今後活動はどうなる?

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ヘイトスピーチ人種差別と認定し、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」側に約1200万円の賠償を命じた判決が最高裁で確定した。会長だった桜井誠氏も去り、在特会は今後どうなるのだろうか。

「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「スパイの子ども」。こんな街宣をして学校側から訴訟を起こされた在特会は、1、2審とも敗訴したが、報道によると、最高裁も2014年12月9日付で上告を退ける決定をした。

全額支払うも、やり繰りの苦労を明かす

在特会側は、学校が公園を占拠したのに抗議する公益の目的があり、街宣活動は表現の自由に当たると主張したが、いずれも退けられた。今回確定した判決では、学校周辺での街宣の差し止めも命じられている。

1200万円は、名誉棄損訴訟としては異例の高額賠償になる。被告は、在特会と街宣に参加した8人になっているが、どのように支払うのだろうか。

在特会の代理人をした徳永信一弁護士は、すでに全額を支払っており、在特会が募っていた寄付金が充てられるなどしたらしいと取材に明かした。

控訴に当たって、大阪高裁に供託金1000万円を支払っており、7月の判決でその支払いが執行され、その後1か月までに残りの200万円を現金で支払った。徳永弁護士は、在特会からお金を受け取ったため、8人が個人的に賠償の一部を負担したかは分からないとした。当時会長だった桜井氏についても、8人に含まれていないが、個人的に負担したかは分からないという。

いずれにせよ、賠償支払いは、在特会にとっても重荷になったらしい。桜井氏は当時、供託金支払いのやり繰りに苦労したことをニコニコ生放送で明かしている。

弁護士は、デモにも深刻な影響と指摘

在特会を巡っては、その言動の過激さから、ヘイトスピーチへの規制論議に発展した。警察でも、反対勢力とのトラブル事案を相次いで摘発しており、警察庁は3日、治安情勢の報告書の中で在特会を極右団体と名指しし、「違法行為の発生が懸念される」とまで指摘している。

今後もし、ヘイトスピーチを繰り返したら、同様な賠償責任を負わされるほか、警察の厳しい対応にも直面する恐れがありそうだ。

在特会にとっては、今後活動がやりにくくなるのだろうか。

前出の徳永信一弁護士は、活動がどうなるかは分からないとしながらも、一般論としてデモなどに深刻な影響が出かねないと指摘する。

「デモの参加者が、名誉棄損で高額の賠償を支払わなければならなくなれば、委縮してしまう効果が出ると思います。街頭での政治的表現で、例えば反原発デモでも、やりにくくなってしまうということですよ」

今回は、8人のうち4人が威力業務妨害などで有罪になる特殊なケースではあったが、徳永弁護士は「判決によって、取り締まりの理屈にされると心配しています。大衆運動への無理解があるのではないかと思っています」と言う。

一方、朝鮮学校側の弁護団事務局長をした冨増四季弁護士は、今回の判決によって在特会が弱体化するかについては分からないとしながらも、「判決の趣旨を踏まえて、個人の尊厳を守るようにしてほしい」と話している。