日本人の除隊理由に他の隊員もびっくり?

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 フランス外人部隊と聞けば、さぞ精強で屈強な猛者が集まる集団と誰もが思うだろう。たしかに各国から集まった命知らずの男たちが集う精鋭の軍事組織であることはいまも昔も変わりはない。

 だが、このフランス外人部隊にも時代を経るに連れ、緩やかながら変化が起こっているという。フランス外人部隊に在籍している日本人・A氏(30代)はその実情を次のように明かす。

入隊試験は日本語でも受けられる

「“普通の就職先”のひとつとして外人部隊をみている者が年々増えつつあります。高校や大学を出て、警察、消防、自衛隊、そしてフランス外人部隊……と。軍事ヲタクみたいな連中が応募して、受かってしまう。日本人は基礎学力が高いので入隊試験そのものをクリアすることは難しいことではありませんからね。問題はその後です」

 フランス外人部隊では、入隊時にフランス語が話せなくても入隊試験はクリアできるという。事実、入隊試験は日本語でも実施されているのだ。その試験内容は日本の公務員試験同様、数的推理、判断推理、空間把握や、地図の把握など基礎的知能を問うものだ。日本人なら中学校卒業ないし高校1学年修了程度なら、まず合格できるレベルだそうだ。意外にも入隊へのハードルは低い。

「体力テスト、志望動機なども聞かれます。自分は自衛隊を経験してこちらに来ましたが、その内容は自衛隊の試験とさほど違いはありません。とくに自衛隊経験がなくとも日本で普通に勉強し、とくに身体面で問題なければまず合格はできます」

外人部隊除隊理由は「親の家業を継ぐ」!?

 合格し入隊が決まると、いよいよ“精強部隊”への仲間入り。巷で言われるい“地獄の訓練”がはじまる。この最初の訓練時に脱落する者がもっとも多いという。しかし、日本人が脱落する理由は、フランス外人部隊で頑張っている現役の日本人兵士をがっかりさせるにあまりあるものばかりである。

「自分が除隊を申し出た日本人兵の通訳を担当した者のなかには、『親の家業を継ぐことが決まった』『すぐに戦場に行きたいのに、なかなか機会がない』『雑用ばかりで本物の男になれなさそうだから』などなど、ナメた理由ばかりです。日本人の評判が悪くなるのも頷けますよ」(同)

 話を聞かせてくれたA氏は、人事担当のフランス人の上官から「彼はなぜ辞めたいといっているんだ?」との問いに、「訳したくありません」と答えることもしばしばだ。

「訓練や任務についていけないなら、そう正直に話してくれればいいんです。それをああだこうだ理屈を並べ立てて……。同僚の外国人兵からも、『やっぱり日本は恵まれた国だ』とバカにされています」

物見遊山でやってこないでほしい

 いくつかの紛争国に実戦参加経験もあるA氏は、「軍隊などどこの国でも日常は雑用ばかり。草むしり、掃除、体力練成が続く。自分も実戦に参加するまでは本当にこれが実戦に役立つのかといつも疑問を抱えていた。しかし最初の実戦に参加してその考えは一変しました。雑用ひとつこなせない人間は実戦では何の役にも立たないと」(同)

 この日本人フランス外人部隊兵は、初陣で“本物の戦場”をみて「死ぬことは容易い。だからこそ生き抜かなければならない」と考えを新たにしたと話す。

「仲間や敵を問わず、ぐちゃぐちゃになった死体、見たことありますか? そんなグロテスクな死体になった兵士でも、国に帰れば親兄弟や恋人もいるんですよ。戦争は外交の手段かもしれない。でも、どんなに時代が進んでも実際に戦うのは生身の人間なんです。物見遊山でやってるんじゃないんですよ」

 こう話す彼の目が静かに鋭く光った。フランス外人部隊が、“外資系企業”への就職と同列に扱われる日本の実情は、フランス外人部隊の現実とはあまりにもかけ離れている。

(文/鮎川麻里子)