その素晴らしい音楽を、拡張する存在:オーディオテクニカのハイレゾ対応ヘッドホン「ATH-MSR7」

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原音のもつ魅力を余すことなく伝えようと技術の粋を凝らしたオーディオテクニカのヘッドホン。そのありようは、アーティストとリスナーとの間に立ち、アーティストの想いをそのまま届けようとバックヤードで奮闘する人たちの姿と重なる。BEATINKレーベルマネジャー、tofubeatsマネジャー、音楽プラットフォームのスペシャリスト3人のもとを、最新ヘッドホン「ATH-MSR7」をきっかけに尋ねた。

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1962年創業のオーディオテクニカがヘッドホン部門を立ち上げて、今年でちょうど40年になる。そのテクノロジーの到達点といえる「ATH-MSR7」がリリースされた。

「ATH-MSR7」は、ハイレゾ対応ヘッドホンだ。CDを超える音楽表現を可能にしたハイレゾ音源は、聴く者の耳に圧倒的な臨場感をもたらしてくれる。いまや配信サーヴィスでも手に入るハイレゾ音源をこのヘッドホンで聴けば、音の粒を細かく聞き分けられるとともに、広大な奥行きまでを感じ取ることができる。

この「ハイレゾ」にどんな可能性があるのか、考えてみる。例えば音楽を聴くフォーマットがレコード、カセットテープからCDへと変わることで、「A面/B面」という考え方は過去のものとなった。カラオケでの流行がそのまま世間でのヒットチャートに反映されるようになって楽曲のつくりかたは変化し、いわゆる「前サビ」が主流となった。だから、これから「ハイレゾ」が広く深く普及したとき、アーティストにはきっと、また新しいカンヴァスが用意されることになるのでないか。

このハイレゾ対応ヘッドホンをもって、まずはBEAT RECORDSのレーベルマネジャー、若鍋匠太のもとを訪れた。BEAT RECORDSは、12月に『WIRED』とコラボレーションしてコンピレーションアルバムをリリースしたばかり。「音楽のあたらしい聴きかた」を提案しようとする取り組みは、この新しいヘッドホンがもつ可能性を示すのにちょうどいい。


BEATINKオフィスにて。「ATH-MSR7」と、コンピレーションCD『The Art of Listening Vol.1』。PHOTO BY ERIYA OSAKI


ATH-MSR7」のヘッドホンコードは着脱式になっており、携帯性に優れている。スマートフォンの操作用リモコン機能が付加されたもののほか、長さとプラグの形状が異なる全3種のコードが付属している。

音楽に新しい切り口を与える

「YouTubeなどで音楽を聴く人たちが増えているなか、音楽を発信する立場で何ができるかというと、それは音楽に新たな切り口を与え、リスナーに出会いを用意していままで知らなかった『おもしろい音楽』を紹介することだと思っています。Forward Thinkingな考え方が、ぼくらには必要だと思うんです」

『The Art of Listening Vol.1』と名づけられたコンピレーションCDの起点となったひとつに、「音楽は、『構成』(Plot)や『構造』(Structure)から離れ、『テキスチャー』(Textures)へと向かっている」というビョークの言葉がある。音楽のテキスチャー、音像に耳を凝らそうとするとき、優れた出力装置としてのヘッドホンに目が向くのも当然だ。ハイレゾ音源に対応した「ATH-MSR7」が、音楽そのものや音楽の楽しみ方の可能性を広げうることに、若鍋は期待を寄せる。

CDをプレーヤーにセットして、「ATH-MSR7」を耳に当ててみる。精度の高い再現性が、何度も聴いた音楽の奥にある、これまで気づかなかった音の数々に気づかせてくれる。

若鍋匠太|SHOTA WAKANABE
1983年生まれ。Beatinkレーベルマネジャー。今年BEAT RECORDSは、エイフェックス・ツイン久々の新作アルバムを手がけたほか、『WIRED』とのコラボレーションで実現したコンピCD『The Art of Listening Vol.1』もリリースしている。

リスナーに対して新たな気づきを、色々な入り口を用意する。そのために何ができるかを日々模索する若鍋が思い出すのは、Warp Recordsの総帥であるスティーヴ・ベケットの言葉だ。

