『「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!』NATROM メタモル出版

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 玉石混交のインターネットの世界のみならず、最近は出版界でも「医学界の定説」を覆すようなネタ(テーマ)が流行っているようです。"●●すればガンが治る""死にたくなければ●●するな""医者は信用するな"といった断定的で刺激的なタイトルの書籍。中には書店で平積みされるほど売れているものもありますが、医学的に正しいか否かの検証があまりなされていないのが現状です。

 そんな中、現役内科医がそうした本やネットでの情報を一刀両断する書籍『「ニセ医学」に騙されないために』を上梓しました。著者のNATROMさんは、内科医として勤務する傍ら、ウェブ上で『NATROMの日記』というブログを公開している人物。同ブログは、医学的、科学的根拠のない「ニセ医学」について情報発信をしており、すでにPV数は1000万を超えています。こうしたネットでの反響を基に、本書の刊行が決まったそうです。

 本書では、薬や健康法といった比較的身近な話題から、出産、がん、代替医療などに関する誤った医療法を医学的な見地から解説。タイトルにあるように世の中に流布する「ニセ医学」を炙り出していきます。

 たとえば、テレビの人気バラエティ番組でも有名な中部大学教授・武田邦彦さんの『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい』(竹書房)については、健康情報に関するデタラメがある本として名指しで批判。

「(前略)武田氏の主張によれば、『禁煙すると肺がんになる』のだそうだ。なぜそういえるのだろう? 」(同書より)

 武田さんの著書では、「喫煙率が半分に減ったにもかかわらず、肺がん患者は5倍に増えた」と、喫煙と肺がんは関係ないとし、同著書のタイトルにあるように「肺がんにならないためには禁煙しない方がいい」と結論付けます。しかし本書では、「それは単純すぎる見方だし、大間違いである」と批判し、こう反論。

「まず、喫煙をし始めてから、がんが発症するまでには時間がかかるため、喫煙者率が減ってもすぐに肺がん死亡者数は減らない。つまりタイムラグがある」(本書より)

 日本人男性の場合、1960年代に喫煙率のピークがあり、その約30年後の1990年代に肺がん死亡率のピークがきているそうです。喫煙が正常な細胞にダメージを与え続けて、がん細胞を発生さえ、がん細胞が細胞分裂を繰り返して、時間をかけて大きな塊を作り、そして人を死に至らしめるまでに約30年の"タイムラグ"がある点を指摘し、武田さんの主張を「ニセ医学」と批判します。

 また、こうした統計が開始された約50年前と今とを比べれば、そもそも人口が増えており、肺がん罹患率の高い高齢者の数も増えているため、喫煙率が減ったとしても必然的に肺がん患者が増える結果になってしまう、とも綴っています。

「『喫煙は文化である』という主張がある。そうかもしれない。マナーを守るなら、タバコを吸うのは個人の自由である。ただ、喫煙の自由を主張するときに、『タバコは肺がんの原因ではない』というデタラメは必要ない」(本書より)
 
 ネット、本に限らず多くのメディアで健康情報に関するデタラメが氾濫する昨今。どれがウソでどれが本当かを見抜く力は、人の命をも左右しかねません。NATROMさんは本書の最後で、「自分の命を守るためにも、たくさんある情報の中から信頼できるものを選び、利用する能力が必要だ」と述べます。真贋見分けづらいに情報を前にしたら、まず自分の頭で考えてみる、ということが必要だといえるのではないでしょうか。

【関連リンク】
NATROMの日記
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/