有機野菜は健康に良くない?(写真/川口友万)

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 食品流通に詳しい経済コンサルタントのI氏とともに、さる11月29・30日に東京・代々木公園で開催された『東京ベジフードフェスタ2014』を歩いた。



 野菜のフリーマーケットのようなものを想像していたが、野菜は中心ではあったものの、毛皮に反対する署名を集めていたり、日本人のDNAを目覚めさせるパンツが売られていたり、何か違和感がある。



 I氏によると、有機野菜=農薬や化学肥料を使わない=自然という図式から、自然回帰を題目とする宗教団体や政治団体が多く参加しているらしい。彼らにとって、有機農法はイデオロギーなのだ。

 だから解説はありがたいのだが、テントの前を通り過ぎるたびに、「ここは○○教ですね」「ここは極左です、テロ集団です」とI氏が大声で言うので、危なくてしょうがないのだ。

畑がどんどん死んでいる

 日本の有機野菜は、戦後の畜産政策から生まれたのだとI氏。

「動物性廃棄物というんですが、動物の糞尿ですね。それが大量に出て、処理できない。それを処理するために発達したのが有機農法。農水省が循環農法とか言ってますけど、処理できないウンコを畑に入れようとしただけですよ」

 畜産業が負担する糞尿の処理費用を軽くするため、つまり畜産業を守るために生まれたのが有機農法なのだ。健康とはまったく関係ないし、循環型農業=エコロジーはただのお題目であり、目的はお金なのだ。

 ではそれが農水省の計画通りにうまく行っているのかというと、うまくいっていない。

「畑がどんどん死んでいるんですよ」

 家畜のフンには塩分や重金属などが含まれているため、危険なのだという。

「地下水も汚染されるんですよ。有機農法も科学的な知識がある人がやる分にはいいと思いますが、素人が増えていますからね。有機の肥料はすぐに効果が出ないので、不安になって大量に使うんですよ。それで土地がダメになる。堆肥は十分に発酵させれば、有害物質はかなり減るんですが、待てないんでしょうね。本当は葉っぱを堆肥にするのが一番安全でいいんですけどね」

 これからの農法は有機だと若者が農民になっている。彼らは農業の経験も少なく、サイエンスの知識も乏しい。そのため、十分に発酵させていない肥料を使ってしまい、土壌に悪影響を引き起こすのだ。

 さらに牛糞にはO-157などの有害菌が含まれている。10〜30%の牛はO-157に感染しており、堆肥の発酵が不十分だとこうした菌が野菜に入り込み、それを食べた人間に感染する。事実、2011年5月にはドイツを発生源として欧州16ヵ国でO-157による食中毒が発生、52人の死者を出した。原因は有機農法で作られたスプラウトやブロッコリーだった。

 多くの店が、有機農法の野菜によってアトピーが治ったり健康になるといい、写真入りでその成果を誇っていた。しかし現在の農薬は光分解性であり、出荷時には完全に分解されている。むしろ有機農法によって重金属が有機野菜に蓄積されることの方がよほど問題ではないか?

 海外のシリアルやナッツにはオーガニックと書かれている。オーガニックと有機農法は何が違うのだろうか?

オーガニックはアメリカで生まれた食品規格で、非常に厳しい規格ですね。アメリカの西海岸は砂漠ですから、砂漠だと水はけも良く、作物に虫がつかない。当たり前に無農薬なんです」

 さらに化学肥料を使わないことで、オーガニックを作り上げた。

「西海岸産といっても売れませんが、オーガニックというと売れるんですよ。ようはオーガニックというブランドですね」

 食の安全は、ある部分で信仰に近い。合理性ではなく、気持ちの部分が大きいのだ。消費者は、販売者の振りかざす極論に惑わされず、有機野菜もひとつの選択肢ぐらいに考えて利用したいものである。

(取材・文/川口友万)