「彼が言うには、レーベル名の『WARP』は『We Are Reasonable People』の略だっていうんですね。ぼくらレーベルサイドが果たすべき役割とは、アーティストとリスナーとの間に立って、正しく、誠実に伝えること。優れたものに相応の対価を約束し、同時にまだ世に出ていない才能のある若い人を送り出す──。それが本当に『WARP』の由来なのか定かではありません。ただの思いつきなのかもしれませんが、ぼくらがいま音楽に対して何ができるかを象徴する言葉だと思っています」




音楽のもつリアリティを伝えるために「ATH-MSR7」に施されたデザイン、イヤーフォーカスデザイン。その名の通り、ドライヴァーから放たれた音が耳にダイレクトに届くよう、耳とユニットが平行になるように設計されている。

キレイごとかもしれない、けれど、やっておきたい

2014年10月にリリースされたtofubeats初のメジャーアルバム『FIRST ALBUM』は、まさに2014年を代表するポップアルバムだった。「トーフ」、と彼のことを愛着を込めて呼ぶ杉生とtofubeatsの出会いは、8年前に遡る。そのとき杉生は大手レーベルで新人を発掘する立場にいて、tofubeatsはまだ高校生の音楽家だった。

「もともとレコード屋で働いているころから彼のことは知っていたけれど、その後、レーベルで新人発掘をする仕事に就いて、連絡をしてみようかなと。トーフが高校2年生、ぼくが25歳のときで、彼のことはインターネット上で知ってはいたものの、顔さえもわからなかった。でも、そのときは会うことさえ断られて。その後、共通の知り合いを介してやっと会えたんです。そのときは、お互いに目を見合わせて会話できる雰囲気ではなかった。ただ、これから関係を築いていきましょうよと別れたんですね」

その後、声をかけ続けてきた杉生。やがて密接になっていく関係のなかで、tofubeatsだけでなく彼周辺の若い音楽家たちともふれあうことになった。

「こと音楽についていえば、若い人の感性こそが正解だと思っているんです。マナーなんかは未熟な部分はあるけれど、考え方もラジカルで面白い。その感性は絶対に正しいと思っていて、若い世代と接することでわかったものはたくさんあった。そういう人を引き合わせる、ある種のハブになりたいという思いはありますね」

杉生健|TAKESHI SUGIO
1982年生まれ。いまはなきシスコレコード、ソニーミュージックを経て、現在は音楽制作・マネジメント業務を行うONEPEACEの業務委託スタッフとして、tofubeats(写真右)のマネジャーを務める。

実は、こうして杉生に話を訊いている横に、当のtofubeats本人がいた。彼は、杉生のことを「肩書きはマネジャー、ではあるけれど、むしろ先輩」なのだと語る。

「杉生さんが、以前、1回目で名刺を渡さないと言ってたのを憶えています。仕事ありき、ではない関係をつくろうとしてくれていた」。tofubeatsは、杉生のことを、そう語る。

「マネジャーではあるけれど、できるだけ営利的なものとクリエイティヴなものとを一体にしないように意識して動いてくれている気がします。目の前のお金より、ぼくが健康的であることを選んでくれるというか。8年以上一緒にいて、そう思います」

杉生の言葉を借りるならば、彼の使命は、「アーティストに、機嫌良く音楽をつくってもらう」こと。ノイズを払いのけ、静かに音楽をつくる、音楽と向き合う時間を整える。その上で、いちばんの喜びは「『いい曲できましたよ』とトーフがもってきたものを一番最初に聴けること」だと言う。

「音楽を聴いて泣くことって、ぼくはないんです。はじめて聴いてから音楽はずっと生活のなかにあるものだから、そのなかで仕事をできていることは本当にラッキーだと思います。お金持ちではないけれど、生活はできている。やっていることは、8年前もいまも、変わらないんです。トーフの地元神戸のクラブで20人くらいのお客さんの前でやっているか、何千人が詰めかけるフェスでやっているかの違いはあるけれど、音楽そのものは変わらない。で、ぼくはトーフの様子を横で、爆笑しながら記録用の映像や写真を撮ったりしている、という。ぼくにとって音楽は、そんなに大げさなものじゃない。でも、なかったら生きていけない。極端に言うと仕事じゃなくてもいいんです」



