがクリエイティビティだけに集中できる環境をもたらします。

 

 

- 『Fashion GPS』を立ち上げた背景を教えてください。

僕が『Fashion GPS』を作ることになったキッカケは、まさにセレンディピティでした。2007年に売却した『Laptopmd.com』というコンピューターの修理会社のクライアントの1つが、PRエージェンシーの KCD でした。僕らの仕事ぶりに感動した彼らから、とある課題を解決するためのソフトウェアを開発してほしいと相談を受けたんです。その課題というのが、膨大な数のサンプルのトラッキングでした。当時は、データベースを作るくらいにしか考えていませんでしたが、ファッション業界について知れば知るほど、そこにテクノロジーへのニーズがあることを知りました。その後、2006年に『Fashion GPS』を創業しました。

 

- 最近、『Fashion GPS』に加わった新しい機能にはどんなものがありますか?

「GPS Styles」という機能を作りました。「GPS Styles」を使うことで、デザイナーはデジタルアセットを1つのオンライン・ショールームに集めることができます。内部の情報共有のために使うこともできますし、PR の担当者がメディアに対する素材提供として使うこともできます。これまで数週間を要していたデータ集約のプロセスが、ファッションショーの翌日には一ヶ所に揃うのです。さらに、「GPS Styles」のデータをもとに、『Fashion GPS』に登録する26,000人のメディア、バイヤー、インフルエンサーなどに対して瞬時にリーチすることができます。

 

- サンプル・トラッキングの「GPS Samples」は、ファッション企業をよりデータドリブンにしてくれると聞きました。

『Fashion GPS』のプラットフォームを使うことで、これまで見えることのなかったデータが一目でわかるようになります。

例えば、プレス発表会への反響の善し悪しを測定したり、もっと細かく、伸びしろのあるアイテム、または不人気のアイテムなどを把握することもできます。これらのデータは、美しいビジュアル・レポートとして確認できます。それをコレクションや事業に反映することで、デザイナーは次のコレクションをより魅力的なものにすることができるのです。

 

 

- ファッション業界でテクノロジー企業が成功する秘訣は何だと思いますか。

ファッション業界にはテクノロジーが入り込む余地がたくさんあります。e コマースや小売り分野への参入が目立ちますが、生産、流通といったサプライチェーンにこそ、テクノロジーのニーズがあるように感じています。テクノロジー企業は、「テクノロジーでファッション業界をディスラプトする」のではなく、「ファッション業界のニーズを聞いて、彼らをエンパワーするテクノロジーを生み出す」ことが必要です。

 

- 『Fashion GPS』の人気の秘訣はどこにあると考えますか。

僕たちは立ち上げからの8年間、ブランドの仕組みや物事の進め方をひたすら観察し、彼らの要望に耳を傾けることで共に歩んできました。『Fashion GPS』は、ファッション業界に育てられたといっても過言ではありません。立ち上げの2006年当初は、まだ誰も「クラウド」や「SaaS」という言葉すら知らず、クライアントと契約を結ぶまでには最低でも1年を要していました。でも、そこにはファッション業界をより良くするための明確なビジョンと情熱がありました。「変化」には常に抵抗が伴います。でも、抵抗が大きければ大きいほど、受け入れてもらった時の喜びや見返りは大きいのではないでしょうか。

 

- ジャパン・オフィスを立ち上げる予定はありますか。『Fashion GPS』の今後の予定は?

今は、ニューヨークを拠点に、ロンドン、パリ、香港のオフィスに45名のメンバーがいます。まだ先ですが、2016年には日本にもオフィスを構えたいと思っています。

これから提供していく機能については、今まさにブランドにヒヤリングをしている最中です。NFC や Bluetooth などのテクノロジー、また現在はまだ一部しか対応していないモバイル化も急ぎたい。

 

- 日本のファッション業界への印象はどうですか。

初めて日本を訪問したのは、2年前の東京ファッションウィークの時でした。東京の街を見渡しても、目立つのは PRADA (プラダ) など国外のパワーハウスばかり。日本人の友人が連れていってくれなければ、きっと日本独自のブランドを知らないままでいただろうと思います。そうした日本のブランドがさらに成長し、彼らがいつか世界進出する際に、ミラノ、ロンドン、パリなど世界中にファッション業界のユーザーを抱える『Fashion GPS』が役立てばいいなと思っています。

 

- 『Fashion GPS』が目指す究極のゴールについて教えてください。

ファッション業界にある非生産的な様々なプロセスを効率化することで、デザイナーの頭痛の種を取り除いて、彼らをエンパワーすること。現在は、総勢120名ほどのデザイナーに使われていますが、最終的には『Fashion GPS』というプラットフォームでファッション業界が1つになる規模にまでしたいと考えています。過去10年の間にファッション業界から学んだことを活かして、テクノロジーを最適な形で活用し、デザイナーがクリエイティブにだけ集中できるような世界にしていきたいですね。

 


© The Fashion Post

<プロフィール>
Eddie Mullon (エディ・マロン) Fashion GPS 設立者、CEO。
アフリカ生まれのイギリス人。10代の頃に独学でコンピュータープログラミングを習得。2006年、ファッションとテクノロジーを結ぶ『Fashion GPS』を設立。現在、ニューヨークを拠点に、ロンドン、パリ、香港にオフィスを構える。

URL: http://www.fashiongps.com