テクノロジーは新しい「楽器」になるか

多様化する音楽と、その聴き方。その狭間で、デジタルによる音楽の可能性を見出そうとしているのが、PRTLの福山泰史だ。かつて、自身音楽プロデューサーとして音楽の「つくり手」だった福山は、いま、プラットフォームの側に立ち、ビジネスとして確実なエコシステムを構築できるようにするために活動を続けている。そのきっかけはなんだったのか。

「収益規模が減少した、音楽がうまれる現場には、どこかペシミスティックな雰囲気があったんです」。音楽をつくる立場にあって、いい音楽をつくるには、それなりの投資が必要だ。それゆえ、売れるものとつくりたいものに対する意識の乖離から、ジレンマが生じてしまう。「そこに、デジタルが入ってきた。既存の音楽のありかたをディスラプトするテクノロジーを使えば、何かできることがあると思った」。

福山泰史|TAISHI FUKUYAMA
1981年生まれ。日本で音楽プロデューサーとして活動後、現在サンフランシスコを拠点に海外企業の日本アジア進出のビジネスコンサルティングを行うPRTL(ポータル)を起業。

これまでの音楽にまつわるテクノロジーの進化は、つねに反比例するものを抱えていた、と福山は言う。レコードからはじまってテープ、MD、CD、そしてデジタル音源へと移行してきたが、その歴史は、クオリティと利便性のバランスを天秤にのせるように進んできた。

「ですが、いま、インターネットテクノロジーの進化によって、そのバランスが大きく変化しようとしている。気軽に音楽を聴くことのできる便利さと、高音質で音楽にふれることのできるクオリティとがどちらも担保されようとしている。いままでの音楽の聴き方が大きく変わろうとしているんです」

そう現在の音楽の可能性を語る彼はなぜ音楽に関わり続けているのか。ほんの興味から訊ねてみると、「やり続けて意味のあることだと思ったから」だと言う。その言葉に、音楽に対する想いすべてがつまっているように感じた。

原音を忠実に届ける。アーティストの声を届ける

音楽家を裏で支えるバックヤードにいる人たち。彼らにはもちろんそれぞれに立場がある。ただ、変わらないのは、彼らが、それぞれ過去に「自分が心を動かされたもの」を大切に胸にしまい、いまかたちにしてぼくらに届けようとしている人たちだということだ。

音楽をリスナーに届けることに心を砕くレーベルマネジャーは、ジャンルを飛び越えた音楽の新しい価値を生み出したいと言う。若き音楽のつくり手をまるで兄弟のように支えるマネジャーは、アーティストが満足できる環境を整えることが自分の使命だと語っていた。デジタル化する音楽ビジネスの先端に立つメディアスペシャリストは、いま音楽をつくりだす現場に必要なのは、アーティストとビジネス両サイドのエコシステムだと言う。

彼らはそれぞれ立場は異なるけれど、いわばアーティストとリスナーの間に立って、音楽が生まれる現場を支えている。そんな彼らの言葉に思いを馳せながら、そのヘッドホンで、音楽を聴いてみる。原音を忠実に再現しようと設計されたヘッドホンを身につけ、ひとり音楽の深い部分に耳をこらしていると、アーティストが伝えたい音楽の神髄にふれた気がする。と同時に、その音楽が自分の耳にまでたどり着く間で奮闘する人々の声まで、聞こえてくる気がした。ヘッドホンと人との違いこそあれど、「音楽を拡張する存在」であるものたちには、音楽を真摯に伝えようとする姿勢が共通しているのだ。

その音楽の、すべてを伝える
オーディオテクニカ「ATH-MSR7」


あらゆる音源を高精細に描き出す新開発の「トゥルー・モーション ハイレゾオーディオドライバー」を搭載。オーディオテクニカが培ってきた40年の音響技術によって、原音の忠実な再生を追求している。長時間のリスニングでも疲れにくい低反発素材の立体縫製イヤパッドや、耳をしっかり包み込む立体形状のイヤーフォーカスデザインを採用。商品の詳細はこちらから